作曲家としての評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/12/31 05:38 UTC 版)
「エットレ・パニッツァ」の記事における「作曲家としての評価」の解説
オペラ作曲家としてのパニッツァの作品は、イタリアのヴェリズモ・オペラの様式を受け継いだ作風が特徴的であり、美しくドラマティックなメロディによってオペラ愛好家からの評価は高い。反面、歌手にとっては力強いドラマティックな声と表現が求められるため、現状としてはなかなかパニッツァの作品を歌いこなせる歌手が少ないという難点がある。 パニッツァが作曲したオペラの中でも、ジャコモ・プッチーニに優れた台本を提供したルイージ・イッリカの台本に基づく3幕のイタリア語オペラ『アウローラ』は傑作として高く評価され、パニッツァが作曲した作品の最高傑作とされている。『アウローラ』は、ウンベルト・ジョルダーノ作曲の『アンドレア・シェニエ』からの影響を強く受けた、ヴェリズモ・オペラの系譜に連なる作品である。1810年のアルゼンチン独立運動を背景に、スペインの圧制者の娘アウローラと独立派側の闘士マリアーノとの悲恋をドラマティックに描いた内容と音楽であり、イタリアよりも作曲家の故郷アルゼンチンにおいて国民的オペラとして知られている。とりわけこの歌劇の中でマリアーノが歌うアリア「旗の歌」Alta pel cielo は、ちょうどイタリアにおけるヴェルディの『ナブッコ』の合唱曲「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」のように、オペラから独立してアルゼンチンにおける第二の国歌として愛唱されている。 『アウローラ』は、オペラとしての芸術的価値が高く評価されている一方で、今日では歌劇場で上演する機会になかなか恵まれないという現状がある。主役の独立派の闘士マリアーノ役を演じるテノール歌手に、アンドレア・シェニエやオテッロを歌うようなドラマティック・テノールとしての強い歌声が要求されるのに対して、現在のオペラ界ではマリアーノを演じられる声を持ったテノール歌手が世界的に稀少になってしまったためである。かつてはマリオ・デル・モナコの後継者と言われたイタリア人ドラマティック・テノールのカルロ・コッスッタが、舞台でマリアーノを当たり役としていた。近年ではアルゼンチン出身のテノール歌手ホセ・クーラがマリアーノを歌うことが多いが、歌手としての全盛期を過ぎたとされるクーラは舞台に立つ機会を減らしている現状にあり、一方でクーラの後を継ぐべきドラマティック・テノールの若手も育っていない。
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