サランボー サランボーの概要

サランボー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 14:18 UTC 版)

サランボー
Salammbô
1883年版のタイトルページ
作者 ギュスターヴ・フローベール
フランス帝国
言語 フランス語
ジャンル 長編小説歴史小説
発表形態 書き下ろし
刊本情報
出版元 レヴィ書房
出版年月日 1862年11月24日
日本語訳
訳者 生田長江
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ボヴァリー夫人』(1857年)に続く2作目の長編小説で、第一次ポエニ戦争後の古代カルタゴを舞台にしている。「サランボー」はカルタゴの将軍ハミルカル・バルカハンニバルの父親)の娘という設定の女性の名で、この人物はフロベールの創作である。巫女であった彼女は、戦争後に起こった傭兵の反乱において、女神タニット英語版を祀る神殿から奪われた聖布を取り返すよう命じられ、ひとり反乱軍の指導者マトーの天幕を訪れる。彼女は聖布を取り返すが、彼女に恋焦がれるマトーと一夜をともにしたことによって彼女自身もマトーを愛するようになり、反乱の鎮圧後捕えられて儀式の生贄となったマトーの姿を見て煩悶のうちに死ぬ、という筋で、ロマン的な主題ながら写実的な表現技法がとられている。

この題材は『ボヴァリー夫人』に数年間取り組んだことで卑近な題材に飽いたフロベールの、現代から離れた理想的な主題に取り組みたいと願いから選ばれたもので、彼はこの作品を書くためにポリュビオスの『歴史』をはじめとする夥しい量の文献を渉猟し、1858年にはチュニスを実地に訪れ物語の舞台を見学した。1862年にレヴィ書店より出版されると、本作を失敗作とみなし仰々しい文章を難じたサント・ブーヴの書評をはじめとするいくらかの批判に晒されたものの、『レ・ミゼラブル』を出版したばかりのユゴーのほかボードレールゴーティエミシュレジョルジュ・サンドなどから賞賛され大衆的にも成功を収めた。宮廷やサロンでは本作がもてはやされ、仮面舞踏会でカルタゴ風の衣装が流行するなど当時のモードにも影響を与えている。後にはムソルグスキーの未完の作品をはじめとする複数のオペラ化の試みのほか映画などの題材にもなった。この内、実現したものにはエルネスト・レイエルフランス語版(1823 – 1909)のオペラ『サランボー英語版』(1890年初演)がある[1]。他に、フローラン・シュミットの合唱付き組曲もある。


  1. ^ 『オックスフォードオペラ大事典』P266
  2. ^ 元版は「フロオベル全集6」改造社、1936年。改造文庫(上下)、1938年
  3. ^ 初訳版は白水社(1950年、序文辰野隆)。「全集」初版は1966年(再版1976年)、長年品切で希少本となり古書値は高かった。
  4. ^ 元版:博文館「近代西洋文芸叢書」、1913年/春陽堂「世界名作翻訳全集」、1932年。後者を復刻


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