Zマシンの構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 08:30 UTC 版)
Zマシン(ZRマシン)の基本構造は、36個のパルス発生モジュールを車輪のスポークのように放射状に配置した直径約33mの円盤状である。車輪のハブにあたる部分にワイヤーアレイを収める直径約3m、高さ約6mの真空チャンバーが置かれる。パルス発生モジュールは、まず上下に2個重ねたものを1組として、後述するマルクスジェネレーター側を外側、磁場絶縁伝送ライン側を内側にして20°間隔で18組並べている。この円盤状の構造は PBFA I 、PBFA II (後述)以来踏襲されてきたものであり、PBFA の場合には各パルス発生モジュールの出力側にイオンビーム加速器が配置されていた。 各パルス発生モジュールは、次の(1)から(3)の装置を直線状に並べた構造になっている。 (1) まず外部電源からのエネルギーを蓄え第1次パルスを発生する、高耐圧、大容量のコンデンサの集合体とスイッチ群で構成するマルクスジェネレーター(英語版)(Marx generator)がある。マシン全体で1ショット当たりにマルクスジェネレーターに蓄積されるエネルギーは約20メガジュールであり、充電には数分を要する。この出力側の第1次パルスの幅は約1マイクロ秒である。 (2) 次にマルクスジェネレーターの第1次パルスの幅を圧縮し、さらに高電圧、大電流のパルスに成形する水を誘電体とした太い同軸ラインが続く。これらは PFL (Pulse Forming Line)、OTL1 (Output Transmission Line 1)、OTL2 (Output Transmission Line 2)および、これらを分離する水スイッチで構成されている。これらは、水誘電体スイッチング(water-dielectric switching)と呼ばれる原理を用いている。OTL2 の出力側で、パルス幅は100ナノ秒以下にまで圧縮される。OTL2 の出力側で、上下2個のパルス発生モジュールの出力は結合される。 (3) 最後に OTL2 の出力パルスを最終ターゲットであるワイヤーアレイを収めた真空チャンバーへ導くと同時にインピーダンス変換を行う磁場絶縁伝送ライン (magnetically insulated transmission line)呼ばれる真空で絶縁された同軸ラインが続く。この同軸ライン中には中心軸に平行に強力な磁場がかけられており、強電界により中心導体(負極側)から電子が飛び出しても、ローレンツ力により中心導体に戻すことで絶縁破壊を防ぐ(これを磁場絶縁と呼ぶ)ように工夫されている。
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