パニックの功罪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/21 06:50 UTC 版)
パニックによって引き起こされる衝動的な行動は、目前の火災や頭上から崩れ落ちてくる岩石群といった危険物からいち早く逃れようとする場合には一定の効果が見られるわけだが[要出典]、特に集団的なパニックが発生した場合や、本来は危険度が低い現象であるにもかかわらず、強いストレスを受けてパニックを起こした結果、被害が拡大するケースも見られる。 火災によるパニック状態では、天ぷら油火災の際に鍋の中で火柱が立っている(まだ周囲への延焼は無い)状態にて、消火器の使用を思い付かず慌てて水を掛けてしまう人は少なくない。この場合は油が燃えながら飛び散るため、被害が拡大する事故が報じられている。また、ビル火災では、「一見押してあけるように見えるが実は引いてあける扉」の前で人が折り重なって死んでいたという事例がある。押してあかなければ普通は引いてみるところであるが、火事でパニックになっているため必死で押してあけようとしているうちに煙に巻かれたのである。 集団的なパニック現象が発生した場合、個々が先を争ってその場から逃れようとするのが一般的だが、そのような一定集団がパニックに陥り易いケースでは、危険状況の発生が広範囲に及んでいる場合が多い。このような場合、無理に移動しようとすると、他のパニック状態にある被災者同士で衝突したり踏まれたりする現象も起き易く、事実そのような事態によって死傷者が発生しているケースは多い。(とはいえ、パニック状態に陥ると「火には水をかける」「押してあけるように見える扉は押す」「とにかく今いる場所から逃れようとする」といった一種反射的な行動にかられがちなのも事実である) また地震等の災害発生時には、屋内で家具や調度品等の倒壊を目の当たりにしてパニックに陥った際に、とにかく頭上に何も無い屋外に飛び出したいという衝動に駆られることが知られているが、今日の都市部では高層ビルの窓ガラスや外壁に用いる建材などが、ビル周辺部に降り注ぐ現象が起き易いとされる。これを考慮に入れず咄嗟に屋外へ飛び出して、それら落下物の犠牲となるケースも報告されており、特に補強の入った屋内にいる場合は、外に飛び出さなかった人のほうが安全な場合が多い。また、日本家屋では瓦の落下や塀の倒壊に伴う事故が報告されている。 今日では、このような緊急事態に於ける適切な行動の情報が多く出回っており、またそのような緊急事態が発生しやすい環境(地域)では、一定の訓練を繰り返す所もある。このような場合では、緊急事態を模擬的に体験することで、そのような事態への耐性を高め、パニックによる事故を未然に防ぐ効果があるとされている。事実、それにより被害を最小限に食い止めた事例は数多い。
※この「パニックの功罪」の解説は、「パニック」の解説の一部です。
「パニックの功罪」を含む「パニック」の記事については、「パニック」の概要を参照ください。
- パニックの功罪のページへのリンク