かかり癖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 02:00 UTC 版)
厩舎では、岸が「普段は牛のようにおとなしい馬(後略)」と評するほどおとなしく、デビュー前は、運動中に暴れることもなく、食欲もあり、扱いやすい馬であった。しかし調教が進むにつれて、実戦を重ねるにつれて、騎乗者が手綱を引くと馬が歯向かう「かかる」という現象に見舞われたる。デビューしてしばらくは、陣営がダイタクヘリオスを理解することができないままレースに挑み続け、直線で単独先頭に躍り出た直後に走る気を失う「ソラ」現象にも悩まされた。 生まれつき首を高くして走る癖があり、全身をうまく使えないため、直線でもう一伸びすることができなかった。陣営は、調教を工夫したり、シャドーロールを用いてみたりもしたが、矯正できなかった。岸は「追って伸びるタイプではない」加用は「どちらかといえば瞬発力がある方じゃない」と評している。吉川彰彦によれば「首が高く口を割りかげんだ」状態は、「この馬のポーズ」であると表している。 調教や追い切りは、常に村辺調教助手が跨っており、「ほかの誰にもやらせられない独特のもの」(井口民樹)だったという。特に追い切りは、石田敏徳によれば「前半はゆっくり言って、直線はビュンと伸びる、という常識をせせら笑うように、コースに入るといきなりギューンと飛ばし、最後はバタバタになってしまう。歩く、という表現を僕たちはよく使うが、ひどいときには、歩くどころか、ゴールにたどりつくのがやっとに映るほど。オーバーな表現ではなく、息も絶え絶えになって、ゴールに入るのだ。」という状況であった。 初勝利を挙げた3歳、3度目の新馬戦では、スタートからかかり通しだった。それから一時はクラシックを目指していたが、連敗したことから断念。切り替えて、1200メートル、1400メートルに出走すると、かかることなく2連勝していた。その直後のニュージーランドトロフィー4歳ステークスでは、距離を伸ばして1600メートルの距離に挑戦している。サファリキャップが逃げてハイペース、後方待機勢有利な展開となる中、ダイタクヘリオスは2番手を追走していた。ハイペースの2番手は、手綱を引き少しでも体力を温存させておくことがセオリーだったが、岸は「かかる」を警戒してセオリーを無視して、ハイペースに加わった。その結果、最初の3ハロンを34.1秒、5ハロンを57.1秒で通過する「"超"ハイペース」(A・Y)。直線では、傾向通り先行勢が軒並み失速し後方勢が台頭していたが、ただ先行勢で唯一ダイタクヘリオスだけ、傾向に逆らい2着となっていた。このように、ダイタクヘリオスの場合は、ハイペースだから手綱を引いて控えるというセオリーなど無視した方が好走可能であり、無視すると1600メートルも克服できていた。 しかしその後、岸がセオリー通りの騎乗を続けてしまい、勝利することができなかった。ただし、武豊が騎乗したマイラーズカップは、そもそもかかることなく優勝している。また加用正が騎乗した高松宮杯は、梅田が立案した早めに追い出す作戦を実行して優勝していた。加用は「瞬発力がある方じゃないので、マイラーズC〔ママ〕や今回のレースのように先行して押し切る競馬が合っていると思う」と述懐している。岸以外では、2000メートルまでもこなすことができてしまっていた。 この後から、岸もニュージーランドトロフィー4歳ステークスのように、ハイペースを刻んで、早めに先頭に立ち、直線で押し切るという騎乗パターンを繰り返すようになる。高松宮杯の直後、岸が舞い戻って初戦の毎日王冠では、プレクラスニー陣営の矢野照正調教師が「ダイタクヘリオスがハイペースで飛ばしていったのは予想外」江田照男騎手が「オースミロッチが逃げると思っていたら、となり〔ママ〕のダイタクヘリオスがすごい勢いで飛ばしていたのにはビックリしました」と振り返るほど逃げていた。その後も同様の戦法を繰り返し、マイルチャンピオンシップの舞台で結実している。
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