スカルラッティ, ドメニコ
スカルラッティ 鍵盤のためのソナタ 作品概説
作曲年代と史料について
スカルラッティの555曲のソナタの自筆譜は失われており、現在の最も主要な一次史料はヴェネツィアとパルマ所在の相当数の筆写譜である。スペイン女王マリア・バルバラの所有物だったと考えられているヴェネツィア筆写譜全15冊には496曲が収められている。そのうち巻号が付された13冊は1752~57年に、残りの2冊は1742年、1749年に由来する。同じくスペイン伝来とされるパルマ筆写譜は463曲15巻から成り、ヴェネツィア筆写譜の第1~13巻までの全曲に加え、他の一次史料にない作品を含む点で重要視されている(カークパトリックの監修によりファクシミリ版が出版)。パルマ筆写譜集の大部分の筆跡は、ヴェネツィア筆写譜の第1~13巻と同じである。
J.S.バッハ、ヘンデルと同年、イタリアに生まれた。父親はナポリ楽派の創始者として重要視される作曲家、アレッサンドロ・スカルラッティ。少年時代に始まる音楽活動の前半期はオペラや教会音楽が主な作品である。500余曲を数える「ソナタ」は後半生、ポルトガル王女マリア=バルバラ(後にスペイン王妃)の教育目的で作曲された練習曲である。急速な同音連打や大きな跳躍進行など、当時としては極めて斬新な鍵盤音楽の演奏技巧を開発した。スカルラッティの「ソナタ」は主にチェンバロで弾かれることを想定して作られたものであり、現代ピアノで弾く際には、ピアノ音楽への「翻訳」を行なうセンスが必要となろう。なお、ほとんどが単一楽章で短い曲であるため、ピアニストのアンコールピースとして演奏されることも多い。
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