社会的および政治的影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/19 14:37 UTC 版)
「コミック・ストリップ」の記事における「社会的および政治的影響」の解説
コミック・ストリップは長年にわたって社会を映す鏡であり続け、ほとんどその開始から政治的あるいは社会的な論評に用いられてきた。この範囲は『小さな孤児アニー』の固い保守主義から、『ドゥーンズベリー』の野放図なリベラリズムにまで及ぶ。前述した『ポゴ(英語版)』は、多くの同時代の有名政治家をポゴのオーキフェノーキー湿地(訳注・ジョージア州とフロリダ州の州境にある広大な泥炭地)に住む動物たちとして戯画化することにより、絶大な効果をもたらした。1950年代に『ポゴ』の作者ウォルト・ケリーは、大胆にもジョセフ・マッカーシーを題材にした。マッカーシーはシンプル・J・マラーキーという名の牡猫として戯画化され、バードウォッチング・クラブを乗っ取り、好ましくない人物を残さず追い出そうとする誇大妄想狂として描かれた。 またケリーは、コミック・ストリップという表現媒体をマッカーシー時代の政府規制から可能な限り守り抜いた。性的かつ暴力的かつ反政府的な内容を持つと考えられたアメリカン・コミックが非難されていた当時において、ケリーは同様の非難がコミック・ストリップに対しても持ち上がることを懸念した。米国議会小委員会の前で、ケリーは彼のイラストと人間性によって委員達を説得し、コミック・ストリップは風刺の手段として安全圏に置かれた。 『ドゥーンズベリー』や『ブーンドックス』のような政治的論評を主題とした幾つかのコミック・ストリップは、しばしば漫画欄ではなく社説欄や論説欄に印刷される。保守的な層は長期にわたって『ドゥーンズベリー』に反対し続けており、最近では日曜版の漫画ページを担当している大手印刷会社にこの漫画の印刷を拒否させることに成功した。別の例として、社内政治(英語版)を扱う漫画『ディルバート』は、しばしば新聞のビジネス欄に印刷される。 世界最長のコミック・ストリップは、ロンドン・コメディ・フェスティバルの一部としてトラファルガー広場に展示された88.9メートルの漫画である。フロリダで展示された81メートルの漫画がこれ以前の世界記録であった。ロンドンのコミック・ストリップは15人の著名なイギリス人漫画家によって制作され、ロンドンの歴史を描写している。 漫画家ルーブ・ゴールドバーグ(英語版)の名にちなむリューベン賞(英語版)は、アメリカ合衆国のコミック・ストリップ作家にとって最も栄誉ある賞である。リューベン賞は全米漫画家協会(英語版)(NCS)から、毎年寄贈される。 NCSの援助により、今日のコミック・ストリップ作家達は、市場縮小と新聞紙面でのスペース削減による衰退途上にあると考えられているこの表現媒体の熱心な宣伝活動を行っている。これらの宣伝活動の特にユーモラスな一例が、1997年のエイプリル・フールに行われたザ・グレート・コミック・ストリップ・スイッチャルーニー(英語版)である。この日、大勢の有名コミック・ストリップ作者達が、互いの執筆する漫画を交換した。例えば、『ガーフィールド』のジム・デイヴィスは『ブロンディ』のスタン・ドレイク(英語版)と、『ディルバート』のスコット・アダムスは『ファミリー・サーカス(英語版)』のビル・キーン(英語版)と漫画を交換した。1996年には合衆国郵便局が、コミック・ストリップ百周年の記念切手「コミックストリップクラシック(英語版)」を発行することで宣伝活動に協力した。 スイッチャルーニーは一回限りの宣伝企画であったが、漫画家が別の作者により創造された作品を描き継いでいくのは、アメリカン・コミック業界と同様に、アメリカの新聞漫画の伝統でもある。事実この習慣のお蔭で、様々なジャンルの人気漫画が数十年に渡って連載を続けられるようになった。これらの作品の例としては、ハロルド・グレイ (漫画)(英語版)によって1924年から1944年まで執筆され、その後はレオナルド・スターやアンドリュー・ペポイ(英語版)らの漫画家によって描き継がれている『小さな孤児アニー』や、ミルトン・カニフ(英語版)によって1934年に開始され、ジョージ・ヴンダー(英語版)に代表される一連の作者に引き継がれた『テリーと海賊(Terry and the Pirates)』がある。 ビジネス上の要請によるスイッチの一形態として、同じ内容の作品が別の題名によって続けられることもある。一例として、1940年代初期のドン・フラワー(英語版)の『モデスト・メイデンズ』は、ウィリアム・ランドルフ・ハーストの関心を惹きつけ、二倍の原稿料によってAP通信からキング・フューチャーズ・シンジケート(英語版)に引き抜かれ、AP通信からの法的措置を回避するために『グラマー・ガールズ』と改題された(一方『モデスト・メイデンズ』は、フラワーの画風をそっくり模倣したジェイ・アレン(英語版)によって描き継がれた)。 現在では伝統的な新聞漫画のほとんどが、インターネット上の公式サイトを持っている。シンジケートはしばしばそれらのウェブサイトで、最近の作品のアーカイブを公開している。『ディルバート』の作者スコット・アダムスが自分の各作品にEメールアドレスを記述した事により、この流行が始まった。
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