寄生虫感染と組織修復
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:02 UTC 版)
「自然リンパ球」の記事における「寄生虫感染と組織修復」の解説
2型免疫、つまりILC2細胞の基本的な特性は、蠕虫の様な消化不能の大型生物への対処である。腸内では、蠕虫の感染に反応して、上皮細胞がIL-25を大量に分泌し、ILC2細胞を活性化する。ILC2はIL-13を産生し、Notchシグナル伝達経路を介して、さらに上皮細胞の分化を促す。この指示により、蠕虫の寄生体やその他の大きな病原体を排出できるように組織が再構築される。 また、IL-13はT細胞を活性化し、寄生虫を追い出す為の更なる生理的反応を誘発する。T細胞は杯細胞の粘液分泌を促し、平滑筋を収縮させ、肥満細胞や好酸球を呼び寄せるシグナルを分泌し、B細胞の増殖を促す。 感染すると、蠕虫の移動に伴い、組織の損傷が拡大する。ILC2は、上皮成長因子受容体に対するAREG(英語版)などのリガンドを産生し、組織修復の為の上皮細胞の分化を促進する事で、感染後の組織損傷を修復する重要な役割を担っている。これにより、上皮のバリア機能を高め、病原体の侵入を遅らせる機能が期待出来る。 複数の組織内微小環境において、ILCは間質細胞のような非造血性細胞との関係が深い。肺では、ILC2は間質細胞に特異的に局在し、間質細胞はIL-33やTSLP(英語版)を放出し、ILC2の維持に寄与している。定常状態でも、蠕虫が腸から侵入し血液を介して肺に移動した後の感染への反応でも、ILC2の機能は維持される。 肺のILC2は、血液中の好酸球を呼び込める様に、血管の近くに位置している。また、病原体が溜まる可能性のある気道内にも位置している。これは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドの放出を通じてILC2を活性化する神経内分泌細胞(英語版)と密接に接触している事を意味する。また、神経回路を介してILCの機能が制御されている事も確認されている。 加えて、ILC1とILC3は病原体の感染に反応して、酸素ラジカルや致死的なダメージを与える酵素を放出し、その結果宿主組織にダメージを与えてしまう。組織の修復反応は、ILC3とILC1が組織から微生物や破片を除去した後、2型免疫反応によって調整される。
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