マーガレット・マクドナルド・マッキントッシュ 発想とスタイル

マーガレット・マクドナルド・マッキントッシュ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/08 23:28 UTC 版)

発想とスタイル

写実ではなく想像力に依拠する姿勢を貫いたマクドナルド・マッキントッシュは、スケッチブックをつけなかった[23]。制作に大きなインスピレーションを得る源は聖書、『オデッセイア』、モリスロセッティの詩、モーリス・メーテルリンクの作品などである。しばしば作品を共作した姉妹はともに同時代の芸術の概念を無視したとグリーソン・ホワイト Gleeson White は記す。「この姉妹二人はまったくの無邪気を装いつつ、他人からエジプトの装飾に特に関心があったと定義されようとも認めはしない。『何物にも偏っていません』と言うばかりで理論を示して展開するわけでもない。」

芸術家として自らの想像力を大きくふくらませるところから出発し、伝統的なテーマや寓話、象徴の再解釈に独創を加えると、ふれ幅の広い実験を展開する[24]。姉妹でグラスゴーにスタジオを開いた1896年からまもなく、人間の姿を借りて「時間」や「夏」「冬」などの作品を発表、幅広いアイデアを変換し高度に様式化する手法が見られる[25]。人間の裸体を細長く引き伸ばし、落ち着いた自然な色調を用いて幾何学と自然のモチーフを微妙に取り合わせて相互作用を引き出す点に、他の芸術家との違いが現れるといえる[26]

著名な作品

最もよく知られた作品は『メイクィーン』(The May Queen)というジェッソパネルで、やはりパネルの『The Wassail』とペアにして女性起業家クラントンがイングラム街で経営する喫茶室の、女性ランチョンルームに納められた。

これとは別にウィロー・ティールームズの特別喫茶室 (ルームドリュクス) には、柳の木に寄り添う女性像『Oh ye, all ye that walk in Willowwood』を組み込んだ。同店はインテリアの修復を2017年 - 2018年に行うと、この女性像の複製画を元の部屋の本来の位置に取り付けている。現在、これら3点のオリジナルは、すべてケルビングローブ美術館・博物館(グラスゴー)が展示する。

マクドナルド・マッキントッシュ最大の作品『#七王女』は、3点1組の作品である。ワーンドルファーの別荘の壁面いっぱいを7名の女性群像が飾った。同名の演劇の一場面を描き (戯曲はモーリス・メーテルリンク作)、ウィーンとその美術界では誰もが知る作品である。風、海のテーマのパネル2点をピアノに添えた。この別荘は1916年に売却され、同作品は長く一般の目に触れる機会がなかった。ところが1990年、ウィーン国立工芸美術館の地下収蔵庫から木箱に梱包された状態で発見されたおかげで、オーストリア応用美術博物館の収蔵品として常設展示されるにいたる[27]

2008年の美術品競売では、『白いバラと紅いバラ』(1902年)が170万英ポンド (当時の時価で330万ドル相当) で落札された[28]

マッキントッシュハウス

チャールズが設計して建てたグラスゴーのマッキントッシュ邸は、1920年に友人で後援者だったデイビッドソンに譲られ、のちにグラスゴー大学が買い取った[3]。建物の取り壊しに際して室内装飾と家具や調度品は取り外し、同学ハンテリアン博物館で保存ののちに「マッキントッシュハウス」という展示施設に内装を再現している[1]。2018年に旧マッキントッシュ邸建築100周年を迎えると、スコットランド議会ならびにグラスゴー市の後援を得て記念行事が催され、グラスゴー市内のゆかりの建築をめぐるツアーや児童生徒絵画コンクールを開いた。

オークルーム復原計画

回想展

2019年から3年にわたり、グラスゴーの4人組の作品が各地をめぐり展示される[3][4]リバプールウォーカー・アート・ギャラリー(2019年3月)からアメリカへわたり、ウォルターズ美術館ボルティモア - 2020年1月)、フリスト美術館(Frist Art Museum、ナッシュビル - 2020年9月)、アメリカン・アート・アンド・クラフト運動美術館英語版セントピーターズバーグ - 2021年1月)、リチャード・H・ドリーハウス美術館英語版シカゴ - 2021年5月)で催されることが決まった[4]


注釈

  1. ^ ウィリアム・デイビッドソンはマッキントッシュにウィンディヒルの家(1900年)の設計と建築を依頼した人物。
  2. ^ 画面下の名札のような枠内、植物名の次の行の左右に縦書きで3文字のイニシャルがある。左列1文字目の「C」は夫チャールズ、右列1文字目はマーガレットの「M」。このことから、しばしば共作を示唆すると解釈されるが、研究者ロジャー・ビルクリフ (他) はむしろ、作品制作中にマーガレットの存在が支えになったからこそ「M」を加えたと断定する。
  3. ^ メーテルリンクの物語『七王女』を、ジェッソパネル3枚で展開する。

出典

  1. ^ a b c d Margaret Macdonald (1864–1933)”. Charles Rennie Mackintosh Society. 2016年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月25日閲覧。
  2. ^ Final opportunity to see outstanding Charles Rennie Mackintosh exhibition at Kelvingrove” (英語). Glasgow Life. 2020年11月1日閲覧。
  3. ^ a b c d e f マッキントッシュ・コレクションについて(The Hunterian - Collections - Collection Summaries - Art - The Mackintosh Collection)”. www.gla.ac.uk. グラスゴー大学. 2020年11月1日閲覧。
  4. ^ a b c 巡回展「グラスゴー派をつくったチャールズ・レニー・マッキントッシュ」(Charles Rennie Mackintosh Making the Glasgow Style Exhibition Tour)” (英語). Glasgow Life. Culture and Sport Glasgow ; Culture and Sport (Trading) CIC.. 2020年11月1日閲覧。
  5. ^ 学籍より。Orme Girls' School, Newcastle-under-Lyme, Registers。
  6. ^ 国勢調査より。1881 Census。
  7. ^ The Mysterious Garden – Margaret Macdonald Mackintosh”. スコットランド国立美術館群英語版. 2015年10月25日閲覧。
  8. ^ a b c Panther, Patricia. “Margaret MacDonald: the talented other half of Charles Rennie Mackintosh”. BBC. BBC. 2015年3月8日閲覧。
  9. ^ MX.04 Interiors for 120 Mains Street”. Mackintosh Architecture : Context, Making and Meaning. University of Glasgow. 2014年12月4日閲覧。
  10. ^ a b c d Margaret Macdonald”. collections.gla.ac.uk. グラスゴー大学. 2020年11月1日閲覧。
  11. ^ Robertson, Pamela, ed (2001). “The Chronicle: the letters of Charles Rennie Mackintosh to Margaret Macdonald Mackintosh, 1927.”. Mackintosh, Charles Rennie, and Pamela Robertson (再版 ed.). Glasgow: Hunterian Art gallery, University of Glasgow. OCLC 47777244 ISBN 0904254755, 9780904254754
  12. ^ Kirkham 2001, p. 81.
  13. ^ Robertson 1990, p. 57.
  14. ^ Robertson 1990, pp. 85.
  15. ^ a b c 竹内有子. “グラスゴー派”. アートスケープ/現代美術用語辞典ver.2.0. 大日本印刷. 2020年1月7日閲覧。
  16. ^ Morris, William (1858). The Defence of Guenevere : and other poems / by William Morris. London: Bell and Daldy ; Chiswick Press ; Whittingham, Charles (1795-1876) . 歴代の所有者は Dannreuther, Edward(1844-1905)、Taylor, George Warington(1835-1870)、De Beaumont, Robin。
  17. ^ The defence of Guenevere : and other poems”. search.lib.buffalo.edu. University Libraries, University at Buffalo. 2019年11月19日閲覧。 特別収集品、稀覯本(Special Collections Rare Books PR5078 .D4 1858)
  18. ^ Defence of Guenevere - ublibraries”. ublibraries.smugmug.com. 2019年11月19日閲覧。
  19. ^ The Willow Tea Rooms(ウィロー・ティールームズ)”. The Charles Rennie Mackintosh Society. 2006年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月29日閲覧。
  20. ^ Katalog 1909, p. 48.
  21. ^ Mackintosh Architecture: The Catalogue - browse - display”. www.mackintosh-architecture.gla.ac.uk. 2017年6月5日閲覧。
  22. ^ Levetus, Amelia S. (1909年5月29日). “Glasgow Artists in Vienna: Kunstschau Exhibition”. Glasgow Herald: p. 11 
  23. ^ Robertson 1990, p. 113.
  24. ^ Robertson 1990, p. 117.
  25. ^ Robertson 1990, p. 110.
  26. ^ Robertson 1990, p. 109.
  27. ^ Sammlung Online” (ドイツ語). www.sammlungen.mak.at. 2017年6月5日閲覧。
  28. ^ MARGARET MACDONALD MACKINTOSH THE WHITE ROSE AND THE RED ROSE, 1902”. Christie's. 2015年10月25日閲覧。
  29. ^ ナショナル・トラスト・スコットランド 2017.





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