LIGO LIGOの概要

LIGO

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/19 10:06 UTC 版)

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LIGO
レーザー干渉計重力波天文台
LIGOのハンフォード制御室
運用組織 LIGO科学コラボレーション
設置場所 ハンフォード・サイト、リビングストン (ルイジアナ州) , アメリカ合衆国 
座標 北緯46度27分18.52秒 西経119度24分27.56秒 / 北緯46.4551444度 西経119.4076556度 / 46.4551444; -119.4076556 (ハンフォード天文台)(ハンフォード)
北緯30度33分46.42秒 西経90度46分27.27秒 / 北緯30.5628944度 西経90.7742417度 / 30.5628944; -90.7742417 (リビングストン天文台)(リビングストン)
観測波長 43–10000 km
(30–7000 Hz)
建設 1994年 –2002年  (1994年 –2002年 )
観測開始年 2002年8月23日
形式 レーザーマイケルソン干渉計
ウェブサイト www.ligo.caltech.edu
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2016年2月11日、LIGO科学コラボレーションおよびVirgoコラボレーションは、2015年9月14日9時51分 (UTC) に重力波を検出したと発表した。この重力波は地球から13億光年離れた2個のブラックホール(それぞれ太陽質量の36倍、29倍)同士の衝突合体により生じたものである[8][9][10]

LIGOの本質

LIGO施設の本質は、マイケルソン干渉計の原理によって、10-21という極めて微少な相対ひずみを検出できるということにある。この10-21のひずみは、しばしば通俗的に「地球と太陽との距離(天文単位、1.5 ×1011 m)に対して、水素原子の直径(1.1 ×10-10 m)程度のひずみ」と表現される[11][12][13][14]

計画

重力波観測所の周波数関数の検出器ノイズ曲線。初期型と改良型のLIGOに比べ宇宙重力波望遠鏡のような衛星搭載検出器やTPTA英語版のようなパルサータイミングアレイの線は左上に存在する。天体物理学的潜在原因の特徴的なゆがみも現れている。信号の特徴的なゆがみを検出するためにはノイズ曲線より上にあることが求められる[15]

LIGOの計画目標は宇宙由来の重力波の直接観測である。重力波はアルベルト・アインシュタイン一般相対性理論で最初に提唱されたもので、発表された1916年当時は検出のために必要な技術が存在しなかった。重力波の存在は1974年パルサー連星系PSR B1913+16がアインシュタインの提唱した重力放射によるエネルギー損失予測に合致して軌道減衰していることが観測されたことで間接的に確認された。この発見を賞して、ラッセル・ハルスジョゼフ・テイラーにノーベル賞が与えられた[16]

重力波の直接検出のための努力は長年にわたって継続されてきた。1974年の発見は電磁望遠鏡とニュートリノ観測所を補完する天文学の新分野を開いた。1960年代、ジョセフ・ウェーバー共振型質量バー検出装置で直接重力波検出に向けた先駆的な研究を始めた。バー検出装置は世界の6箇所で使用され続けた。1970年代、ロバート・L・フォワードらの研究者は重力波測定へのレーザー干渉法の適用を実現させた。フォワードは1970年代初めにヒューズ航空研究所で干渉型検出器を運用した[17]

実際1960年代やそれ以前にも、光と重力波の波共振について発表された論文が存在した[18]。1971年、高周波重力波の検出にこの共振を利用した方式の研究が発表された。1962年、M・E・ゲルツェンシュタインとV・I・プストヴォイトは超長波長重力波検出のための干渉計利用の原理を説明した最初の論文を発表した[19]。著者は干渉計の利用によって電子機械装置に比べ感度が107から1010倍に向上すると主張した。1965年、ブラジンスキーロシア語版は重力波源とその検出の可能性について広く論じた。彼は1962年の論文で干渉に関する技術と計測の向上による重力波検出の可能性を指摘し言及した。

2002年8月、LIGOは宇宙重力波の探査観測を開始した。連星系の中性子星やブラックホールの衝突や合体、中性子星やブラックホールを形成する程度に重い星の超新星爆発、中性子星の降着、変形クラストと中性子星の回転、ビッグバンに形成された重力波の残滓などから重力波放出を測定することが期待されている。観測所は理論上、宇宙ひも振動や領域壁英語版による重力波といったよりおおくのエキゾチック仮想パノラマを観測できる。1990年代以降、物理学者たちは、天体物理学の関心の的となっていた重力波の検出が可能な域まで技術水準が到達したと考えるようになった[20]

2002年から2010年までのLIGOの運用では重力波を検出することはできなかった。このため施設を数年間停止して、検出感度をはるかに高めたAdvanced LIGO検出器に置き換えられた[21]。2015年2月、ルイジアナ州リビングストン英語版ワシントン州ハンフォード・サイトの2箇所に設置された改良型検出器がエンジニアリングモードとなった[22]。2015年9月18日に検出感度を4倍に高めたAdvanced LIGOによる最初の正式な科学観測を始めた[23]。この検出感度は2021年頃に設計感度に到達するまで更に向上される予定である[24]

観測所

LIGOはルイジアナ州リビングストン英語版のリビングストン観測所(北緯30度33分46.42秒 西経90度46分27.27秒 / 北緯30.5628944度 西経90.7742417度 / 30.5628944; -90.7742417)とワシントン州リッチランド近郊のハンフォード・サイトのハンフォード観測所(北緯46度27分18.52秒 西経119度24分27.56秒 / 北緯46.4551444度 西経119.4076556度 / 46.4551444; -119.4076556)の2箇所の重力波観測施設を一対として運用している。2つの施設は3002 km 離れており、光速度で伝播する重力波の到達時間として約10ミリ秒の差がある。波源からの2つの施設への重力波の到達時間の違いから、三角測量を応用して波源の位置を知ることができる[25]

それぞれの観測所は、一辺が4 kmのL字型の超高真空システムを擁している。それぞれの真空システムに最大5機の干渉計を設置することができる。

リビングストン観測所は基本構成として1機のレーザーマイケルソン干渉計を備えている。この干渉計は2003年に0.1から5Hz帯の振動の抑制のために10基の油圧装置の能動免震システムをもつように改良された。この帯域の地震性振動はほとんどマイクロ地震波と交通や木材伐採などの人為的発生源に由来する。

ハンフォード観測所はリビングストン観測所とほぼおなじ1機のマイケルソン干渉計を据えている。また、ハンフォードでは初期と拡張型のLIGOの間、基本の干渉計と平行して半分の長さとなる2kmの干渉計が運用された。この干渉計は4kmの干渉計のようにファブリ・ペロー干渉計空洞は同様の光学フィネスを持ち、蓄積時間は半分だった。蓄積時間が半分であることで4kmの干渉計に比べて理論上のゆがみ感度は200Hz程向上したが、半分の低さの周波数のみが検出できた。同時期、ハンフォード観測所は南東ワシントンの地質活動の影響を抑制するため、独自の受動免震システムを採用した。




注釈

  1. ^ 陽子の荷電半径の1000分の1より小さい

参照

  1. ^ LSC/Virgo Census”. myLIGO. 2015年11月28日閲覧。
  2. ^ a b c Castelvecchi, Davide (15 September 2015-09-15), Hunt for gravitational waves to resume after massive upgrade: LIGO experiment now has better chance of detecting ripples in space-time, ネイチャーニュース, http://www.nature.com/news/hunt-for-gravitational-waves-to-resume-after-massive-upgrade-1.18359 2016年1月12日閲覧。 
  3. ^ Major research project to detect gravitational waves is underway”. バーミンガム大学ニュース. バーミンガム大学. 2015年11月28日閲覧。
  4. ^ Shoemaker, David (2012). “The evolution of Advanced LIGO”. LIGOマガジン (1): 8. http://www.ligo.org/magazine/LIGO-magazine-issue-1.pdf#page=8. 
  5. ^ Zhang, Sarah (2015年9月15日). “The Long Search for Elusive Ripples in Spacetime”. 2016年2月11日閲覧。
  6. ^ Larger physics projects in the United States, such as Fermilab, have traditionally been funded by the Department of Energy.
  7. ^ LIGO Fact Sheet at NSF
  8. ^ LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration, B. P. Abbott (2016-2-11). “Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger”. Physical Review Letter 116, 061102 (2016). doi:10.1103/PhysRevLett.116.061102. http://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.116.061102 2016年2月11日閲覧。. 
  9. ^ Castelvecchi, Davide; Witze, Witze (2016-02-11). “Einstein's gravitational waves found at last”. ネイチャーニュース. doi:10.1038/nature.2016.19361. http://www.nature.com/news/einstein-s-gravitational-waves-found-at-last-1.19361 2016年2月11日閲覧。. 
  10. ^ Gravitational waves detected 100 years after Einstein's prediction”. LIGO (2016年2月11日). 2016年2月11日閲覧。
  11. ^ 重力波とその観測 「重力波観測の試み」のタブ、東京大学、理学系研究科、安東研究室
  12. ^ 3分間研究室、Q49東京理科大学
  13. ^ 重力波天文学、宇宙の音を聴く8/38ページ、名古屋大学KMI 西澤篤志
  14. ^ "新しい天文学"の幕開け! 重力波の直接観測に成功、☆"ぴったり重なった"シグナル科学コミュニケーターブログ、日本科学未来館、2016年02月13日
  15. ^ Gravitational Wave Detectors and Sources” (2013年7月29日). 2014年4月20日閲覧。
  16. ^ The Nobel Prize in Physics 1993: Russell A. Hulse, Joseph H. Taylor Jr.”. nobelprize.org. 2013年7月4日閲覧。
  17. ^ California Institute of Technology announces death of Robert L Forward September 22, 2002
  18. ^ M.E. Gertsenshtein (1961). “Wave Resonance of Light and Gravitational Waves”. JETP英語版 (USSR) 41 (1): 113-114. http://www.jetp.ac.ru/cgi-bin/e/index/e/14/1/p84?a=list. 
  19. ^ Gertsenshtein, M. E.; Pustovoit, V. I. (August 1962). “On the detection of low frequency gravitational waves”. JETP英語版 43: 605–607. 
  20. ^ Astrophysical Sources of Gravitational Radiation”. 2010年11月13日閲覧。
  21. ^ Gravitational wave detection a step closer with Advanced LIGO”. SPIE Newsroom. 2016年1月4日閲覧。
  22. ^ LIGO Hanford's H1 Achieves Two-Hour Full Lock” (2015年2月). 2016年2月11日閲覧。
  23. ^ Amos, Jonathan (2015年9月19日). “Advanced Ligo: Labs 'open their ears' to the cosmos”. BBCニュース. http://www.bbc.com/news/science-environment-34298363 2015年9月19日閲覧。 
  24. ^ a b Planning for a bright tomorrow: prospects for gravitational-wave astronomy with Advanced LIGO and Advanced Virgo”. LIGO科学コラボレーション (2015年12月23日). 2015年12月31日閲覧。
  25. ^ Location of the Source”. Gravitational Wave Astrophysics. University of Birmingham. 2015年11月28日閲覧。
  26. ^ LIGO Sheds Light on Cosmic Event” (2008年1月2日). 2016年2月14日閲覧。
  27. ^ a b Castelvecchi, Davide; Witze, Witze (11 February 2016). “Einstein's gravitational waves found at last”. Nature News. doi:10.1038/nature.2016.19361. http://www.nature.com/news/einstein-s-gravitational-waves-found-at-last-1.19361 2016年2月11日閲覧。. 
  28. ^ a b Abbott, B.P. (2016). “Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger”. Phys. Rev. Lett. 116: 061102. doi:10.1103/PhysRevLett.116.061102. http://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.116.061102. 
  29. ^ Naeye, Robert (2016年2月11日). “Gravitational Wave Detection Heralds New Era of Science”. Sky and Telescope. http://www.skyandtelescope.com/astronomy-news/gravitational-wave-detection-heralds-new-era-of-science-0211201644/ 2016年2月11日閲覧。 
  30. ^ Here’s the first person to spot those gravitational waves
  31. ^ “Gravitational waves from black holes detected”. BBC News. (2016年2月11日). http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-35524440 
  32. ^ Adhikari, Fritschel, and Waldman. LIGO technical document LIGO-T060156-01-I. July 17th, 2006.
  33. ^ Firm Date Set for Start of S6, by Dave Beckett, 6/15/2009, LIGO Laboratory News
  34. ^ Aasi, J (9 April 2015). “Advanced LIGO”. Classical and Quantum Gravity 32 (7): 074001. arXiv:1411.4547. doi:10.1088/0264-9381/32/7/074001. 
  35. ^ GWIC Developmental Roadmap p. 97
  36. ^ Fairhurst, Stephen (28 Sep 2012), Improved Source Localization with LIGO India, LIGO document P1200054-v6, https://dcc.ligo.org/cgi-bin/DocDB/ShowDocument?docid=90988 
  37. ^ Schutz, Bernard F. (25 Apr 2011), Networks of Gravitational Wave Detectors and Three Figures of Merit, arXiv:1102.5421, Bibcode2011CQGra..28l5023S, doi:10.1088/0264-9381/28/12/125023 
  38. ^ Cho, Adrian (27 August 2010), “U.S. Physicists Eye Australia for New Site of Gravitational-Wave Detector”, Science 329 (5995): 1003, Bibcode2010Sci...329.1003C, doi:10.1126/science.329.5995.1003, http://www.gravitycentre.com.au/wp-content/uploads/2009/10/Science-article-about-LIGO-Australia.pdf 
  39. ^ Finn, Sam; Fritschel, Peter; Klimenko, Sergey; Raab, Fred; Sathyaprakash, B.; Saulson, Peter; Weiss, Rainer (13 May 2010), Report of the Committee to Compare the Scientific Cases for AHLV and HHLV, LIGO document T1000251-v1, https://dcc.ligo.org/LIGO-T1000251/public 
  40. ^ U.S.-India Bilateral Cooperation on Science and Technology meeting fact sheet – dated June 13, 2012.
  41. ^ Memorandum to Members and Consultants of the National Science Board – dated August 24, 2012
  42. ^ Cabinet has granted ‘in-principle’ approval to the LIGO-India mega science proposal for research on gravitational waves.”. twitter.com. 2016年2月17日閲覧。


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