アリス (不思議の国のアリス)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/06 00:14 UTC 版)
衣装
アリスの服装についても本文中ではほとんど言及されていないが、キャロルは挿絵を担当したテニエルに対して、アリスの服装に関してさまざまに注文をつけていたと見られる[21]。テニエルの挿絵では、アリスが着ているのはボディスと裾の広がったスカートとエプロンからなるピナフォア(エプロンドレス)である[22]。袖は短いパフスリーブであり、裾には身長が伸びたときに下ろすためのタックがある。このようなドレスの生地には当時、洗濯可能なポプリン、良質なアルパカ、ピケなどが使われていた[22]。エプロンは実用的なホランド製ないしキャンブリック製と推測される[23]。靴も紐付きのフラットシューズで、自由に走ったりできるものである[23]。続編『鏡の国のアリス』でも服装はおおむね共通するが、エプロンの裾にフリルがつき、その後ろに大きなリボン結びが付けられ、無地であったストッキングには縞模様が入っている[23]。また、頭にカチューシャが追加されており、これはのちに「アリスバンド」の名で知られるようになった[17]。
このようなアリスの服装はよそ行きの盛装のようなものではなく、当時のジェントリ(イギリスの新興中産階級)の少女のありふれた保守的で実用的な普段着であり、テニエルの描いたものは没個性的でさえある[24][16]。キャロルはもともと手書き本『地下の国のアリス』の挿絵では、アリスに飾り気のない中世風のゆったりとしたドレスを着せていた。これはやはりラファエル前派が好んで描いていた服装であり、キャロルの好みを反映していたが、当時のイギリスの一般家庭に受け入れられていたものではなかった[25]。そのため、『不思議の国のアリス』として正式に出版する際、主要読者として想定していたジェントリの好みに合わせたものと考えられる[26]。加えてアリスのこの服装は、しばしば前近代の衣装を着て現われる他のキャラクターと対置されることによって、アリスが異次元に迷い込んだのだという印象を強調する効果を上げている[27]。このため、後述のオペレッタ版のアリスをはじめとする後世の翻案や挿絵では、異世界の住人たちがしばしばテニエルのデザインを踏襲した衣装を着ているのに対して、アリスだけはその時々の中産階級の少女の服装に合わせたデザインにされる傾向がある[28]。
その一方でテニエルの描いたピナフォア姿のアリスも、ディズニーのアニメーション映画『ふしぎの国のアリス』(1951年)をはじめとして現代までしばしばそのイメージを踏襲されて描かれている[29]。アリスのピナフォアの色は、テニエル自身が彩色を担当した幼児向けの『子供部屋のアリス』(1889年)では黄色く塗られているが、ディズニーのアニメ映画版では青色(サックスブルー)が採用されており、以降のアリスのイメージに影響を与えた[30]。ディズニーのアリスは黒色のリボンが付いた黒色のカチューシャを付けている。タイツは無地の白である[31]。これらのアリスの衣装は、現代ではロリータ・ファッションのモチーフとして定形化されており、ほぼ上述のデザインを再現した商品も複数のブランドから頻繁に発表されている。
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- ^ “アリス|ふしぎの国のアリス|ディズニーキャラクター”. Disney.jp. 2013年1月27日閲覧。
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- ^ 長澤 (1996), p. 28.
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