筆記具としての特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 06:01 UTC 版)
万年筆はそれ以前のつけペンと比べ、インクを内蔵して携帯性を備えた点で画期的であった。しかしこの特徴はボールペン(1940年代〜)やサインペン(1960年代〜)が登場して以降は特別ではない。現代ではメンテナンス不要で万人に扱いやすいボールペンが一般に普及し、筆記具の多様化も進んでいる。その中で万年筆は、長年使い続けられる個人用の筆記具として、また手紙やフォーマルな場面に適した筆記具として、またステータスシンボルやコレクションの対象として位置づけられている。2016年には国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)で企画展示「万年筆の生活誌」が開催された。 1980年代以降は高級品が中心となったが、2000年代以降の日本では、高品質な低価格品の登場やインク色の多様性などを要因として、若年層にも広まっている。 万年筆は金属製のつけペンと同様に、インクの伝う毛細管である切り割りを備えた金属製のペン先を用いている。そのため、低筆圧で筆記でき、ペン先の設計によりさまざまな筆跡や書き味が得られる。使い続けることでペン先に使用者特有の癖がつくため、貸し借りには向かないが、本人に馴染んだ書き味になっていく。筆跡に余分なインクが残りやすいため、これを吸い取るブロッターが利用されることもある。 インクを補充しながら長年使われるため、定期的な洗浄といったメンテナンスを必要とするが、ペン先の接触部分(ペンポイント)に耐摩耗性の高いイリドスミン合金が使用されるなど長寿命に設計され、好みのインクを入れて使用できる。高級品を中心に、ペン先に耐腐食性や弾力のある金を用いたり、さまざまな工芸装飾を施したり、手作業で製造・調整されたものも少なくなく、既製品のほか特注品も作られる。メーカーや店舗によっては、ペン先の調整や修理といったアフターサービスも提供される。 水性ボールペンやサインペンにおいても同様のことであるが、液体の水性インクを用いるため、ペン先の乾燥に弱く、紙によっては筆跡が滲みやすく、極端な温度・気圧変動や衝撃によってインクが漏れる場合もある。
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