世界経済フォーラム 批判

世界経済フォーラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 14:35 UTC 版)

批判

1990年代後半、主要国首脳会議世界銀行世界貿易機関国際通貨基金と共に、資本主義グローバリゼーションが貧困を拡大し環境を破壊していると主張する反グローバリゼーション活動家から厳しい批判を受けた。メルボルンで開催された世界経済フォーラムでは、1,500人におよぶデモ参加者が抗議行動を繰り広げ、200名の代表者が会議会場への入場を妨げられた。ダボスで行なわれる年次総会の周辺ではデモ活動が繰り返し発生している。ボノU2)は「雪の中に集う金持ちたち」と皮肉まじりに呼んだ。

2003年1月の年次総会からは、オープン・フォーラム・ダボス(スイス・プロテスタント教会連合との共催)が同時に開催されており、グローバル化について討議する場を一般の人々に提供している。このオープン・フォーラムは毎年、現地の高校を会場に著名な政治家やビジネスリーダーを招いて開催され、一般の人々に無料で公開されている。

年次総会は「華やかさと陳腐さが入り交じったもの」とも称され、深刻な経済問題を遠ざけ、実質的な成果をほとんど生み出さないと批判されている。特に、経済に関する専門知識をほとんどまたは全く持ち合わせていない非政府組織の参加が増えていることが槍玉にあげられている。ダボス会議は今や、実業界や政界の重要人物と並んで、見識ある専門家と世界経済をテーマに議論するというよりは、メディアの関心を呼ぶ昨今の政治的主張(世界の気候変動やアフリカのエイズ問題など)に焦点を当てている[15]

また、世界経済フォーラムが発表している統計やランキングは、いくつかの任意的な統計を使用しており、信頼性に問題があるとの批判がある[16]

しかしビルダーバーグ会議と違って、ダボス会議は”討論内容や発言が全て公開される”ため、秘密主義ではない。

警備の公的費用

2000年1月には、1000人を数える抗議者がダボスを行進し、その間、現地のマクドナルドの窓が割られた。ダボス会議の警備が強化され、デモ参加者がこのアルプスリゾートから遠ざけられた今では、デモは主にスイスのチューリッヒベルンバーゼルで行われている。世界経済フォーラム、スイスの州、および国内当局とで分担されている警備費用については、スイスの国内メディアでも幾度となく批判の的となっている[17]

出資する支援者からの影響

さらなる関与を深めている、ケネディスクールでの権限のあるメンバースティーブン・ストラウス英語版は、(その会議についての知的な議題を設定できる能力を有する、毎年の会議での出資に対する見返りを受ける者の)WEFの戦略的なパートナーたちが重大な犯罪、市民のまたは人間としての権利の違反、一定の話題における中立な招集者としてのフォーラムの正当性についての持ち上がる顕著な問題を断罪し続けてきたことを指摘する。[18]

「ダボス人」

「ダボス人」[注 1] は(支配的な)金持ちのグローバル・エリートを指す造語であって、彼らのメンバーは自らを完全な「国際的な」者としてみる。それはウォール街での有力な金融業者に当てはまる世界の長(英:Master of Universe)の用語に似ている。

ダボス人は推察するに彼らの身元を個人の選択としてみて、出自によるものとは見ない。「ダボス人」の語句を最初に考えて信じている、社会学者サミュエル・P・ハンティントンによれば、彼らは「国家の忠義に対して必要を持たず、国境を有難く消えていればよい障害物として見て、そして国家の政府をそれの唯一の便利な機能はエリートによるグローバルな操作を容易にする過去の遺物として考える」人々[19] である。2004年の記事の"Dead Souls: The Denationalization of the Americal Elite"で、この国際的な視野は少数のエリート主義者の立場であって国民の国家主義者の多数派には分かち合えないとハンティントンは主張する[20]

ダボス人の超国家的なイデオロギーは、自由民主主義歴史の終焉と最後の人間の完全な充足を提示することであるところのフランシス・フクヤマの主張への重大な問題を提示することを、ハドソン研究所ジョン・フォンテ英語版は示唆した。[21]


注釈

  1. ^ 原語"Davos Man"は「ダボス男」のようにも訳せるが、男女平等の思想の立場を尊重してこの訳を選んだ。ただし、開催地の人もダボス人と呼ばれて、あいまいさが残るかも知れないので、素直に「ダボス・マン」と音訳するのが無難かもしれない。なお"Davosman"であれば「ダボス屋」となり何か怪しいロビーイストのような感じがする(あくまで訳者個人の感想です)。

出典

  1. ^ ミッション”. 世界経済フォーラム. 2022年7月21日閲覧。
  2. ^ a b c d 世界経済フォーラム(WEF) / World Economic Forum | 国際機関 | 世界情報通信事情”. www.soumu.go.jp. 2022年7月21日閲覧。
  3. ^ ダボス会議出席の福岡市長がエストニア首相と会談 相互交流に期待感 2018/01/31 産経新聞社
  4. ^ 黒川清氏の学術の風 デジタルニューディール - (株)DND研究所。
  5. ^ 中国首相 「夏のダボス会議」で演説 市場開放進める姿勢を強調(NHK、2023年6月)
  6. ^ Young Global Leader Honorees 2009
  7. ^ Young Global Leaders Honourees 2010
  8. ^ List of 2011 Young Global Leaders Honourees
  9. ^ List of 2014 Young Global Leader Honourees
  10. ^ Pandemic is chance to reset global economy, says Prince Charles” (英語). the Guardian (2020年6月3日). 2022年7月22日閲覧。
  11. ^ About | World Economic Forum”. web.archive.org (2020年7月30日). 2022年7月22日閲覧。
  12. ^ We must move on from neoliberalism in the post-COVID era” (英語). World Economic Forum. 2022年7月22日閲覧。
  13. ^ World Economic Forum - The world must move on from neoliberalism after the pandemic according to World Economic Forum Founder Klaus Schwab | Facebook | By World Economic Forum | Time for change. 📕 Read more: https://bit.ly/3mA048w #WorldBookDay World Economic Forum Book Clubhttps://www.facebook.com/worldeconomicforum/videos/the-world-must-move-on-from-neoliberalism-after-the-pandemic-according-to-world-/215228153695155/2022年7月22日閲覧 
  14. ^ What works for workers: Stakeholder Capitalism video podcast series” (英語). World Economic Forum. 2022年7月22日閲覧。
  15. ^ ダボス会議ともう一つの世界”. GNV (2023年1月12日). 2024年1月17日閲覧。
  16. ^ “【噴水台】“カモ”な大韓民国”. 中央日報. (2015年10月3日). http://japanese.joins.com/article/495/206495.html 2015年10月3日閲覧。 
  17. ^ Michel Liechti; Giovanni Arcudi; Marisa Vonlanthen (2004). Frontières entre police et armée (Report). {{cite report}}: 不明な引数|paper=は無視されます。 (説明) , Cahier du GIPRI, no.2.
    Archived 18 October 2016 at the Wayback Machine.
  18. ^ Strauss, Steven (2014年1月12日). “Why Do U.S. Politicians Meet With 'Criminal' Entities in Switzerland?”. The Huffington Post. https://www.huffpost.com/entry/us-politicians-meeting-with-criminal-entities_b_4586094 2014年1月17日閲覧。 
  19. ^ Garton Ash, Timothy (3 February 2005), Davos man's death wish, https://www.theguardian.com/comment/story/0,,1404411,00.html  Archived 21 August 2008 at the Wayback Machine.
  20. ^ Huntington, Samuel (Spring 2004), “Dead souls: The Denationalization of the American Elite”, National Interest, http://nationalinterest.org/article/dead-souls-the-denationalization-of-the-american-elite-620 Archived 14 September 2016 at the Wayback Machine.
  21. ^ , http://www.hudson.org/tiles/publications/transnational_progressivism.pdf  Archived 2 December 2008 at the Wayback Machine.





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「世界経済フォーラム」の関連用語

世界経済フォーラムのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



世界経済フォーラムのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの世界経済フォーラム (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS