圏論における等化子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/02 13:40 UTC 版)
等化子は普遍性によって定義することもできるので、集合の圏から任意の圏に一般化することができる。この一般の文脈において、X, Y は想定する圏の対象であり、f, g: X → Y はその圏の射である。等化子は単に、これら対象と射からなる特定の図式の極限として定義される。 より明示的に書けば、等化子は適当な対象 E と射 eq: E → X で f ∘ eq = g ∘ eq を満たすものの組 (E, eq) であって、普遍性「任意に対象 O と射 m: O → X の組 (O, m) で f ∘ m = g ∘ m を満たすものが与えられたとき、射 u: O → E で図式 を可換にする(すなわち eq ∘ u = m を満たす)ものが一意的に存在(英語版)する」を満足するものを言う。射 m: O → X は f ∘ m = g ∘ m を満たすとき、f と g を等化する (equalise) という。 差核が用いられる圏を含む任意の普遍代数学的圏において、集合の圏のとき同様に、対象 E は常に通常の集合としての等化子として取ることができ、この場合の射 eq は X の部分集合としての E に関する包含写像として取ることができる。 この圏論的な定義は二つより多くの射に関するものへ直接的に一般化することができる(単に上記の図式と同様の、複数の射を含むより大きな図式を用いればよい)。退化して一つの射しかない場合も同様で、eq は対象 E から X への任意の同型射として取れる。一方、退化して射が一つもない場合に対する正確な図式は少々微妙である。普通に対象 X, Y からなり射を持たない図式を書くと、この図式の極限は等化子ではなく X と Y の積となる(そして実際に、例えば集合論的に定義した積と上述の如く集合論的に定義した等化子とは一致しないので、積と等化子とは相異なる概念である)から、この図式は等化子に対するものとしては正しくない。そうではなく、Y は図式に現れる射の余域に過ぎないのであるから、任意の等化子図式は基本的に X に注目するのが適切なのである。このように見るとき、図式に射がないならば Y も図式に現れず、等化子図式は X のみからなり、そしてこの図式の極限は E と X の間の任意の同型射となる。 任意の圏において任意の等化子が単型射(圏論的単射)であることが示せる。この逆が与えられた圏において成り立つならば、その圏は(単型射の意味において)正則 (regular) であるという。より一般に、任意の圏における正則単型射(英語版)とは、適当な射集合の等化子と一致するような任意の射 m のことを言う。より狭義に、二項の等化子(つまりちょうど二つの射の等化子)に限って正則と呼ぶ文献もあるが、考えている圏が完備(英語版)ならば両者の定義は一致する。 差核の概念も圏論的文脈において意味を成し、任意の二項等化子に対して「差核」と呼ぶ用語法は圏論全体を通じて広く用いられる。前加法圏(つまりアーベル群の圏で豊饒化された圏)の場合には射の差が意味を持つから、「差核」という用語は文字通り差の(圏論的な)核 Eq(f, g) = Ker(f - g) として解釈することができる。 ファイバー積 (引き戻し) と積を持つ任意の圏は等化子を持つ。
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