カルダシェフ・スケール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 05:19 UTC 版)
- タイプI文明は、惑星文明とも呼ばれ、その惑星で利用可能なすべてのエネルギーを使用および制御できる。
- タイプII文明は、恒星文明とも呼ばれ、恒星系の規模でエネルギーを使用および制御できる。
- タイプIII文明は、銀河文明とも呼ばれ、銀河全体の規模でエネルギーを制御できる。
概要
このスケールは、次に示す3つの段階にカテゴライズされている[2]。
- I型
- 惑星の全てのエネルギーを利用できる文明。エネルギー消費は 4×1019 erg/秒(およそ4×1012 W)。タイプIの文明は通常、母星の恒星から降り注ぐすべてのエネルギーを利用できるものとして定義されている(地球–太陽系の場合、この値は1.74×1017 Wに近い)[3] 。地球上で現在達成されている量よりも約4桁高く、エネルギー消費は ≈ 2×1013 W。天文学者のGuillermo A. Lemarchand は、これは現代の地球文明に近いレベルであり、1016から1017 Wの地球上の太陽の日射に相当するエネルギー能力を持っていると述べた[4]。
- II型
- 母星の恒星の全てのエネルギーを利用することができる文明。例えば、ダイソン球を構築できる科学技術を有するレベル。エネルギー消費は 4×1033 erg/秒(およそ4×1026 W)。
- III型
- 属する銀河の全てのエネルギーをコントロールできる文明。エネルギー消費は 4×1044 erg/秒(およそ4×1037 W)。
人類文明の現状
現時点では人類はまだタイプⅠ文明の地位にも達していない。物理学者および未来学者のミチオ・カクは、人類は100–200年でタイプⅠ、数千年でタイプⅡ、10万–100万年でタイプIIIの文明になる可能性があると示唆した[5]。
カール・セーガンは、タイプI(1016 W)、タイプII(1026 W)、およびタイプIII(1036 W) に対して上記の値を補間および外挿する式で中間値(カルダシェフの元のスケールでは考慮されない)を定義することを提案した。
星を囲むダイソン・スウォームの図 タイプII文明は、タイプI文明で採用されているのと同じ手法を使用する場合があるが、多数の星系の多数の惑星に適用される。
- ダイソン球やダイソン・スォームと同様の巨大構築物を建造し、母星の恒星を太陽光発電衛星で囲むことで、ほとんどまたはそのエネルギー出力のすべてを利用する[14]。
- 使用可能なエネルギーを生成するよりもエキゾチックな手段は、任意の質量をブラックホールに送り込み、降着円盤によって放出されたエネルギーを集めることである[15][16]。エキゾチックではない手段では、すでに降着円盤から脱出したエネルギーを捕らえ、ブラックホールの角運動量を減らすことである。この手法はペンローズプロセスとして知られている。
- スターリフティングは寿命が尽き掛けた恒星を操作することで恒星の問題のかなりの部分を取り除くことができるプロセスである。
- 反物質は、多くのメガスケールエンジニアリングプロセス(前述のスターリフティングなど)の産業副産物として生産される可能性が高いため、リサイクルできる。
- 複数の星系、個々の星の出力は小さいが、十分な数のエネルギーを収穫できる。
タイプIII文明
- タイプIIIの文明はタイプIIの文明で採用されているのと同じ手法を使用するかもしれないが、1つ以上の銀河のすべての可能な星に個別に適用される。
- ほとんどの銀河の中心に存在すると目されている超大質量ブラックホールから放出されたエネルギーを利用することができるかもしれない。
- ホワイトホールがもし存在すれば、理論的には外に放出される物質を集めることで大量のエネルギーを供給することができる。
- ガンマ線バーストは、理論的には高度な文明が利用可能な電源の一つ。
- クエーサーからの放出は小さな活動銀河の放出と容易に比較することができ、収集可能であれば大規模な電源を提供する可能性がある。
- ^ a b 「文明のレベルを分類する「カルダシェフ・スケール」」『Newton』第37巻第10号、ニュートンプレス、2017年7月、35頁。
- ^ a b Kardashev, Nikolai (1964). “Transmission of Information by Extraterrestrial Civilizations”. Soviet Astronomy 8: 217. Bibcode: 1964SvA.....8..217K.
- ^ Kardashev, Nikolai (1964). “Transmission of Information by Extraterrestrial Civilizations”. Soviet Astronomy 8: 217–221. Bibcode: 1964SvA.....8..217K.
- ^ Lemarchand, Guillermo A. Detectability of Extraterrestrial Technological Activities. Coseti .
- ^ Kaku, Michio (2010年). “The Physics of Interstellar Travel: To one day, reach the stars.”. 2010年8月29日閲覧。
- ^ a b Sagan, Carl (October 2000) [1973]. Jerome Agel. ed. Cosmic Connection: An Extraterrestrial Perspective. Freeman J. Dyson, David Morrison. Cambridge Press. ISBN 978-0-521-78303-3 2008年1月1日閲覧. "I would suggest Type 1.0 as a civilization using 1016 watts for interstellar communication; Type 1.1, 1017 watts; Type 1.2, 1018 watts, and so on. Present civilization would be classed as something like Type 0.7."
- ^ “BP Statistical Review of World Energy 2019”. bp.com. BP plc. 2019年12月22日閲覧。
- ^ Souers, P. C. (1986). Hydrogen properties for fusion energy. University of California Press. p. 4. ISBN 978-0-520-05500-1
- ^ Borowski, Steve K. (29 July 1987). "Comparison of Fusion/Anti-matter Propulsion Systems for Interplanetary Travel" (PDF). Technical Memorandum 107030. San Diego, California, USA: National Aeronautics and Space Administration. pp. 1–3. 2008年5月28日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2008年1月28日閲覧。
- ^ By the mass–energy equivalence formula E = mc². See antimatter as a fuel source for the energy comparisons.
- ^ Than, Ker (2011年8月10日). “Antimatter Found Orbiting Earth—A First”. National Geographic News
- ^ Adriani; Barbarino; Bazilevskaya; Bellotti; Boezio; Bogomolov; Bongi; Bonvicini et al. (2011). “The discovery of geomagnetically trapped cosmic ray antiprotons”. The Astrophysical Journal 736 (29): L1. arXiv:1107.4882. Bibcode: 2011ApJ...736L...1H. doi:10.1088/2041-8205/736/1/L1.
- ^ Palmer, Jason (2011年1月11日). “Antimatter caught streaming from thunderstorms on Earth”. BBC News 2015年12月29日閲覧。
- ^ Dyson, Freeman J. (1966年). “The Search for Extraterrestrial Technology”. Perspectives in Modern Physics (New York: John Wiley & Sons)
- ^ Newman, Phil (2001年10月22日). “New Energy Source "Wrings" Power from Black Hole Spin”. NASA. 2008年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年2月19日閲覧。
- ^ Schutz, Bernard F. (1985). A First Course in General Relativity. New York: Cambridge University Press. pp. 304, 305. ISBN 978-0-521-27703-7
- ^ Galántai, Zoltán (2003年9月7日). “Long Futures and Type Ⅳ Civilizations”. 2014年11月3日閲覧。
- ^ Kaku, Michio (2005). Parallel Worlds: The Science of Alternative Universes and Our Future in the Cosmos. New York: Doubleday. p. 317. ISBN 978-0-7139-9728-6
- ^ The Kardashev Scale Type 0: Why Earth is a Level Zero Civilization - Futurism
- ^ The Kardashev Scale – Can We Advance Beyond a Type 3 Civilization? - Futurism
- ^ The KARDASHEV Scale (types 0 to VI) – Veronica Sicoe
- ^ What Do Alien Civilizations Look Like? The Kardashev Scale - YouTube - YouTube
- ^ a b Zubrin, Robert (1999). Entering Space: Creating a Spacefaring Civilization. ISBN 978-1585420360
- ^ Barrow, John (1998). Impossibility: Limits of Science and the Science of Limits. Oxford: Oxford University Press. p. 133. ISBN 978-0198518907
「カルダシェフ・スケール」の続きの解説一覧- 1 カルダシェフ・スケールとは
- 2 カルダシェフ・スケールの概要
- 3 スケールの拡張
- 4 関連項目
- カルダシェフ・スケールのページへのリンク