不整脈 検査

不整脈

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/30 15:19 UTC 版)

検査

など

治療

上記の分類から個々の不整脈の項を参照のこと。

治療が必要な不整脈に対しては、抗不整脈薬により不整脈を抑えたり、脈拍をコントロールする薬物治療や、ペースメーカー植え込み型除細動器 (ICD) などの外科的処置を行う非薬物治療が行われる。心室細動などの危険な不整脈では除細動器により心臓にショックを与え(除細動)、心臓のリズムを正常に戻す必要がある。

ACLSにおいては、全ての抗不整脈薬はそれ自体が不整脈の原因となりうるという認識の元、電気的治療をまず優先し、薬物治療も使用する薬剤の種類を出来るだけ少なくするよう推奨している。

心臓突然死

不整脈、心筋梗塞心筋症弁膜症などの心疾患による突然死を心臓突然死と呼ぶ。心臓突然死の原因としては、虚血性心疾患心室細動が多いとされている。QT延長症候群ブルガダ症候群などの特殊な心電図波形を示す不整脈も心臓突然死の原因として知られている。

心電図の読み方

不整脈の診断はまずは心電図であるのでその読み方を示す。

大まかな考え方

心電図の所見のとり方から診断のプロセスは記載すると膨大になるので、財団法人心臓血管研究所の山下武志による分類をここで記す。どんな心電図をみたにしろそれによって行うことは「放置する」、「自分の力で片付ける」、「緊急に他人の力を借りる」の3つに分けることができる。緊急性の評価には心電図よりもバイタルサインの方がはっきりとする。モニター心電図をみてVTのような波形があって循環動態が悪く意識障害などを起こしていれば緊急に処置をする必要があるが、声をかけて「何ですか?」と言われるようだったらそれはあくまで心電図上だけの問題であり、循環動態は全く悪くなっていない。

基本的な所見をとる手順

  1. 調律・心拍数に関して
    • P波とP波の間隔、R波とR波の間隔を計測し、その逆数から心房拍数、心室拍数を求める。間隔は3心拍を平均する。心房細動などP波がないときはPP間隔は記載しない。
    • PP間隔(秒)、RR間隔、心房拍数(60〜100)、心室拍数(60〜100)を記載する。
    • 調律の判定をする。これは正脈か時に不整脈か、絶対的不整脈かを判定する。
  2. QRS平均電気軸と移行帯を測定する
    • 電気軸は-30から100が正常で、移行帯はV3あたりならOK。
  3. 基本測定
  4. 波形
    • P波電位(0.25以下)と振幅(0.10以下)
    • Q波、異常Q波は幅が0.04以上か振幅がR波の1/4異常である。
    • QRS波、特にRV5+SV1が3.5を超える、またはRaVLが1.2を超える場合は心肥大を疑う。また低電位がないかも調べる。
    • ST、ST上昇、ST下降がないか?
    • T波は高くないか(12mV以上、これは高カリウム血症を疑う)、陰性T波はないか?これは心筋症や心筋虚血を疑う。
    • U波はないか?U波は低カリウム血症の陰性U波は心室負荷、心筋虚血を疑う。
    • 不整脈はないか?徐脈頻脈、心室性期外収縮、上室性期外収縮、心房細動心房粗動、その他。
  5. 総合所見を述べる。

開き直った考え方

医療行為において、医療者が行うことは次の3つのパターンしかない。第一に放置する、第二に自分の力で片付ける、第三に緊急に他人の力をかりるということである。心電図を見るときも同じである。特に重要なのは他人の力を借りるかという判断である。これはバイタルサインなど他の情報が大いに参考になる。この判断は大抵、心電図以前の不整脈の知識で解決ができる。不整脈かどうかの判断は主に心電図によって行われる。あくまで不整脈のスクリーニングをしたいだけならば12誘導のうちII誘導とV1誘導のみで十分である。特にII誘導はP波が読みやすく重宝する。このやり方は不整脈以外を見落とすので注意が必要である。ST変化の見落としを避けるためにあらかじめST変化だけ12誘導で除外しておくことが大切である。モニター心電図などにはSTの情報はないと認識しておくことが大切である。経験的に心拍数が正常でQRS幅が狭ければ大抵の場合は血行動態は安定している。頻脈でQRS幅が広ければ患者の状態を確認する必要がある。不整脈の場合は放っておいたら悪くなるのではという不安が常に付きまとう。しかし、まず必要なのは今治療が必要なのかという問題であり、将来のことは後回しの考えるのが通常である。悪くなる場合は基礎心疾患があることが多く、心電図だけをみても何もできないことが多いからである。

まずは12誘導で洞調律であるのか?ST変化がないのかを調べる。
次にII誘導とV1誘導で不整脈のスクリーニングをする。特に重要なのは患者の様子、心拍数QRS幅である。

徐脈の考え方

心拍数の正常値は50〜100/分であり、50/分を下回ると徐脈といわれる。脈拍は日内変動があり夜は遅くなる傾向がある。即ち、夜の脈拍に関しては多少正常値を下回っても気にしなくてよい。気にするべきところは不整脈となるのかという点であり、これは急に遅くなった、2秒以上脈が止まったらといったエピソードや心電図所見から考えていけばよい。徐脈性不整脈の診断は非常に簡単である。P波が正常に存在していれば房室ブロックであり、P波が存在しなければ洞機能不全症候群である。このふたつの違いは非常に重要である。房室ブロックは心室の障害であり突然死のリスクにあるからである。これをみたら心疾患のスクリーニングをし、原因がわからなければ命を守るためペースメーカーの適応となる。洞機能不全症候群の場合は、症状がなければ放置であり、症状があった場合も治療をしたとしても予後に変化がないのでQOL向上目的の治療となる。

頻脈の考え方

心拍数の正常値は50〜100/分であり、100/分を上回ると頻脈といわれる。頻脈でも洞性頻脈というものがあり、運動で徐々に頻脈がおこるのは極めて正常な反応であるので不整脈をみるという観点からは突然早くなるというエピソードや心電図所見が重要である。不整脈としての頻脈の場合はQRS幅が非常に重要である。QRS幅が0.12秒、即ち3mm未満なら上室性(大抵は心房性)の不整脈であり、0.12秒、即ち3mm以上であれば心室性の不整脈である。心室性の不整脈の場合は緊急事態であり、即急な対応が求められる。QRS幅によって不整脈の部位を特定できるというのは、正常な特殊心筋を刺激が伝導した場合は0.12s以内に伝導が終了するであろうという経験則である。重要な例外として変行伝導という言葉がある。これはQRS幅が広いのに上室性の不整脈である。しかし、QRS幅が狭いのに心室性の不整脈という現象はほとんど知られていないのでまずはQRS幅が広ければ緊急事態と考えておけばミスは少ない。心室性か上室性かの判断ができたら、上室性ならPP間隔で心房拍数を心室性ならRR間隔で心室拍数を調べ、それによって不整脈の名前をつける。それとは別に触診法で有効な脈拍数を別に数えておくのが重要である。これは患者の状態を把握するもので不整脈の診断にはそれほど重要ではない。頻脈性不整脈の場合はどれがP波かなど波形をひとつずつ定義するのは難しい場合が多々ある。その場合はイメージで行うのだが経験がないと難しい。基本的には電気的な拍数が100〜250/分なら頻拍で250〜350/分ならば粗動であり、350/分を超えれば細動という。但し、心室粗動という言葉は臨床上は存在しない。たまに速い脈が出る程度なら期外収縮という。

脚注




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