フランス・ルネサンスの文学 その他

フランス・ルネサンスの文学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 17:05 UTC 版)

その他

フランス・ルネサンス期の文学は、哲学的思索の領域を始めとする他の諸領域にも見るべきものが多くある。

『エセー』

ミシェル・ド・モンテーニュは、最初の近代的な随筆作家であり、深い洞察に満ちた主著『エセー』は、今なお示唆に富む。また、エチエンヌ・パーキエの『フランスの探求』は、モンテーニュとはまた別の、歴史的、政治的、文化的観察の記念碑的作品である。

ルネサンス期はフランス語の正書法をめぐって様々な試みが行われた時期であり、ルイ・メグレとギヨーム・デ・ゾーテルは、16世紀半ばに正書法論争を展開した。

ブラントームは、宮廷男女の伝記的素描を行った。また、ピエール・ド・レトワルの日記は、16世紀後半から17世紀初頭のパリ市民の暮らしぶりを窺う上で貴重である。ただし、彼らの著作が公刊されたのは、死後かなり経ってからのことであった。

書誌の分野では、ラ・クロワ・デュ・メーヌアントワーヌ・デュ・ヴェルディエが相次いで記念碑的な書誌を刊行し、当時の作家たちの現存しない文献などについても、貴重な証言を提供してくれている。

また、カトリック同盟ナヴァル家のアンリが対立した1585年頃から1594年頃までは、同盟側、王党派双方が夥しいパンフレット類を刊行して文書合戦を繰り広げた。これは、フランス出版史上最初の大規模な文書合戦であり、王党派の側にはエチエンヌ・パーキエなども参加した。これらもまた、ユグノー戦争が当時の文学にもたらした影響の一つということができる。

主要作品年表

  1. 便宜上、【詩】【長編物語】【短編物語】【悲劇】【喜劇】【その他】で分類している。各分類には、関連の深いもの(詩の場合は作詩論など)も含んでいる。
  2. 斜字体は、フランス以外の作品を表している。翻訳と明記されているものは、フランス語訳されたものを指し、記載のないものは、他言語(主にラテン語)のままフランス国内で出版されたものを指す。
  3. フランス人が執筆したラテン語作品は、作品名の後に明記。
  • 1504年 - 【詩】ジャン・ルメール・ド・ベルジュ『名誉と美徳の寺院』
  • 1515年頃 - 【短編物語】フィリップ・ド・ヴィニュール『小説集』(大半は散逸)
  • 1515年 - 【その他】ギヨーム・ビュデ『古代貨幣考』
  • 1522年 - 【その他】編著者不明『ミラビリス・リベル
  • 1526年 - 【長編物語】(翻訳)ディエゴ・デ・サン・ペドロ『愛の牢獄』(1604年までに13版を数えた)
  • 1530年 - 【長編物語】(翻訳)フアン・デ・フロレス『愛の裁き』
  • 1531年 – 【詩】マルグリット・ド・ナヴァル『罪深き魂の鏡』
  • 1531年 - 【その他】ジュール・セザール・スカリジェ『キケロのためのエラスムスに抗する言説』(ラテン語)
  • 1532年 – 【詩】クレマン・マロ『クレマンの若き日』
  • 1532年 - 【長編物語】フランソワ・ラブレーパンタグリュエル
  • 1533年頃 - 【その他】フランソワ・ラブレー『パンタグリュエル占筮
  • 1534年 - 【長編物語】フランソワ・ラブレー『ガルガンチュワ
  • 1536年 - 【詩】エチエンヌ・ドレら『王太子追悼詩集』
  • 1536年 - 【その他】(翻訳)アンドレーア・アルチャートエンブレマタ
  • 1538年 - 【詩】クレマン・マロ『作品集』
  • 1538年 - 【詩】ジャン・ド・ヴォゼル『死神の幻影と飾られた顔』
  • 1538年 - 【長編物語】エリゼンヌ・ド・クレンヌ『愛から生じる悲痛なる煩悶』
  • 1539年 - ヴィレル=コトレの勅令
  • 1539年 - 【詩】ギヨーム・ド・ラ・ペリエール『良き創意の劇場』
  • 1539年 - 【長編物語】(翻訳)ディエゴ・デ・サン・ペドロ『アルナルテとルセンダの愛』(1582年までに14版を数えた)
  • 1540年 - 【詩】ジル・コロゼ『エカトングラフィー』
  • 1541年 - 【その他】ジャン・カルヴァン『キリスト教教程』
  • 1542年 - 【その他】ルイ・メグレ『フランス語表記論』
  • 1543年 - 【その他】(翻訳)ホラポロヒエログリュピカ
  • 1544年 - 【詩】モーリス・セーヴデリー
  • 1544年 - 【長編物語】(散文訳)ルドヴィーコ・アリオスト『怒れるオルランド』
  • 1545年 - 【詩】ペルネット・ド・ギエ『韻文集』
  • 1545年 - 【短編物語】(翻訳)ジョヴァンニ・ボッカッチョデカメロン
  • 1546年 - 【長編物語】フランソワ・ラブレー『第三之書
  • 1546年 - 【長編物語】(翻訳)フランチェスコ・コロンナ『ヒュプネロトマキア・ポリフィリ
  • 1547年 - 【詩】ジャック・ペルチエ・デュ・マン『詩篇集』
  • 1547年 - 【詩】メラン・ド・サン=ジュレ『作品集』
  • 1547年 - 【短編物語】ノエル・デュ・ファイユ『田園閑話』
  • 1548年 - 【詩】(ジャン・ル・フェーブルによる韻文訳)アルチャート『エンブレマータ』
  • 1548年 - 【長編物語】フランソワ・ラブレー『第四之書
  • 1548年 - 【その他】ギヨーム・デ・ゾーテル『フランス古書法論』
  • 1549年 - 【詩】ジョアシャン・デュ・ベレーフランス語の擁護と顕揚』『オリーブ』
  • 1549年 - 【詩】ポンチュス・ド・チヤール『恋愛の過ち』
  • 1550年 - 【詩】ピエール・ド・ロンサール『オード四部集』
  • 1550年 - 【悲劇】テオドール・ド・ベーズ『生贄のアブラハム』
  • 1550年 - 【その他】ジャック・ペルチエ・デュ・マン『フランス語の正書法と発音の対話』
  • 1551年 - 【詩】クロード・パラダン『英雄的銘句とエンブレム』
  • 1552年 - 【詩】ピエール・ド・ロンサール『恋愛詩集』『オード第五集』
  • 1552年 - 【詩】ギヨーム・ド・ラ・ペリエール『四界の考察』
  • 1552年 - 【詩】バルテルミー・アノー『詩的想像力』(同じ年にラテン語版とフランス語版)
  • 1552年 - 【喜劇】エチエンヌ・ジョデル『ウジェーヌ』
  • 1552年 - 【その他】ギヨーム・パラダン『当代の歴史』
  • 1553年 - 【悲劇】エチエンヌ・ジョデル『囚われのクレオパトラ』
  • 1555年 - 【詩】ピエール・ド・ロンサール『続恋愛詩集』
  • 1555年 - 【詩】ロンサール、ジャン・ドラ『バックス賛歌』(フランス語 / ラテン語)
  • 1555年 - 【詩】ジャック・ペルチエ・デュ・マン『フランス詩法』『愛の中の愛』
  • 1555年 - 【詩】ルイーズ・ラベ『作品集』
  • 1555年 - 【詩】ノストラダムス予言集
  • 1556年 - 【詩】ギヨーム・ゲルー『エンブレム第一の書』
  • 1556年 - 【悲劇】ジャン・バスチエ・ド・ラ・ペリューズ『メデイア』
  • 1556年 - 【その他】ギヨーム・パラダン『続・当代の歴史』
  • 1557年 - 【その他】ポンチュス・ド・チヤール『哲学的言説』
  • 1558年 - 【詩】ジョアシャン・デュ・ベレー『ローマの古代』『悔悟』『夢』
  • 1558年 - 【短編物語】ボナヴァンチュール・デ・ペリエ『新たな娯楽と楽しき懇談』(枠物語)
  • 1559年 - 【短編物語】マルグリット・ド・ナヴァル『エプタメロン』(この表題での最初の公刊)
  • 1559年 - 【詩】ギヨーム・デ・ゾーテル『ファンフルリュシュとゴーディション』
  • 1560年 - 【その他】ピエール・ボエスチュオー『驚倒すべき物語』
  • 1560年 - 【喜劇】ジャック・グレヴァン『驚かされた人々』
  • 1560年 - 【その他】エチエンヌ・パーキエ『フランスの探求』第一巻
  • 1561年 - 【詩】ジュール・セザール・スカリジェ『詩学』(ラテン語)
  • 1561年 - 【喜劇】コンラッド・バディウス『病気の教皇の喜劇』
  • 1562年 - 【詩】モーリス・セーヴ『小宇宙』
  • 1563年 - 【悲劇】ジャン・ド・ラ・タイユ『狂人サウル』
  • 1564年 - 【長編物語】ラブレー(?)『第五之書
  • 1565年 - 【詩】レミ・ベロー『牧歌』
  • 1565年 - 【喜劇】ジャン=アントワーヌ・ド・バイフ『エウヌクス』(テレンスの喜劇の翻案)
  • 1568年 - 【詩】アントワーヌ・デュ・ヴェルディエ『戦争と平和のアンチテーゼ』
  • 1571年 - 【詩】エチエンヌ・ド・ラ・ボエチー『フランス語詩集』
  • 1571年 - 【詩】ジョルジェット・ド・モントネー『エンブレムあるいはキリスト教的銘句』
  • 1571年 - 【長編物語】フランソワ・ド・ベルフォレ『ピレネー』
  • 1572年 - 【詩】ピエール・ド・ロンサール『フランシアード』
  • 1572年 - 【短編物語】エチエンヌ・タブーロ・デ・ザコール『雑集』
  • 1572年 - 【短編物語】ジャック・イヴェル『イヴェルの春』
  • 1572年 - 【悲劇】ジャン・ド・ラ・タイユ『悲劇の技芸』
  • 1573年 - 【悲劇】ロベール・ガルニエ『ユダヤ人』
  • 1573年 - 【その他】アンブロワーズ・パレ『外科医の二書』
  • 1574年 - 【その他】ピエール・ド・レトワル『日記』(以降1611年まで)
  • 1575年 - 【詩】アグリッパ・ドービニェ『惨状』
  • 1575年 - 【その他】ジャン・ド・ノートルダム『古プロヴァンスの最も名高い詩人たちの生涯』
  • 1576年 - 【その他】ジャン・ボダン『国家論』
  • 1578年 – 【詩】ギヨーム・ド・サリュスト・デュ・バルタス『一週間』
  • 1578年 - 【悲劇】ロベール・ガルニエ『マルク=アントワーヌ』
  • 1578年 - 【その他】ジャン・ド・レリ『ブラジル旅行記』
  • 1578年 - 【その他】アンリ・エチエンヌ『イタリア語化された新フランス語の対話二篇』
  • 1579年 - 【喜劇】ピエール・ド・ラリヴェ『最初の6つの喜劇』
  • 1580年 - 【詩】エチエンヌ・ド・ラ・ボエチー『ソネット集』
  • 1580年 - 【その他】ミシェル・ド・モンテーニュエセー
  • 1580年 - 【その他】ベルナール・パリッシー『水と泉の驚異の言説』
  • 1581年 - 【詩】ジャン=アントワーヌ・ド・バイフ『宝庫、教訓及び格言』
  • 1583年 - 【短編物語】ベニーニュ・ポワスノ『夏』
  • 1584年 - 【詩】ジャン=ジャック・ボワサール『エンブレマタ』(ラテン語)
  • 1584年 - 【その他】ラ・クロワ・デュ・メーヌラ・クロワ・デュ・メーヌ殿の蔵書第1巻
  • 1585年 - 【長編物語】ニコラ・ド・モントルー『ジュリエットの牧歌』
  • 1585年 - 【短編物語】ヴェリテ・アバン『悲しくもあり楽しくもある新たな物語』
  • 1585年 - 【その他】アントワーヌ・デュ・ヴェルディエ『アントワーヌ・デュ・ヴェルディエの蔵書』
  • 1587年 - 【長編物語】(散文訳)トルクァート・タッソ解放されたエルサレム
  • 1588年 – 【詩】ジャン・ド・スポンド『キリスト教的な数篇の詩の随想』
  • 1594年 - 【悲劇】ニコラ・ド・モントルー『イザベル』『クレオパトラ』
  • 1596年 - 【長編物語】匿名『ラ・マリアーヌ・デュ・フィロメーヌ』
  • 1597年 - 【詩】マルク・ド・パピヨン『作品集』

参考文献

  • Georges Grente/ Michel Simonin (direction), Dictionnaire des lettres françaises: le XVIe siècle, Paris, 2001
  • Richard Crescenzo, Histoire de la littérature française du XVIe siècle, Paris, 2001
  • Frank Lestringant, Josiane Rieu & Alexandre Tarrête, Littérature française du XVIe siècle, Paris, 2000
  • V.-L.ソーニエ著 二宮敬 山崎庸一郎 荒木昭太郎 訳『十六世紀フランス文学』ISBN 4560057141






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