がくっぽいど
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ラテン文字表記は"GACKPOID"。「がくっぽいど」という商品名はGACKTの発案による[2]。
なお、本稿では同ソフトのイメージキャラクター「神威がくぽ」についても記述する。
製品
ヤマハの開発した歌声合成技術VOCALOIDに対応したボーカル音源で、対応エンジンのバージョン、声質の違いにより、2012年7月までに計4種類の音源が発売されている。
「がくっぽいど」の最初の製品は、2008年7月31日に「VOCALOID2」エンジン対応音源として発売された。VOCALOID2を使用した製品では初めての男性の声を元にした音源[注 1]である。同種のソフトウェアの中では比較的扱いやすいとされる[3]。パッケージには初心者に配慮した詳細なマニュアルや、GACKTの曲である「君に逢いたくて」、「RETURNER 〜闇の終焉〜」を使用したサンプル曲データなども同梱されている。推奨テンポは60~150BPM、推奨音域はA1~C4[4]。
2012年7月13日には、「VOCALOID3 がくっぽいど」シリーズとして、「がくっぽいど NATIVE」、「がくっぽいど POWER」、「がくっぽいど WHISPER」の3種類の「VOCALOID3」エンジン対応音源が発売された[5]。VOCALOID3対応では初めての日本語男声の製品である。それぞれ個別のパッケージに加え、3種類すべてを同梱した「がくっぽいど COMPLETE 」も発売され、それぞれに「VOCALOID3 Editor」を同梱したスターターパック版も発売されている[5]。「がくっぽいど NATIVE」はVOCALOID2版の声を再現したライブラリ、「がくっぽいど POWER」と「がくっぽいど WHISPER」は新たに録音した声を元に制作されたもので、それぞれ「パワフルな声」と「ささやくようなやさしい声」をベースにしているという[5]。推奨テンポは60~150BPM、推奨音域はNATIVE、POWERがA1~C4、WHISPERがA1~G3。
2014年4月30日には、上記の3種類のライブラリをVOCALOID4に対応させた、「VOCALOID4 がくっぽいど」シリーズが発売した。VOCALOID4対応製品としては初めての男声の製品である。それぞれ個別のパッケージに加え、3種類すべてを同梱した「がくっぽいど COMPLETE」も発売され、それぞれに「VOCALOID4 Editor」を同梱したスターターパック版も発売されている。
発売元のインターネット社は「がくっぽいど」の開発の経緯について、同じVOCALOIDを採用したクリプトン・フューチャー・メディア製のソフト「初音ミク」のヒットがきっかけとしている[6]。しかしソフトウェア製品としては異なる方向性を目指しており、「初音ミク」をはじめとする「キャラクター・ボーカル・シリーズ」が声優の演じる架空のキャラクターに歌わせるソフトという形をとっているのに対し「がくっぽいど」は「アーティストボーカル」と銘打ち、実在のアーティストの声をリアルに再現することを目指したソフトであり[6]、実際に製品の声質も人間の肉声に近い声との評価もされている[7]。もっとも、動画投稿サイトニコニコ動画を舞台に一大ムーブメントを築いた「初音ミク」のように、「がくっぽいど」に歌わせた楽曲をニコニコ動画へ投稿するといった利用も期待されており[6]、「がくっぽいど」にもキャラクターは設定されている。
神威がくぽ
「神威(かむい)がくぽ」は「がくっぽいど」のパッケージに描かれているイメージキャラクター。名前はGACKTの旧芸名「神威楽斗」から[8]、キャラクターデザインは「ベルセルク」などの作品で知られる漫画家三浦建太郎による。「電脳和装」が衣装のコンセプトで、襟元や袖は着物風だが、各パーツは軍服を意識しているという[9]。腰には刀を帯びているが、これは楽刀(がくとう)という楽器の武器であるとされる。「神威がくぽ」に楽器を持たせたるため、「神威がくぽ」が持つ刀を楽刀「美振」(みぶり)と設定したもので、その刀にある紋様は音を発し、持ち主が美しく相手に振り下ろすことにより、相手の体にあるビート感を刺激し、相手を感化したり、仲間と共に音楽を楽しんだりする楽器だと設定されている。この設定には、「神威がくぽ」に武器を持たせることの抵抗感を無くす狙いもある。名前の由来は、ヤマハの電子楽器「Miburi」から[10]。
「がくっぽいど」のイメージキャラクターは、当初は別のものが用意されていたが、GACKTの納得が得られず、GACKTが「ベルセルク」を好きだった事、三浦建太郎がニコニコ動画のヘビーユーザーであったことから、急遽三浦に依頼されることになった[8]。三浦はイメージキャラクターの依頼を無償で引き受けている。これは、ニコニコ動画はユーザーが無償で自分の作品を発表している場だから、自分もこの世界には無償で作品を提供したいと三浦本人が申し出たため[11]。なお、イラストに対してのGACKTからの要望は「あまり僕のイメージを意識しすぎず、三浦さんの世界観で描いて欲しい。ただ、目だけは僕にして欲しい」ということだけだったという[8]。
キャラクターの利用について
インターネット社では、クリプトン・フューチャー・メディアと同様[注 2]、「がくっぽいど」についてキャラクター利用に関するガイドライン[12]を設けており、このガイドラインに反しなければ、キャラクターを用いた二次創作作品の、非商用での公開、配布が許諾されている[注 3]。クリプトン・フューチャー・メディアの運営する投稿サイト「ピアプロ」への投稿も可能[16]。
なお、商品名やキャラクターを用いず、楽器として利用する場合は、公序良俗に反する歌詞を含むなどの一部の例外を除き、商用・非商用問わず使用は制限されていない。
その他エピソード
- GACKTの起用は、GACKTの着歌や着ボイスを配信しており、インターネット社とも取引のあるドワンゴが間に入る形で実現した[8]。GACKTは「がくっぽいど」の話を打診された時のことについて、「以前から他のVOCALOIDは気になっていたから、自分がそのモデルになることはとても面白いと思ったよ」と語っている[9]。
- 「がくっぽいど」のプロジェクトは、ドワンゴの系列会社であるニワンゴが運営する、ニコニコ動画とのかかわりが強く、発売の正式な発表に先立つ2008年4月1日に、ニコニコ動画のニュースページ「ニコニコニュース」にて、スクープとして発表されている。これはあえてエイプリルフールに発表することで、ネタだろうと思われることを狙ったもので[17]、正式にリリースを出した際のインパクトを期待したとしている[2]。問い合わせに関しても、インターネット社側は、ノーコメントという立場を取っていた。また、ニコニコ動画では2008年5月7日から午前0時の時報(ニコニコ割り込みを参照)に「がくっぽいど」の歌唱が使用された[6]ほか、三浦へイメージキャラクターを依頼する際の呼びかけが、時報を使って行われている[11]。
反響
2008年7月31日の発売直後より、ニコニコ動画に「がくっぽいど」で作成された楽曲を使用した動画が数多く投稿されており、発売から5日後の8月4日の時点で、既にその数は200程度に上った[7]。2008年11月のITmediaのインタビューで、ニコニコ動画の人気コンテンツの商品化について、ドワンゴの担当者は「今、特に注目しているのは「がくっぽいど」を使った楽曲」と発言している[18]。また初音ミクのブーム以降、VOCALOIDファンの間では、「初音ミク」のネギ(初音ミク#初音ミクとネギを参照)のような、各VOCALOID毎の定番アイテムを模索するということが行われているが、「がくっぽいど」(神威がくぽ)では「ナス」がファンの間でアイテムとして広められている[19]。
注釈
- ^ がくっぽいど以前に発売された男性の声を収録した同種のソフトとしてはLEON、KAITOが存在しているがいずれも先代の合成エンジンVOCALOIDを使用。鏡音リン・レンの男声ボーカルである鏡音レンはVOCALOID2を使用しているが、女性の演じる少年ボーカルである。
- ^ キャラクター・ボーカル・シリーズ#キャラクターの利用を参照。
- ^ がくっぽいどの発売が発表された際には商用利用も含めてフリーとする方針としていたが「認識できないところで、問題が氾濫してしまうことを事前に避けておきたい」などの理由から撤回されている[13]。また、2011年1月のガイドライン改定までは衣装、立体物については非営利の場合にも公開、配布が規制されていた[14]。ただし改定前でもインターネット社側はDTMマガジン2008年11月号のインタビューで、「個人で非商用に限ってはオークションなどへの出品を除き、趣味の範囲内での制作は全て許諾させていただいております。」と説明していた[15]。
出典
- ^ 津田啓夢 (2009年4月9日). “EZweb向けVocaloidサービス「ケータイがくっぽいど」登場”. ケータイWatch (インプレス) 2009年4月9日閲覧。
- ^ a b 高橋暁子 (2008年5月20日). “インターネット村上社長に聞く Gackt声のボーカロイドは、いかにして誕生したか”. ASCII 2008年11月23日閲覧。
- ^ 「VOCALOID MANIACS」『DTM magazine』15(11)(通号 175)2008.10、寺島情報企画、 60-61頁。
- ^ “VOCALOID 2「がくっぽいど」最新情報”. DTMマガジン. (2008年6月20日). オリジナルの2008年6月27日時点におけるアーカイブ。 2008年11月24日閲覧。
- ^ a b c “GACKTの声の"表情"を再現、「VOCALOID3 がくっぽいど」発売”. マイナビニュース (マイナビ). (2012年7月13日) 2012年7月14日閲覧。
- ^ a b c d “Gacktの声で歌うソフト VOCALOID「がくっぽいど」6月発売”. ITmedia. (2008年5月7日) 2008年11月23日閲覧。
- ^ a b “がくっぽいど、発売3日でニコニコに200曲 PVや「歌ってみた」も”. ITmedia. (2008年8月4日) 2008年11月23日閲覧。
- ^ a b c d 永井美智子 (2008年6月27日). “プロがなぜ、二次創作を願うのか--Gacktが歌い、三浦建太郎が描く「がくっぽいど」”. CNET 2009年5月4日閲覧。
- ^ a b 「”がくっぽいど”Gacktインタビュー」 『初音ミク・鏡音リン・レン☆VOCALOIDをたのしもう!』ヤマハミュージックメディア、2008年、6-7頁頁。ISBN 978-4636837629。
- ^ “エピソードII:キャラクターデザイン”. インターネット (2008年7月). 2009年6月29日閲覧。
- ^ a b “「がくっぽいど」7月末発売 “ニコ厨”漫画家・三浦建太郎さんのイラストで”. ITmedia. (2008年6月20日) 2008年11月24日閲覧。
- ^ “VOCALOIDシリーズ キャラクター使用に関するガイドライン”. 製品案内. インターネット. 2015年9月22日閲覧。
- ^ 小林 久 (2008年6月20日). “がくっぽいどのイラスト、ベルセルクの作者が描く”. ASCII 2008年11月24日閲覧。
- ^ “VOCALOID2シリーズ「がくっぽいど」「メグッポイド」「Lily」のキャラクターガイドラインを一部変更”. INTERNET Watch. (2011年1月20日) 2011年1月20日閲覧。
- ^ 「VOCALOID MANIACS」『DTM magazine』15(12)(通号 176)2008.11、寺島情報企画、 51頁。
- ^ “ピアプロでがくっぽいどを使った楽曲/イラストの投稿が可能に”. DTM magazine (寺島情報企画). (2008年8月13日). オリジナルの2008年9月5日時点におけるアーカイブ。 2008年11月24日閲覧。
- ^ “初音ミクのガクト版?「がくっぽいど」本当に発売へ”. MSN産経ニュース. (2008年5月7日). オリジナルの2008年5月10日時点におけるアーカイブ。 2022年8月25日閲覧。
- ^ “「もらえるべき対価、損している作家も」――「ニコ動」発の商品化、広がりと課題”. ITmedia. (2008年11月14日) 2008年11月2日閲覧。
- ^ 小賀太陽 (2008年8月8日). “「がくっぽいど」は「茄子」で決まり!?”. kizasi,jp (きざしカンパニー) 2015年9月22日閲覧。
- ^ “ドワンゴ、ボーカル音源作成ソフト「がくっぽいど」を用いた「がくっぽいどコンテスト」を開催!”. MusicMaster, (2009年6月16日). 2012年3月16日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2009年12月26日閲覧。
- ^ “Gacktの挑戦状「がくっぽいどコンテスト」”. ITmedia News (ITmedia). (2009年6月12日) 2009年12月26日閲覧。
- ^ a b c “ニコ動の<がくっぽいどコンテスト>が急展開。GACKT自らレコーディングを約束”. BARKS (ITmedia). (2009年12月25日) 2009年12月26日閲覧。
- ^ “【GACKTが歌ってみた】 ボカロ曲をシングルリリースへ”. BARKS (ITmedia). (2011年5月23日) 2011年5月24日閲覧。
- ^ “新楽曲「ダンシング☆サムライ」を追加――「歌謡タイピング劇場」×「がくっぽいど」コラボ企画第2弾”. ITmedia. (2008年11月26日) 2008年11月28日閲覧。
- 1 がくっぽいどとは
- 2 がくっぽいどの概要
- 3 メディアミックス
- 4 脚注
固有名詞の分類
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