性的加害者のケアについて
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 23:49 UTC 版)
「チャイルド・マレスター」の記事における「性的加害者のケアについて」の解説
児童性的虐待加害者は子供を誘拐し、傷つけ、殺すことさえ辞さないというステレオタイプがあると言われるが、Pamera D. Schultz (2005) によると実際には多くの場合は暴力的な攻撃はないという。Lisakらの無作為抽出調査 (1996) でも、性的虐待加害者で身体的虐待は加えていたのは3分の1に過ぎなかったと出ている。むしろ一見すると子供に選択肢を与えるようにしながら、無言の脅迫や甘美な言葉を用いて行為に参加させる場合のほうが多いと見られる。もちろん、子供にマインドコントロールを施すことになるのであるから、長期的に見てこのような場合は被害者は行為に参加した自責の念に苦しめられることが多いと見られる。 日本では刑期が軽いと非難され、アメリカでも児童性虐待は軽蔑の目で見られている。だがその一方で、アメリカでは社会的偏見が激しすぎるために罪をいくら償っても償った可能性を認めない傾向もあるため、一部の矯正官やカウンセラーらは更生可能なのにその道を閉ざしてしまうとして問題視している。 このような問題の出る背景には次のような要因が考えられている。 児童性虐待者の実際の数は報告される数をはるかに上回る可能性が高く、もしそれらを検挙するとなると現行のシステムでは国家の処理能力を簡単に超えてしまう可能性が高い。 アメリカでは情報公開が進んでおり、加害者は周辺住民に警戒されるが、あまりにもそれが激しすぎるために加害者はたとえ化学的去勢を受けていても居場所がなくなっている。 この問題は文化的・社会的問題が大きいと見られており、ただ単に加害者を殺せばそれで済むというものではない。 児童性虐待のタイプにかかわらず性犯罪として認知されるために、残虐な加害者と比較的温厚な加害者が同様に扱われる。 性犯罪が突発的なものとみなされているために、その人の過去が存在しないようなものとみなされており、その人間の人格が単純に否定されてしまう。 多くの加害者は児童性虐待さえしなければ普通の人間である、という点が見逃されている。 加害者を生涯監視するとなると高額の費用がかかり、現実的ではない。 児童性虐待者は刑務所内でも著しい偏見をもって見られており、暴行などの犠牲になってしまっている。 だが、大衆ヒステリーのような状況は今日のアメリカでも認められており、これらの問題が解決できるのはまだまだ先のことであると見られている。(そもそもこういった問題がうまく議論できるのは被害者の声が反映されてこそである) 加害者にも治療プログラムは施されているが、現在のプログラムではほとんど効果はないとされる。性犯罪者の調査としては、2004年3月のカナダの研究結果で、1980年代の性犯罪者のうち治療プログラムを行った人の累犯率は約21.1%で、参加していない場合は21.8%であった。だが、1994年にアメリカの15の州の調査によると、3年以内における性犯罪以外の再逮捕率は69%なのに対し、性犯罪者の再逮捕率は43%であって、性犯罪率に限った場合ならば約4倍ではあるが、性犯罪者の累犯率自体は他の犯罪と比べ突出して高いわけではない。また、1994年に刑務所より釈放された15の州での児童性虐待者約4300人が再び児童性虐待で逮捕された例は3年以内で約3.3%である。 なお、性的虐待を「少年期にのみ」起こした場合は成長後かなり罪悪感に苦しめられているか、まったく忘れている場合が多いと言われている。
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