リチウムイオン二次電池の創出と実現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 07:49 UTC 版)
「リチウムイオン二次電池」の記事における「リチウムイオン二次電池の創出と実現」の解説
旭化成工業の吉野彰(2019年ノーベル化学賞)らは、白川英樹(2000年ノーベル化学賞)が1977年に発見した電気を通すプラスチックであるポリアセチレンに注目し、1981年に有機溶媒を用いた二次電池の負極に適していることを見いだした。また、正極にはジョン・グッドイナフらが1980年に発見したコバルト酸リチウム (LiCoO2) などのリチウム遷移金属酸化物を用いて、1983年にリチウムイオン二次電池の原型を創出した。しかし、ポリアセチレンは真比重が低く電池容量が高くならないことと、電極材料として不安定である問題があった。そこで、1985年、吉野彰らは炭素材料を負極とし、リチウムを含有するコバルト酸リチウムを正極とする新しい二次電池であるリチウムイオン二次電池 (LIB)の基本概念を確立した。 吉野彰が次の点に着目したことによりLIBが誕生した。 正極にコバルト酸リチウムを用いると、正極自体がリチウムを含有するため、負極に金属リチウムを用いる必要がないので安全であること 4 V級の高い電位を持ち、そのため高容量が得られること 負極に炭素材料を用いると、炭素材料がリチウムを吸蔵するため、金属リチウムは本質的に電池中に存在しないので安全であること リチウムの吸蔵量が多く高容量が得られること また、特定の結晶構造を持つ炭素材料を見いだし、実用的な炭素負極を実現した。 加えて、アルミ箔を正極集電体に用いる技術、安全性を確保するための機能性セパレータなどの本質的な電池の構成要素に関する技術を確立し、さらに安全素子技術、保護回路・充放電技術、電極構造・電池構造等の技術を開発し、安全でかつ、電圧が金属リチウム二次電池に近い電池の実用化を成功させ、現在のLIBの構成をほぼ完成させた。 1986年、LIBのプロトタイプが試験生産され、米国運輸省 (Department of Transportation) の「金属リチウム電池とは異なる」との認定を受け、プレマーケティングが開始された。
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