デジタル回路 スリーステート・バッファ

デジタル回路

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/10 15:54 UTC 版)

スリーステート・バッファ

スリーステート・バッファ
G X Y
0 0 Z
0 1 Z
1 0 0
1 1 1

出力をハイ・インピーダンスにできる出力回路はスリーステート[注釈 7](三状態の意味)と呼ばれる。また、入力信号をそのまま出力する、信号を出力しない、ハイ・インピーダンスにするかの三状態に切り替えることができる回路は「スリーステート・バッファ」と呼ばれる。回路記号では、バッファを示す三角の印の側面にハイ・インピーダンスにするか否かの入力信号線が入る図形で示される。トライステートとも呼ばれるが、ナショナル セミコンダクターの商品名で、米国では"TRI-STATE"は商標登録されている(登録番号0941335・2138646)。なお、日本で「トライステート」「TRISTATE」は他者が登録している(登録番号 第2671297号)。

出力をハイ・インピーダンスにしないことを指示する入力信号線は、ゲート[注釈 8]の意味で「G」と表記されたり、イネーブル[注釈 9]の意味で「E」または「EN」と表記されることが多い。また、データバスなどのバス構造を持つ部分に使われる場合には、アウトプット・イネーブル[注釈 10]の略で「OE」という記号が使われたり、チップ・セレクト[注釈 11]の略で「CS」という記号が使われることも多い。

双方向バッファ
G X Y
0 0(Out) 0(In)
0 1(Out) 1(In)
1 0(In) 0(Out)
1 1(In) 1(Out)

スリーステート・バッファを2つ組み合わせて、データ通信の方向を切り替えることができるようにした回路もよく使われている。この回路は「双方向バッファ」と呼ばれ、入力GがLの時にはYからXの方向にデータが伝わり、入力GがHの時にはXからYの方向にデータが伝わる。 スリーステート・バッファや双方向バッファは、いくつもの回路ブロックが信号線を共用するデータバスやアドレスバスなどに多用される。このため、データバスなどのビット数の単位となりやすい8個のスリーステート・バッファを一つにまとめたICが製造されており、よく利用されている。

データセレクタ
S X1 X2 Y
0 x 0 0
0 x 1 1
1 0 x 0
1 1 x 1

また、同じくスリーステート・バッファを複数組み合わせ、ワイアードオアの原理を利用して複数の入力信号の一つだけを出力に伝えるという回路を構成することもできる。これは「データセレクタ」と呼ばれる。データセレクタは、一般の論理素子だけを用いて構成することもできる () が、スリーステートを利用することによりはるかに簡単な内部回路で実現できる。本例は2入力のデータセレクタであるが、4入力、8入力などのデータセレクタもこの回路の応用で簡単に作れる。


注釈

  1. ^ 他にも、基準となる交流波に対する位相差、電圧ではなく電流ベースなど、いろいろありうる。
  2. ^ 具体的に許される範囲は異なる。仕様などでは中間に必ず「定常的な状態として、この範囲にしてはならない」という範囲があることが多い。シュミットトリガなど故意にヒステリシスを大きく取り、直前の状態に引きずられるものとして、これを避けることもある。ただしそれでも、非同期系から同期系へのインタフェースには、必ず、セットアップ時間とホールド時間という、何らかのタイミングの瞬間の前後に変動が許されない期間があるため、完全には、準安定状態の可能性を無視してはいけない(en:Metastability in electronics)。
  3. ^ 増幅と同調の順序といった具体的な構成は実例により様々であろう(複同調といった構成もある)。
  4. ^ TTLの出力電圧範囲の入力を許容するCMOSの標準ロジックICもあり、このようなシリーズは「74HCT~」「74ACT~」のように、型番に「T」の文字が入っている。
  5. ^ 大小異なる抵抗を持つ2つの抵抗器を並列に接続した場合、電流は小さな抵抗側により多く流れて、大きな抵抗側には電流はそれほど流れない。抵抗値の大きなプルアップやプルダウンの抵抗器の有無は端子に接続された状態での動作にはそれほど影響しない。
  6. ^ : high-impedance
  7. ^ : three-state
  8. ^ : gate
  9. ^ : enable
  10. ^ : output enable
  11. ^ : chip select
  12. ^ MIL-HDBK-217F notice 2, section 5.3 での10万ゲートの0.8μmCMOS商用集積回路を40℃で使用した場合の値。2010年にはプロセスルールが0.045μmまで小さくなり、ゲート毎に必要なチップ外の接続が少なくなっているため、さらにMTBFが延びている。

出典

  1. ^ "ディジタル回路". 改訂新版 世界大百科事典. コトバンクより2024年3月10日閲覧
  2. ^ ポール・ホロヴィッツ英語版、ウィンフィールド・フィル共著「The Art of Electronics」第二版、ケンブリッジ大学出版局、1989年。ISBN 0-521-37095-7、471ページ
  3. ^ Brown S & Vranesic Z. (2009). Fundamentals of Digital Logic with VHDL Design. 3rd ed. New York, N.Y.: Mc Graw Hill.
  4. ^ ヴィリアム・クライツ(2002年)「Digital and Microprocessor Fundamentals: Theory and Application」第4版、ピアソン・プレンティスホール






デジタル回路と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「デジタル回路」の関連用語

デジタル回路のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



デジタル回路のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのデジタル回路 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS