東京ラウンドとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 東京ラウンドの意味・解説 

とうきょう‐ラウンド〔トウキヤウ‐〕【東京ラウンド】


東京ラウンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/19 23:42 UTC 版)

東京ラウンド(とうきょうラウンド)は、1973年から1979年にかけて行われた関税および貿易に関する一般協定(以下、GATT)の第7回目の多角的貿易交渉である。

開催の経緯

GATT体制下における第6回目の多角的貿易交渉(以下、ラウンド交渉)、すなわちケネディ・ラウンドでは、その交渉の結果、鉱工業分野において平均35%・農業分野において平均22%の関税引き下げが実現する[1]等、これまでのラウンド交渉では最大の成果をあげた。然し、70年代に突入すると、アメリカ合衆国の経済力が相対的に低下した事により、各国で保護貿易が台頭、ECも地域主義化の傾向が強まるなど、世界的に保護貿易化の機運となり、自由貿易を掲げるGATT体制は動揺した[2][3]

 このような背景の中で、日本やカナダ、オーストリア等は、GATTひいては自由貿易体制を維持強化する為に、可及的速やかに新国際ラウンドを開始することが必要であるとの観点から、1971年4月の非公式総会以降、新国際ラウンド開始のための準備を行なう小グループの設置を支持し、1971年11月に開かれた第27回GATT総会でも、新国際ラウンドを速やかに開催することに関して合意に達しておくことが必要である旨の主張を行なった。この提唱に対し、ECとアメリカはその内部事情により消極的姿勢を見せたが、第27回GATT総会以降、特に1971年12月のスミソニアン協定が成立した後、米国は一転して積極的姿勢に転じ、日本及びECそれぞれとの交渉の結果として、翌72年2月に至り、1973年にGATTの枠内において新国際ラウンドを開始する旨の宣言が日米および米・EC間で出されることとなった。尚、この宣言の内容については、更に同年3月のGATT理事会において先進工業国間で合意がみられた[2]

 更に、1972年11月開催された第28回GATT総会においては、日本等の提唱に基づき新国際ラウンドを本年開始するための締約国による意思の確認及び交渉準備委員会の設置が行なわれ、同時に翌年9月に閣僚レベルの会議を開催することが合意された。この会議は1973年9月12日から14日にかけて行われ、最終日の14日、閣僚レベル会議は「ガット閣僚会議東京宣言」(以下、「東京宣言」)を発表し、次の事柄が声明された[2][4][5]

  • 交渉の正式な開始を宣言する。
  • 交渉の目的は次の通りである。 (1)世界貿易の拡大と一層の自由化及び世界の諸国民の生活水準と福祉の改善を達成すること (2)開発途上国の発展の必要性を考慮し、開発途上国が外貨収益の大幅な増大、輸出の多様化、貿易の成長率の上昇を達成できるように、また、世界貿易の拡大にこれら諸国が参加する可能性の改善並びに、この拡大から生ずる利益の分配にあたり、可能な最大限度において、開発途上国関心産品の市場進出条件の実質的改善及び、適当な場合にはいつでも、一次産品の安定的な、衡平な、かつ、採算のとれる価格を達成するための措置を通じ、先進国と開発途上国との間のより良い均衡を達成できるように開発途上国の国際貿易にとつての追加的利益を確保すること
  • この目的を達する為に、開発途上国の特定の貿易問題を考慮しつつ、全ての参加国の貿易問題を衡平な方法で解決するための協調的な努力がなされなければならない。
  • また、この目的を達する為には、次のことがなされるべきである。 (1)出来る限り一般的に適用される適当な方式の採用により、関税に関する交渉を行なうこと (2)非関税措置を軽減又は廃止し、これが適当でない場合には、これら措置の貿易制限的又は阻害的な効果を軽減又は廃止するとともに、これら措置を一層効果的な国際的規律の下におくこと (3)補助的技法として、選択された分野におけるすべての貿易障害の調和的な軽減又は廃止の可能性の検討を含むこと (4)貿易自由化の一層の促進及びその成果の確保を図る目的で、特に第19条の適用の態様を考慮しつつ、多角的セーフガード・システムの妥当性の検討を含むこと」 (5)農業に関し、交渉の一般目的に則りつつ、この分野の特殊性及び特別な問題を考慮に入れた交渉のアプローチを含むこと (6)熱帯産品を特別なかつ優先的分野として取り扱うこと
  • 交渉は、工業品及び農産物双方とし、関税、非関税障壁及び貿易を阻害するその他の措置を対象とするものとする。
  • 交渉は、最恵国待遇条項を遵守し、交渉に関する「一般協定」の諸条項に従い、相互の利益、相互の約束及び全般的な相互主義の原則に基づいて行なわれなければならない。但し、先進国は発展途上国に対して関税その他の貿易に対する障害の軽減又は廃止に関する約束について相互主義を期待しない。
  • 閣僚は、開発途上国がその輸出収益を増大し、その経済発展を促進するために行なう努力を援助するために実施される特別措置及び、適当な場合には、開発途上国の関心産品又は分野に対して与えられるべき優先的配慮の必要性を認める。閣僚は又、一般特恵制度の維持及び改善の重要性を認める。閣僚は更に、可能且つ適当な交渉分野において開発途上国にとって特別且つより有利な取扱いがなされる様な方法で、開発途上国に対し異った措置(differential measures)を適用することの重要性を認める。
  • 閣僚は、後発開発途上国の特殊な状況及び問題に特別な配慮が与えられなければならないことを認め、これらの諸国が交渉において開発途上国の利益のためにとられるあらゆる一般的又は個々の措置との関係において特別な取り扱いを受けることを確保する必要性を強調する。
  • 「一般協定」に規定される原則・規則及び規律に関する支持を再確認する。
  • 貿易交渉委員会は、この宣言を考慮に入れ、就中、次の権限を持つて設立される。 (1)詳細な貿易交渉計画を作成し、実施し、且つ、進国と開発途上国との間の交渉のための特別手続を含む適当な交渉手続を確立する。 (2)交渉の進展を監督する。
  • 閣僚は、貿易交渉が1975年中に完結することを意図する。

経過(妥結まで)

概要

1973年9月に東京で開催された閣僚会議で採択された東京宣言に基づいて開始されたため、東京ラウンドと呼ばれる。102ヶ国が交渉に参加し、GATTで初めて本格的に非関税措置の軽減に取り組んだ。東京ラウンドでは次のことについて国際協定が策定された。

  • 補助金・相殺関税
  • ダンピング防止税
  • 民間航空機
  • 政府調達
  • 関税評価
  • 輸入許可手続き
  • 貿易の技術的障壁

このように、非関税措置の軽減・撤廃に向けて大きな成果をあげた。

GATT/WTOの多角的貿易交渉

関連項目

脚注

  1. ^ 笹口 裕二(農林水産委員会調査室) (2016). “農産物自由化と農業政策 ― TPP交渉大筋合意を受けて ―”. 立法と調査(参議院事務局企画調整室編集・発行): 84. 
  2. ^ a b c 関税および貿易に関する一般協定(GATT)”. わが外交の近況. 外務省 (1973年). 2021年12月28日閲覧。
  3. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)「東京ラウンド」の項 志田明編 電子辞書にて閲覧(2021年12月28日)
  4. ^ ガット閣僚会議東京宣言(仮訳)”. わが外交の近況. 外務省 (1974年). 2021年12月28日閲覧。
  5. ^ 以下は外務省の仮訳に基づく

東京ラウンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/03 23:54 UTC 版)

2008年北京オリンピックのバレーボール競技・世界最終予選」の記事における「東京ラウンド」の解説

※は、アジア予選対象チーム日本韓国オーストラリアイランタイイタリア アルゼンチン アルジェリア

※この「東京ラウンド」の解説は、「2008年北京オリンピックのバレーボール競技・世界最終予選」の解説の一部です。
「東京ラウンド」を含む「2008年北京オリンピックのバレーボール競技・世界最終予選」の記事については、「2008年北京オリンピックのバレーボール競技・世界最終予選」の概要を参照ください。


東京ラウンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 01:47 UTC 版)

関税及び貿易に関する一般協定」の記事における「東京ラウンド」の解説

「東京ラウンド」も参照 1973年9月GATT閣僚会議東京が行われ、このとき採択された「東京宣言」に従い7回目多角的貿易交渉決定され1973年9月から1979年11月までジュネーヴで東京ラウンドが開催された。交渉参加国増加したことから合意早めるためにアメリカEC日本カナダ合意した内容GATT締約国コンセンサスにより承認する方式慣行的に取り入れられるようになった。東京ラウンドでは、補助金製品規格などといった貿易の技術的障害輸入許可手続きといった関税以外の貿易障壁について規律する協定締結された。また東京ラウンドでもケネディ・ラウンド同じよう関税引き下げ交渉一括交渉方式がとられたが、EC既存関税率が高い国と低い国に同率関税引き下げ求めるべきではないと主張したため、以下のように交渉開始前関税率国ごと反映した関税引き下げが行われた。 z = a x a + x {\displaystyle z={\frac {ax}{a+x}}} z:引き下げ後の関税率、x:既存税率、a:国別定数(例:EC16アメリカ日本14) ケネディ・ラウンド同様に東京ラウンドでも工業製品関税引き下げについては大きな成果上げたが、農産品貿易の自由化交渉については成果上げることができなかった。

※この「東京ラウンド」の解説は、「関税及び貿易に関する一般協定」の解説の一部です。
「東京ラウンド」を含む「関税及び貿易に関する一般協定」の記事については、「関税及び貿易に関する一般協定」の概要を参照ください。


東京ラウンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 08:20 UTC 版)

第27回全日本大学女子サッカー選手権大会」の記事における「東京ラウンド」の解説

斜体字は兵庫ラウンドでのシードチーム準決勝 決勝 M21 帝京平成大学 0 M23 日本体育大学 4 日本体大学 1 M22 早稲田大学 0 姫路獨協大学 1 早稲田大学 2

※この「東京ラウンド」の解説は、「第27回全日本大学女子サッカー選手権大会」の解説の一部です。
「東京ラウンド」を含む「第27回全日本大学女子サッカー選手権大会」の記事については、「第27回全日本大学女子サッカー選手権大会」の概要を参照ください。


東京ラウンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 08:15 UTC 版)

第29回全日本大学女子サッカー選手権大会」の記事における「東京ラウンド」の解説

斜体字は兵庫ラウンドでのシードチーム試合会場は、味の素フィールド西が丘準決勝 決勝 M21 大東文化大学 1 M23 静岡産業大学 2 静岡産業大学 0 M22 帝京平成大学 1 帝京平成大学 2 日本体大学 0

※この「東京ラウンド」の解説は、「第29回全日本大学女子サッカー選手権大会」の解説の一部です。
「東京ラウンド」を含む「第29回全日本大学女子サッカー選手権大会」の記事については、「第29回全日本大学女子サッカー選手権大会」の概要を参照ください。


東京ラウンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 08:28 UTC 版)

第28回全日本大学女子サッカー選手権大会」の記事における「東京ラウンド」の解説

斜体字は兵庫ラウンドでのシードチーム試合会場は、味の素フィールド西が丘準決勝 決勝 M21 帝京平成大学 0 M23 日本体育大学 2 日本体大学 2 M22 早稲田大学 0 大阪体育大学 1 早稲田大学(a.e.t.) 2

※この「東京ラウンド」の解説は、「第28回全日本大学女子サッカー選手権大会」の解説の一部です。
「東京ラウンド」を含む「第28回全日本大学女子サッカー選手権大会」の記事については、「第28回全日本大学女子サッカー選手権大会」の概要を参照ください。


東京ラウンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 08:30 UTC 版)

第30回全日本大学女子サッカー選手権大会」の記事における「東京ラウンド」の解説

斜体字は兵庫ラウンドでのシードチーム試合会場は、味の素フィールド西が丘準決勝 決勝 M21 静岡産業大学 1(4) M23 山梨学院大学 1(3) 静岡産業大学 0 M22 早稲田大学 1 早稲田大学 1 筑波大学 0

※この「東京ラウンド」の解説は、「第30回全日本大学女子サッカー選手権大会」の解説の一部です。
「東京ラウンド」を含む「第30回全日本大学女子サッカー選手権大会」の記事については、「第30回全日本大学女子サッカー選手権大会」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「東京ラウンド」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「東京ラウンド」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「東京ラウンド」の関連用語

東京ラウンドのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



東京ラウンドのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの東京ラウンド (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの2008年北京オリンピックのバレーボール競技・世界最終予選 (改訂履歴)、関税及び貿易に関する一般協定 (改訂履歴)、第27回全日本大学女子サッカー選手権大会 (改訂履歴)、第29回全日本大学女子サッカー選手権大会 (改訂履歴)、第28回全日本大学女子サッカー選手権大会 (改訂履歴)、第30回全日本大学女子サッカー選手権大会 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS