白黒赤外フィルム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/01/02 03:00 UTC 版)
赤外線写真用の白黒ネガフィルムは、波長700〜900nmの近赤外領域の光への感度が高く、波長の短い青い光への感度も高い。コダックの高感度赤外白黒ネガフィルムであるハイスピードインフラレッド(HIE)などを用いた撮影では高輝度部でのハレーションが起こりやすいが、それは赤外線のみによるものではなく、HIEがアンチハレーション層をもたないために起こる。通常のフィルムにはアンチハレーション層が設けられており、高輝度部でのフィルム内散乱はその層に吸収されるためハレーションは起こりにくい。 多くの白黒赤外線芸術写真は、青い可視光の露出を抑えるため、レンズの上にオレンジ(ラッテン番号 Wratten number) 15か21)、赤(23か25か29)、可視光遮蔽(72)のレンズフィルターを付けて、青色波長の光をさえぎって撮影されている。白黒赤外線写真を撮るときにフィルターを付けるのは、短い波長を遮って、赤外線だけを通すためである。 赤外線写真用白黒フィルムを使ってフィルターなしで撮影すると、画像のコントラストが青い光で付くため、通常の白黒フィルムで撮った画像とほとんど変わらなくなる。写真家の中には、オレンジや赤のフィルターを使うことでわずかに青い光を通過させて、写真に陰影を付けることもある。えんじ色(29)のフィルターを使うと青い光のほとんどを遮ることができ、不透明のフィルター(70, 89b, 87c, 72)を使うと青い光を完全に遮断して更には赤い光の一部も遮る。それらのフィルターを使うと、赤外線写真としてのコントラストがより鮮明になる。 コダック白黒用ハイスピードインフラレッドフィルム(HIE)のように赤外線に高感度のフィルムは、セーフライトによっても感光するものが多く、カメラへの装填・現像といった作業は全暗黒中で行う必要がある。。赤外白黒フィルムは現像時間は異なるものの一般的な白黒フィルム用現像液(例えばD-76)で現像できる。コダックHIEはポリエステルフィルムベースなので、傷つきにくいけれども割れやすく、撮影時や現像時の取り扱いに注意が必要である。赤外線フィルムは一般に化学的にデリケートであるため、冷凍・冷蔵保存が推奨されている。 赤外線フィルム写真が難しい理由の一つは、赤外線に高感度のフィルムの入手が難しいことである。現在、コダックは売上不振を理由に、HIE赤外線35mmフィルムを販売中止している。コダック以外では、エフケ、ローライ、イルフォードといったメーカーから赤外線写真用白黒フィルムが販売されている。サイズも35mmだけでなく、120mmなどがある。ただし、コダックHIEとは感度を始めとする仕様が異なる。コダックHIEの販売停止により、750nm以上の波長に対する感度が良いフィルムは「エフケIR820」だけとなった。
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