他の人類との遺伝的関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:24 UTC 版)
「デニソワ人」の記事における「他の人類との遺伝的関係」の解説
2010年12月23日、マックス・プランク進化人類学研究所などの国際研究チームにより『ネイチャー』に論文が掲載された。見つかった骨の一部は5 - 7歳の少女の小指の骨であり、細胞核のDNAの解析の結果、デニソワ人はネアンデルタール人と近縁なグループで、80万4千年前に現生人類であるホモ・サピエンスとの共通祖先からネアンデルタール人・デニソワ人の祖先が分岐し、64万年前にネアンデルタール人から分岐した人類であることが推定された。デニソワ洞窟は、ネアンデルタール人化石発見地のうち最も近いイラク北部シャニダール遺跡から、約4000 kmの距離を隔てている。メラネシア人のゲノムの4-6%がデニソワ人固有のものと一致することから、現在のメラネシア人にデニソワ人の遺伝情報の一部が伝えられている可能性が高いことが判明した。この他、中国南部の住人の遺伝子構造の約1%が、デニソワ人由来という研究発表も、スウェーデンのウプサラ大学の研究チームより出されている。ネアンデルタール人と分岐した年数も、35万年ほど前との説も浮上している。ジョージ・ワシントン大学の古人類学者のブライアン・リッチモンドは、デニソワ洞窟で見つかった巨大臼歯からデニソワ人は体格はネアンデルタール人と同じか、それよりも大きいとみている。 ネアンデルタール人やデニソワ人はその後絶滅してしまったが、アフリカ土着のネグロイドを除く現在の現生人類遺伝子のうち数%はネアンデルタール人由来である。中東での現生人類祖先とネアンデルタール人との交雑を示す研究成果は2010年5月に発表されているが、2010年12月にアジア内陸部におけるデニソワ人とも現生人類祖先は交雑したとする研究結果が出たことから、この結果が正しければ、過去には異種の人類祖先同士の交雑・共存は通常のことだった可能性が出てきた。 なお、アジア内陸部でデニソワ人と交雑した現生人類祖先は、その後、長い期間をかけてメラネシアなどに南下していったと考えられる[要出典]。また、中国方面に移住したグループは漢民族となり、高地に移住したグループはチベット人となったともされる。 発見された化石が少ないことから、現生人類との関連などは今後の研究により変更される可能性もある。デニソワ人の体格などの外形、生活様式、人口などはこれからの研究が待たれる点である。ただ、巨大臼歯からはがっしりした顎を持っていたことが推定されている。 2018年8月22日、古遺伝学者のビビアン・スロンは2012年にロシアで発見された10代の少女の化石が母がネアンデルタール人、父がデニソワ人であったと科学誌「ネイチャー」で発表した。 2019年9月、ヘブライ大学やスタンフォード大学で研究をしているデビッド・ゴクマンにより、DNAのメチル化を調べて骨格に関する32の特徴を抽出し、デニソワ人の骨格を提案するという研究結果が発表された。この研究によると、デニソワ人の外見は、狭い額やがっしりした顎などを持ち、ネアンデルタール人によく似た特徴を持っていた可能性がある。一方、頭頂骨の幅が広いなど、ネアンデルタール人とも異なる特徴も、見て取れるという。
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