水理現象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 04:53 UTC 版)
琵琶湖の水流は、流出部がいずれも南にあるため、基本的に北から南に向かうが、下記の環流や静振・密度流などにより、北向きの流れも頻繁に発生する。 環流 琵琶湖の環流は1925年の神戸海洋気象台の観測により発見され、1960年代から1995年ごろにかけて精力的な研究が行われた。北湖には北から第1環流(反時計回り)、第2環流(時計回り)、第3環流(反時計回り)の3つの環流があり、常に3つあるとは限らないが、第1環流は水温成層期(春 - 秋)の長期間存在する準定常流である。流速は第1環流では8月から9月ごろに最大30 - 40センチメートル毎秒に達する。環流は南北に移動しており、このことは生態系や漁業にも影響を与えていると考えられる。また、環流は水質の分布にも影響を与えており、沿岸帯と沖帯に区分されることになる。琵琶湖の環流は地衡流としての性格が強く、発生機構については2018年現在、風成論と熱成論の2つの説がある。 静振 湖水面に生じる表面静振には、周期の異なる3 - 7種類がある。水温水層の内部境界面に生じる内部静振は、表面静振に比してきわめて大きな振幅をもち、周期は一例においては63時間である。なお、内部静振が水位に与える影響はほとんどない。 密度流 台風などの強風時には、内部静振による北湖底層から南湖への密度流が生起するが、大半は北湖に還流するため、南北湖間の交換流としての影響は少ない。秋から冬にかけては、南湖の湖面冷却により、南湖の水が北湖の底層部に潜り込む冬期密度流が発生する。冬期密度流は、発生後数日間持続し、北湖から南湖に還流することはない。 全層循環 琵琶湖では例年1 - 2月に、湖水が鉛直方向に混合し、水温と溶存酸素量が表水層から深水層まで一様になる全層循環(全循環)という物理現象が起こる。湖底に棲息する生物に酸素を供給する働きをもち、「琵琶湖の深呼吸」とも呼ばれる。地球温暖化にともなう暖冬により、2006年と2015年の全層循環は3月中旬まで遅れ、2019年と2020年には2年連続で確認されなかった。このような全層循環の弱体化により深水層の酸素が減少し、湖底動物の大量斃死につながることが懸念されていて、実際に湖底にすむ固有種であるビワオオウズムシの個体数が減少した要因に挙げられている。
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