育成施設による違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 05:53 UTC 版)
このうち、盲導犬育成施設の中でも歴史が長く全国的な規模を持つ二大施設は、公益財団法人日本盲導犬協会(以下「日本盲導犬協会」)、公益財団法人アイメイト協会(以下「アイメイト協会」)である。 両団体では「国産初の盲導犬」についても定義が異なり、アイメイト協会では同協会創立者の塩屋賢一が育成した1957年8月「チャンピイ」であるとしているが、日本盲導犬協会ではそれ以前の1939年に失明兵士の社会復帰のため、ドイツから輸入した訓練済みの4頭のシェパードを「日本最初の盲導犬」であると位置付けている。この見解の相違により、両団体では日本の盲導犬の歴史そのものの定義付けが異なることとなる。 「#日本での歴史」も参照 「盲導犬」の呼称については、日本盲導犬協会を中心とする「認定NPO法人全国盲導犬施設連合会」加盟団体(後述)では「盲導犬」の名称を公式に使用している。しかしアイメイト協会では、創立者の塩屋賢一の「『盲人を導く犬』の言葉は人と犬との共同作業にふさわしくない」という独自の思想により「盲導犬」ではなく「アイメイト」の名称を公式に使用し、「盲導犬ではなくアイメイト」を強調する。 また呼称だけでなく、各施設により「盲導犬」の定義や呼称、犬の訓練法、対象とする視覚障害者、盲導犬の使用法などもそれぞれ異なる。 一例として、アイメイト協会では全盲者のみを対象とし、白杖と盲導犬の併用を禁じる「単独歩行」を採用し、盲導犬のハーネスは利き手にかかわらず左手で片手持ちする。また犬のしつけとして叱ることもあり、リードを引いて合図する「チョーク」を行うこともある。 一方、日本盲導犬協会では白杖との併用も行い、ハーネスは「原則左手持ちの右手併用」としている。また全盲者に加えロービジョン者を積極的に対象とし、「視覚障害者=全盲」という思い込みが生むロービジョンへの偏見を解消したいとしている。犬に対する厳しいしつけは廃し「チョーク」も禁止している。 このように盲導犬育成施設が乱立し、各施設により名称や方針が異なることは一般社会にあまり知られてはいないが、この現状を抜きに日本の盲導犬を語ることはできない。そしてこのことが盲導犬の育成や実際の使用、ひいては社会における盲導犬への理解に混乱をきたす一因ともなっている。
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