TPA
別名:貿易促進権限、貿易促進権限法、大統領貿易促進権限法、トレード・プロモーション・オーソリティ、トレード・プロモーション・オーソリティ法、Trade Promotion Authority
米国の通称交渉の権限を米国議会から米国大統領へ委譲すること、および、その権限委譲の根拠となる法律のこと。
米国における通称交渉の権限は、通常は議会に与えられている。TPAが適用されると、交渉権限が大統領に与えられ、交渉が大統領に委ねられることになる。議会は交渉内容に対して承認または不承認のいずれかを示すことができるが、案を修正することはできない。交渉の経過を議会に中間報告する必要もなくなる。このため、交渉の迅速化が図られる。
経済産業研究所のレポートは、TPAの最大の利点として、交渉相手国が米国大東力を直接の交渉相手として交渉できる(議会の意向を顧慮しなくてよい)という点を挙げている。つまり、議会が権限を握った状態では間接的な交渉とならざるを得ないが、TPAのもとでは決裁者との直接交渉の形を取ることが可能となる。
2015年春、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉におけるTPAの適用を巡って審議が進められ、5月後半にTPA法案が可決、TPP交渉におけるTPA適用が実現する見通しとなった。
関連サイト:
TPAとTPPの見通し - キヤノングローバル戦略研究所
TPAとTPP:アメリカの通商交渉の制度的政治的背景 - 独立行政法人経済産業研究所 2014年8月18日
貿易促進権限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 22:48 UTC 版)
貿易促進権限(ぼうえきそくしんけんげん、英語: trade promotion authority;TPA)は、アメリカ合衆国における通商交渉における大統領権限であり、1990年代までは、ファスト・トラック権限(fast track authority、早期一括採決方式)と呼ばれていたもの[注釈 1][注釈 2]。アメリカ合衆国議会への事前通告等の条件の元、一定の期間に限り、大統領が外国と締結した通商協定について、ファスト・トラック手続 (fast track procedure)で承認を行うものである。
注釈
- ^ 2001年発足のジョージ・W・ブッシュ政権以後用語の変更があったという指摘がある[1]。
- ^ 'trade promotion authority'の用語を米国の通商関係法で最初に使用したのは「2002年通商法」((‘Trade Act of 2002 HR3009、Pub. L. 107–210 Aug. 6, 2002 116 STAT. 933)でDIVISION B—BIPARTISAN TRADE PROMOTION AUTHORITY TITLE XXI—TRADE PROMOTION AUTHORITY (第B部 超党派通商促進権限第11編 貿易促進権限)と規定したものである。なおこの法律は2002年超党派通商促進権限法(‘Bipartisan Trade Promotion Authority Act of 2002)とも呼ばれるが、これは全体としては2002年通商法」(‘Trade Act of 2002)である旨規定(SECTION 1. SHORT TITLE. This Act may be cited as the ‘‘Trade Act of 2002’’)が、第11編単独では「2002年超党派通商促進権限法」として扱う(SEC. 2101. SHORT TITLE AND FINDINGS. (a) SHORT TITLE.—This title may be cited as the ‘‘Bipartisan Trade Promotion Authority Act of 2002’’.)と規定されているためである。
- ^ なおこの法律は、それまでの延長法,が授権期間を規定した1934年互恵通商協定法第2条(c)(19U.S.C. §1352(c))を改正したのに対して、1958年延長法はその第2条自体に期限を延長すると規定している。
- ^ 特定の輸入品(コールタール及び同関連製品、ゴム履物、蛤缶詰、毛編手袋)の場合には、輸入品と同種の米国産品の米国内での販売価格(ASP)を基準として関税が課される制度。
- ^ 実際、「立法拒否権」制度は1983 年6 月23日の判決で最高裁から違憲判決が下された。
- ^ 以下の記述では時期を問わず貿易促進権限とし、議会の実施法案の議事手続についてはファスト・トラック手続と記述する。
- ^ 1974年通商法の発効日。
- ^ 1979年6月19日提出。7月11日下院可決(395対7)。7月23日上院可決(90対4)、7月26日大統領署名。
- ^ 1985年4月29日提出。5月7日下院可決(422対0)。7月23日上院可決(発声投票(上院で満場一致で議決する方法で個別の投票をせず、異議なしで議決する)、6月11日大統領署名。
- ^ 1988年7月26日提出。8月9日下院可決(366対40)。9月19日上院可決(83対9)、9月28日大統領署名。
- ^ North American Agreement on Environmental Cooperation、略称NAAEC
- ^ North American Agreement on Labor Cooperation、略称NAALC
- ^ 1993年9月14日署名。
- ^ 1993年11月4日提出。11月17日下院可決(234(民主党102、共和党132)対200(民主党156、共和党43、無所属1))。11月20日上院可決(61(民主党27、共和党32)対38(民主党28、共和党10))、12月8日大統領署名。
- ^ アメリカ合衆国議会の任期は、選挙の翌年の1月3日正午まであるので、選挙後も旧議会が活動できる。
- ^ 1994年9月27日提出、11月29日下院可決(289(民主党167、共和党121)対146(民主党89、共和党56、無所属1))。11月20日上院可決(76(民主党41、共和党35)対24(民主党14、共和党10))、12月8日大統領署名。
- ^ 大統領がこの期間の延長を2005年3月1日までに要請した場合は、議会のいずれかの院が否認決議を採択しない限り2年間延長されることとなった。なお、このファスト・トラック手続の否認は、合同決議(上下両院で議決し、大統領拒否権の対象)ではないが、これはファスト・トラック手続は、議会の各院の議事手続の一部とされているため、各院の意思のみで決定できる性格のためである。
- ^ 米国と中米諸国(エルサルバドル、コスタリカ、ドミニカ共和国、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア)との協定。略称DR-CAFTA。
出典
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- ^ [1] June 12, 1934, ch. 474, §1, 48 Stat. 943 ;
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- ^ Pub. L. 85–686, §2, Aug. 20, 1958, 72 Stat. 673
- ^ Trade Expansion Act of 1962 is Pub. L. 87–794, Oct. 11, 1962, 76 Stat. 872
- ^ 審議が難航したため、1962年6月30日に一旦授権が失効している。
- ^ Pub. L. 93–618, title I, §151, Jan. 3, 1975, 88 Stat. 2001
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- ^ 第1102条⒜⑴(A) なお、原文はbefore June 1, 1993 である。(before はそれ自体を含まない)
- ^ Pub. L. 103–49, §1, July 2, 1993, 107 Stat. 239 .
- ^ North American Free Trade Agreement Implementation Act, Pub. L. 103–182, Dec. 8, 1993, 107 Stat. 2057
- ^ 1994年4月28日提出。8月9日下院可決(295(民主党145、共和党150)対126(民主党102、共和党23、無所属1))。6月30日上院可決(76(民主党38、共和党35)対16(民主党13、共和党3))、7月2日大統領署名
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貿易促進権限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/08 07:42 UTC 版)
1934年互恵通商協定法が制定されると、大統領は外国と通商協定を締結し関税の引下げを行うことが可能になった。この仕組みは互恵通商協定法の順次の延長及び1962年通商拡大法まで一時期の中断があったものの継続し、第二次世界大戦前の二国間協定及び第二次世界大戦後のGATTに基づく貿易の自由化の根拠法になった。しかし1962年通商拡大法による引下げ権限が1967年6月30日で期限切れになった後は、1968年においてはASP廃止に対する反対で成立せず、1969年においては、20%の引下げ権限についても議会を通過しなかった。 1934年互恵通商協定法が制定されると、大統領は外国と通商協定を締結し関税の引下げを行うことが可能になった。この仕組みは互恵通商協定法の順次の延長及び1962年通商拡大法まで一時期の中断があったものの継続し、第二次世界大戦前の二国間協定及び第二次世界大戦後のGATTに基づく貿易の自由化の根拠法になった。しかし、ケネディラウンドにおいて合意された関税率以外の分野については、授権の範囲内でないため事後、議会に法改正を要請したが、議会は、ASP 制度の廃止を拒否するとともに、アンチダンピング協定に参加するための立法措置を講じなかった。 1973年に東京ラウンドが開始されると、非関税障壁の削減が関税削減以上に貿易阻害要因として重視されるようになった。このため、ケネディ・ラウンドの二の舞を避け、新たに非関税障壁の削減交渉においても、関税交渉と同様の権限を大統領に与える方法が検討された(関税交渉については、従来どおり一定の範囲での引下げ権限の付与とされた)。政府が1973 年4 月議会に示した案は、大統領が議会に提出した国際協定を提出後上院か下院の一方が90日以内に否決しない限り、協定は承認され、関連する米国の通商法が修正されるという「立法拒否権」に基づく措置であった。この案は下院が支持したが、上院では財政委員会の幹部が違憲の可能性を指摘して政府案を審議の対象にせず、代替案としてファスト・トラック権限、つまり現在の貿易促進権限を起草し、1974年通商法第151条に1975年1月3日から5年間の期限付きで盛り込まれた1974年通商法により導入された貿易促進権限は、通商協定の実施法案についてガット東京ラウンド交渉の合意を実施するための1979年通商協定法の法案審議で初めて適用された。また、1979年通商協定法は、貿易促進権限を、非関税障壁にかかる協定実施について1988年1月2日まで8年間延長した。もっともこの延長により締結された協定はなかった、 1974年通商法は、発効の日から5年間(1980年1月2日)まで、通商交渉を行い一定の制限のもと関税を修正する協定を締結できることとされた。また同じ期間、非関税障壁の調和、軽減又は撤廃を行うための通商協定を締結することができる。ただし非関税障壁に関する協定については、ファスト・トラック手続きで、協定及びこれを実施するための国内法の改正(実際の形は、実施法案で協定の承認と国内法の改正を行う。)が承認されることを条件とする。これはその後の米国の通商協定のための立法の基礎になった。 関税引下げについては、①1975年1月1日現在、従価5%以下の品目は無税まで、②従価5%を越える品目については60%カットまでとされた。もっともこれを東京ラウンドにおいてこれを越える引下げを譲許した品目については個別に1979年通商協定法で承認がされている。なお、通商交渉権限については、1979年通商協定法で非関税障壁についてのみ8年間延長され(1988年1月2日)までとされたが、この延長期間にこの通商権限に基づいて締結された通商協定は、なかった。
※この「貿易促進権限」の解説は、「1974年通商法」の解説の一部です。
「貿易促進権限」を含む「1974年通商法」の記事については、「1974年通商法」の概要を参照ください。
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