威信財システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 07:59 UTC 版)
以上のような成果を踏まえて、1977年にジョナサン・フリードマン(英語版)とマイケル・ローランズは首長制社会から初期国家に至るプロセスを次の5つのステージに設定し、実例に基づき社会進化の説明を試みた。 部族システム - 単系の出自集団(リネージ)や、共通の祖先をもつと認識する氏族(クラン)などに基づき、婚姻や交換を行う社会。 アジア的国家 - 親族集団同士に序列化が生じ、より上位の親族集団との婚姻関係により社会における階層的位置づけが規定される社会。 威信財システム - 各地で首長社会が進展し、各地の上位層が交流を持つことで地域間に威信財の贈与・交換が行われ、同盟的な関係を結ぶ社会。 領域国家/都市国家 - 経済的な発展により特定の中心地を核として中央集権的に編成される社会(領域国家)。あるいは経済が独立的に発展する社会(都市国家)。 帝国 - 政治的・軍事的に統合される社会。 このうち、威信財システムはトンガの首長制社会や中国の西周代をモデル化したもので、首長制社会が広域に展開する際に地域間の政治的関係が取り結ばれるあり方を示すモデルとして示された。こうした社会において各地域集団内で威信財を入手できるかは、上位層との婚姻関係にかかっており、上位層から下位層への威信財の贈与と下位層から上位層への貢ぎ物の交換によって政治的同盟関係(上下関係)が維持・再生産される。ここでの威信財は、長距離交易によって上位層にもたらされる器物とされた。また、こうした社会構造は、上位層への威信財の供給が不安定になると崩壊する可能性を内包する、流動的な性質があるとされた。 フリードマンらの社会進化モデルは「後成説モデル」と呼ばれ、高い評価を受けたが、現在では必ずしも単一のプロセスで社会が進化するとは考えられていない。しかし、考古資料から権力資源を分析することで、世界各地の国家形成を具体的に比較検討しえる手法として評価されている。
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