タタールの軛とは? わかりやすく解説

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タタールの軛


タタールのくびき

(タタールの軛 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/26 17:21 UTC 版)

タタールのくびき(タタールの軛)またはモンゴル=タタールの軛(モンゴル=タタールのくびき、ロシア語: Монголо-татарское игоタタール語: Татар-монгол игосы英語: Tataro-Mongol Yoke)とは、13世紀前半に始まったモンゴルのルーシ侵攻とそれにつづくモンゴル人モンゴル=タタール)によるルーシ(現在のロシアウクライナベラルーシ)支配を、ロシア側から表現した用語である。現在のロシア人などの祖先であるルーシ人の、2世紀半にわたるモンゴル=タタールへの臣従を意味するロシア史上の概念である[1]


注釈

  1. ^ 「キプチャク草原」はペルシア語で、この地で遊牧生活を送るキプチャク族の名に由来する。キプチャク族(漢字表記では「欽察族」)は、東ローマ帝国やハンガリーの記録では「クマン人」の名で登場し、ロシア史では一般にポロヴェツ族と称される。ポロヴェツ族は、個々の部族連合を形成して遊牧生活を送り、ヴォルガ以東の東ポロヴェツは伝統的にホラズムやアラン族との関係が深く、ヴォルガ以西の西ポロヴェツはルーシや東ローマ帝国ブルガリアなどと強いつながりをもってきた。ルーシとホラズムはポロヴェツ(キプチャク族)を介しての間接的な関わりしかなかったが、ルーシとポロヴェツの関係は密接なものであった[2]
  2. ^ モンゴル帝国の首都カラコルムはモンゴル高原オルホン渓谷に立地し、カアンの本拠地としてオゴデイによって築かれた。中国本土にが興り、元の中国支配が終わったのちは北元の首都となった。
  3. ^ サライには、バトゥの建設したサライ・バトゥと、ベルケがその北に遷したサライ・ベルケ(新サライ)がある。ヴォルゴグラード(ソ連時代にはスターリングラード)の前身となった都市である。
  4. ^ プラノ・カルピニの記録による[2]
  5. ^ 13世紀末以降、ウラジーミル大公がハンより徴税権を請け負うこととなると、大公位は名目的・名誉的な意味を超えて実質的な権限と権威を回復するに至った[1]。ロシア諸公は大公位を獲得するため、いっそうハンの機嫌をうかがい、互いに争うようになった[1]
  6. ^ キプチャク・ハン国初期のバトゥ、サルタクウラクチなどは「ツァーリ」と呼ばれていないので、大ハーンとキプチャク・ハン国のハンの関係は、ルーシ諸公からも明瞭に把握されていたことがうかがえる[2]
  7. ^ 中井和夫は、ロシア、ベラルーシウクライナが独自に発展する時期を13世紀頃からとしている[25]。ベラルーシのベラは「」の意味で、モンゴル人が中国文明の「四神」の影響を受けてが赤、西が白というふうに方角で呼称したことにちなんでいる(したがって、ベラルーシとは「西ルーシ」の意味である)[25]。ウクライナは「辺境」を意味するルーシ語(古ウクライナ語)の「クライ」から派生した語で、12世紀頃から使用されるようになった。当時のウクライナはモンゴル人の都サライからも遠い辺境だったからと考えられる[25]。ベラルーシは、14世紀後半にリトアニア大公国の版図に入ったが、この国の公用語は初期のベラルーシ語であった[25]。ロシアがモスクワを中心に発展していくのに対し、ウクライナの民族形成に重要な役割を果たしたのがコサック(カザーク)であった。ベラルーシとウクライナは歴史的にみて、正教のロシアとカトリックのポーランドに挟まれた地域であり、その西部ではともに東方典礼カトリック教会(ギリシア・カトリック)が隠然たる勢力をきずいている[25]。また、言語的にもベラルーシ語、ウクライナ語ともにロシア語から独立した別の言語で、いずれもポーランド語からの影響が強い[25]。なお、3地域における近代文章語の確立は、19世紀以降、それぞれの地域における国民詩人(ロシアではアレクサンドル・プーシキン、ウクライナではタラス・シェフチェンコ、ベラルーシではヤンカ・クパーラ)の登場した頃とみられる[25]
  8. ^ ボリス・ゴドゥノフは、下級貴族の出身でありながらフョードル1世の義兄として権勢を振るい、最終的にはツァーリにまで昇りつめている。
  9. ^ この俚諺に対し、栗生沢猛夫は、ロシアがモンゴルから受けた影響は多いと前置きした上で、しかしそれはロシア人の自己同一性(アイデンティティ)に対しては決定的な影響を与えなかったと主張している[28]
  10. ^ 家系の源流に関する調査結果は、229家族がドイツなどの西ヨーロッパに起源を持ち、223家族がポーランドリトアニアルテニア人(ルーシ人)などに、156家族がタタールほか東洋に起源をもち、168家族がリューリク家に属し、その他42家族が他に起源を持たない「ロシア系の家」、というものであった。
  11. ^ ロシアの駅伝制の利便については、16世紀末に神聖ローマ帝国の大使としてロシアを訪問したヘルベルシュイタインが記録し、高い評価をあたえている。また、ある試算によれば、ヤムを用いた旅行速度は当時のイギリスでのそれに比べて2倍近いものであったという[2]
  12. ^ イングランド出身のベネディクト会修道士で13世紀に生きた歴史家でもあるマシュー・パリス英語版は、その年代記のなかで、「彼らはむかしエホバの神によって山の中にとじこめられた地獄の民で、世界の終わりが近づくころこの世に現れて人々を殺すといわれていたタルタル人である」と記している[36]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i 阿部(1970)p.377
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az 加藤「ロシア古代中世史」
  3. ^ 「モンゴルの歴史 チンギス・カン以前のモンゴル」-タタル(タタール)(モンゴル国政府公認 観光・ビジネス情報センター)
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 和田(2001)pp.33-38
  5. ^ 岩村(1975)pp.301-305
  6. ^ 岩村(1975)pp.317-319
  7. ^ 土肥(2007)pp.40-41
  8. ^ History of Russia from Early Slavs history and Kievan Rus to Romanovs dynasty
  9. ^ Mongol Conquests
  10. ^ a b 栗生沢(2002)pp.77-80
  11. ^ Henry Smith Williams-The Historians' History of the World, p.654.
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m 栗生沢(2002)pp.81-83
  13. ^ a b 杉山(2008)pp.163-164
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  15. ^ a b c d e 栗生沢(2002)pp.86-94
  16. ^ Magocsi.(1996), p.110.
  17. ^ a b 土肥(2007)pp.44-45
  18. ^ a b 栗生沢(2002)pp.83-85
  19. ^ a b c d e f g h i j k l 和田(2001)pp.38-41
  20. ^ a b c d e f 阿部(1970)pp.380-381
  21. ^ Pipes.(1995), pp.61-62
  22. ^ a b c d e f g 阿部(1970)pp.381-382
  23. ^ a b c 阿部(1970)pp.382-383
  24. ^ Boris Rybakov.(1993)
  25. ^ a b c d e f g 中井(2006)pp.52-54
  26. ^ Ostrowski.(1996), p.47.
  27. ^ 岩村(1975)pp.323-324
  28. ^ 井上&栗生沢(1998)pp.425-427
  29. ^ ロバーツ(2003)pp.228-231
  30. ^ O'Neill.(2006),pp.197-198.
  31. ^ a b Vernadsky.(1970),pp.382-385.
  32. ^ Vernadsky.(1970)
  33. ^ Website of the Orthodox Church calendar, accessed July 6th, 2008
  34. ^ 土肥(2007)p.42
  35. ^ Vernadsky.(1970),pp.354-357
  36. ^ 岩村(1974)p.277
  37. ^ a b c d e 杉山(2008)pp.170-175




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