交渉の難航
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/21 07:03 UTC 版)
「クウェート航空221便ハイジャック事件」の記事における「交渉の難航」の解説
ハイジャック発生から3日目の6日朝、現地に到着したクウェート政府高官と犯人の間で短時間の直接交渉が行なわれたが、不調に終わった。 機長からは「犯人が人質の処刑を決定した」と通告があった。その直後に銃声が聞こえた。犯人がアメリカ人乗客で国際開発局のウイリアム・スタンフォード(当時52歳)を殺害した、とのことだった。 犯人は彼を前部ハッチの梯子の上に立たせ、命乞いを命じた。居合わせたイランの警備員が彼の腕を抱え、犯人に命を奪わないよう懇願した。しばらく言い争いが続いた後、スタンフォードは逃げ出そうとし、怒った犯人が至近距離から拳銃を6発発射した。スタンフォードは転落して死亡した。 続いて9時ごろ、犯人が死刑を宣告したパキスタン人が殺されそうになったが、彼はハッチから飛び降り、銃弾の中を走ってターミナルに逃げ込んだ。 その後、何発かの発砲音が聞かれ、乗客が1人殺されたようだった。機長は管制官に「犯人は興奮している。機内は危機的状況だ。けが人と心臓発作の患者がいる。医師を送って欲しい」と告げた。機長の求めに応じて、犯人は医者と清掃員の搭乗を許可した。 すでに100人ほどの人質が解放されていたが、これらの人々は民間人で、女性と子供が多く、残された60人は男性、特に軍と政府関係者であった。 犯人は要求が通らなければ人質を順次殺すと脅し、イランに友好的なシリアやアルジェリアの努力にも関わらず、4日目の7日になっても事態は進展せず、クウェート政府はイラン当局がわざと解決を遅らせているのではないかとの不信さえあった。 イラン政府は6日、駐クウェート代理大使を通じて「人質解放に全力を挙げている」旨の親書をクウェート政府に届けた。サウジアラビアなどアラブ諸国も尽力していたが、頼みの綱はシリアとアルジェリアだけであった。 7日午前、犯人は犯行声明をクウェート放送を含むテレビ、ラジオを通じて発表すればさらに人質を解放すると伝え、午後9時前、8人の乗客を解放した。8日朝、犯人の要求で朝食が運ばれ、清掃員が清掃のため機内に入ったが、交渉は依然として進展しなかった。 乗っ取りから100時間を超え、犯人のリーダーは威張ってタバコを吸い、他の3人が人質の見張りをしていた。乗客たちは死の恐怖と疲労でぐったりしていた。 8日夜、乗客39人が解放され、残る乗客乗員は13,4人となった。
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