カタボライト抑制
英訳・(英)同義/類義語:catabolite repression
物質代謝に関与する一連の酵素反応で生成された化合物が、上流の酵素反応を抑制してフィードバック的に反応を調節する機構。
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カタボライト抑制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/28 07:54 UTC 版)
「ラクトースオペロン」の記事における「カタボライト抑制」の解説
ラクトースのみがラクトースオペロンのインデューサー(リプレッサーをDNAから引き離し、負の制御を解除するタンパク質)として機能するのではなく、ラクトースの代謝産物であるグルコースもインデューサーとして機能する。ラクトースおよびグルコースが大量に存在する場合、ラクトースを分解する反応は大腸菌にとっては不必要である。そのため、ラクトースリプレッサーとは別の発現調節がなされる。 グルコースの存在下ではカタボライト抑制 catabolite repression と言われる発現調節機能が働く。lacプロモーターlacPの5'上流側はCAP結合部位(またはCRP結合部位)と重なっており、下流側はRNAポリメラーゼ結合部位となっている。CAP(あるいはCRP)とは、カタボライト遺伝子活性化蛋白質のことで、CAPはcAMP(環状AMP)と結合することにより活性化する。lacオペロンの構造遺伝子の転写を促進するためには、CAP-cAMP複合体がCAP結合部位に結合している必要がある。 グルコースの存在下においてEIIA酵素は非リン酸化状態で存在し、これによってアデニル酸シクラーゼ(EC 4.6.1.1)やラクトースパーミアーゼは不活性化する。それゆえ、アデニル酸シクラーゼによりATPから合成されるcAMPは低濃度となり、同時にラクトースは外部から細胞内に取り込まれることはなくなる。通常のグルコースが十分にある条件下では、cAMPの細胞内の濃度は、CAP-cAMP複合体が形成できるほどにはならず、グルコースは優先して消費される。グルコースが減少してくると、リン酸化されたEIIA酵素が蓄積し、アデニル酸シクラーゼが活性化してcAMPが盛んに生産される。それゆえCAP-cAMP複合体が形成されるようになる。 結果として、ラクトースオペロンは、ラクトースが存在し、グルコースが不足した条件下にあるとき、初めて発現することとなる。ラクトースとグルコースが豊富に存在する場合では、カタボライト抑制によりまずグルコースが消費され、その後にラクトースが消費される。こうした培地で育てた大腸菌は、二段階増殖(2度の対数増殖期を迎える)の増殖曲線を描く。
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