モース不等式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 14:12 UTC 版)
モース理論は多様体のホモロジーのいくつかの強い結果を証明することに使うことができる。f : M → R の指数 γ の臨界点の数は、f を「登る」ことから得られるCW複体の中の γ cells の数に等しい。位相空間のホモロジー群のランクの交代和は、ホモロジーが計算することのできるチェイン群のランクの交代和に等しいという事実、従って、胞体チェイン群を使い(胞体ホモロジー(英語版)(cellular homology)を参照)、オイラー標数 χ ( M ) {\displaystyle \chi (M)} が、和 ∑ ( − 1 ) γ C γ = χ ( M ) {\displaystyle \sum (-1)^{\gamma }C^{\gamma }\,=\chi (M)} に等しいことは明らかである。ここに Cγ は指数 γ の臨界点の数である。また、胞体ホモロジーにより、CW複体 M の n-次ホモロジー群のランクは、M の n-cells の数に等しいか、または小さい。従って、γ 次ホモロジー群のランク、つまり、ベッチ数 b γ ( M ) {\displaystyle b_{\gamma }(M)} は M のモース函数の指数 γ の臨界的の数に等しいか、または小さい。これらの事実を厳密にすることができ、モース不等式(Morse inequalities)、 C γ − C γ − 1 + − ⋯ − ( − 1 ) γ C 0 ≥ b γ ( M ) − b γ − 1 ( M ) + − ⋯ − ( − 1 ) γ b 0 ( M ) . {\displaystyle C^{\gamma }-C^{\gamma -1}+-\cdots -(-1)^{\gamma }C^{0}\geq b_{\gamma }(M)-b_{\gamma -1}(M)+-\cdots -(-1)^{\gamma }b_{0}(M).} を得る。 とくに、任意の γ ∈ { 0 , … , n = dim M } {\displaystyle \gamma \in \{0,\dots ,n=\dim M\}} に対し、 C γ ≥ b γ ( M ) {\displaystyle C^{\gamma }\geq b_{\gamma }(M)} を得る。 このことは、多様体のトポロジーを研究するための力強いツールとなる。閉じた多様体上に、ちょうど k 個の臨界点を持つモース函数 f : M → R が存在するとしてみよう。どのようにして、M へ制限した函数 f の存在を示すのであろうか? k = 2 の場合は1952年にレーブ(Reeb)により研究された。レーブの球定理(英語版)(Reeb sphere theorem)は M は球 S n {\displaystyle S^{n}} に同相であることを言っている。k = 3 の場合は、おそらく、低次元の小さな数の多様体のみが可能となり、M はイールス・クーパー多様体(英語版)(Eells–Kuiper manifold)と同相となる。
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