卵胞とエストロゲン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 06:54 UTC 版)
主記事:卵胞 卵胞または濾胞(ろほう)とは、卵巣の中に多数存在する球状の細胞のかたまりで、その中には1個の卵細胞が含まれ、それを卵巣の細胞が包んでいる構造である。卵胞は、排卵が起こるときの機能的な単位である。卵胞はその発達段階により、異なった名前で呼ばれている。 原始卵胞 卵巣の中に常に無数に蓄えられている休眠状態の卵胞である。1個の卵細胞とそれを囲む1層の細胞層からなる。囲んでいる細胞は、卵胞上皮細胞と呼ばれる。卵巣の表面近くにびっしりと並んでいる。 1次卵胞 休眠から目覚めた原始卵胞は、発達を始めるが、そのはじめの数日間の卵胞。この期間、卵細胞を囲む卵胞上皮細胞が細胞分裂を繰り返し、その数を増すと、卵細胞を囲む層がはじめは1層の細胞だったのが、2層、3層と増えていく。卵細胞自体の大きさは変わらないが、卵胞の大きさは次第に大きくなる。多層化した卵胞上皮細胞の層を顆粒層とも呼ぶ。またこれを囲むように、その外側に卵胞膜(らんほうまく)または莢膜(きょうまく)と呼ばれる構造が現れる。卵胞膜は1〜数層の扁平な細胞層である。 2次卵胞 1次卵胞の後、排卵に至る最終発達段階までの卵胞のこと。卵胞上皮細胞が増殖を繰り返し、顆粒層が厚くなるとき、この中に卵胞腔(らんほうくう)と呼ばれる空洞が現れ始める。卵胞腔には、顆粒層の細胞からヒアルロン酸などに富んだ液体が分泌されて蓄積し、次第に卵細胞を卵胞内の端に押しやるぐらいに広がる。また、卵胞の一番外側にある卵胞膜は、2種類の細胞からなる2層にわかれ、外卵胞膜、内卵胞膜(外莢膜、内莢膜)が区別できるようになる。最終的に排卵直前には1個の卵胞のサイズは18 - 20 mm程度になるが、この排卵直前の卵胞を、成熟卵胞(グラーフ卵胞)と呼ぶ。 原始卵胞が発達を開始するのは月経期の直前で、その後、この卵胞は1次卵胞、2次卵胞になり発達を続け、次の排卵期に成熟卵胞になる。この卵胞の発達は、下垂体の卵胞刺激ホルモン (FSH) によって促される。この間20日程度の非常に早い変化である。このとき、はじめに休眠から醒める卵胞は多数であるが、最終的に排卵に至るサイズにまで発達するのは1個の卵胞のみである。残りの卵胞は、発達の過程のどこかで発達を止め、アポトーシスにより細胞が死滅し、吸収されてしまう。この現象を卵胞閉鎖と呼び、発達を止めて吸収されていく過程の卵胞を閉鎖卵胞と呼ぶ。卵胞閉鎖はFSH刺激の不足が原因であると考えられ、発達の遅い卵胞は閉鎖するが、発達の進んだ卵胞ではFSHレセプターの発現量が高く、低濃度のFSH刺激でも生存、発達する。閉鎖はヒトの卵巣で特に顕著に観察される。 卵胞からは、エストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されるが、これは内卵胞膜の細胞が産生、分泌したアンドロゲンを、顆粒層の細胞が吸収し、この細胞が持っているアロマターゼと呼ばれる転換酵素でエストロゲンに変換して分泌していると考えられている。エストロゲンの分泌量は卵胞の発達とともに増加していくため、月経期の後、排卵期が近づくにつれて、血液中のエストロゲン濃度は上昇し、排卵時にピークに達する。
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