香港特別行政区基本法 第二章 中央政府と香港特別行政区の関係

香港特別行政区基本法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 02:31 UTC 版)

第二章 中央政府と香港特別行政区の関係

第18条 香港特別行政区で実施される法律は、本法および本法第八条で規定された香港の従来の法律と香港特別立法機関の制定する法律とする。

全国的な法律は、本法付属文書三に列せられたものを除いて、香港特別行政区では実施しない。本法付属文書三に列せられた法律は、香港特別行政区が現地で公布するか立法化して実施する。(後略)

香港の高度の自治を保証する条文。 全国的法律のうち香港で適用されるものは付属文書三で明記する。

この条文からは、香港だけに適用される香港国家安全維持法を、全人代が制定することはできないというのが、常識的解釈であろう。しかし基本法の解釈権は全人代常務委にある。

第三章 住民の基本的な権利と義務

第27条 香港の住民は、言論、報道、出版の自由、結社、集会、行進、デモの自由、労働組合を組織しこれに参加し、ストライキを行う権利と自由を享有する。

2010年代までの香港は、政治的デモの自由が認められていた。

香港国家安全維持法による空文化

2020年6月に香港国家安全維持法が制定され、以後多数の住民が逮捕された。(たとえば政治批判をするだけで「国家分裂扇動罪」に問われうる。)

これは香港基本法27条に違反するのではという問題がある。 しかし2021年2月9日、香港終審法院(最高裁判所)は、香港国安法に対する自らの司法審査権を否定した [注 1]

第四章 政治体制

第四章第一節 行政長官

第45条 香港特別行政区行政長官は地元で選挙または協議を通じて選出され、中央人民政府が任命する。 行政長官の選出方法は、香港特別行政区の実情および順を追って漸進するという原則に基づいて規定し、最終的目標は広範な代表性をもつ指名委員会が民主的手続きを踏んで指名してのち普通選挙で選出される事である。

行政長官の具体的な選出方法は付属文書一『香港特別行政長官の選出方法』が規定する。

行政長官は将来は普通選挙で選出されるという希望が、2010年頃の香港にはあった。

第四章第三節 立法機関

第68条 香港特別行政区立法会は選挙によって選出される。 立法会の選出方法は、香港特別行政区の実情と順を追って漸進するという原則に基づいて規定し、最終的には全議員が普通選挙によって選出される目標を達成する。

立法会の具体的な選出方法と法案、議案の表決手続きは付属文書二『香港特別行政区立法会の選出方法と表決手続き』が規定する。

香港立法会(議会)も最終的には普通選挙で行われる予定だった。

第74条 香港特別行政区立法会議員は本法の規定に基づき、法的手続きを踏んで法案を提出するにあたって(中略)政府の政策にかかわる場合は、提出する前に行政長官の書面による同意を得なければならない。

議員立法の制限。立法会は、法案などの拒否はできるが、行政長官の意向に反する法案は提出できない。

第八章 本法の解釈と改正

第158条 本法の解釈権は全国人民代表大会常務委員会に属する。(後略)

第159条 本法の改正権は全国人民代表大会に属する。(後略)

三権分立国家では法の解釈権は司法の権限であるが、中国では全人代常務委に属する。 また香港政府自身には香港基本法の改正権はない。このように解釈権と改正権が全人代にあることが香港の自治の限界となった。


注釈

  1. ^ 2021年2月9日、「リンゴ日報」創業者、黎智英氏裁判についての、終審法院の判例文から。「全人代および全人代常務委の立法行為としての香港国家安全維持法は、香港基本法または香港に適用される国連自由権規約との不一致の申し立てにもとづく審査の対象とならない。」
  2. ^ ただし2002年と2005年は、選挙委員から100名以上の指名を集める対立候補がなく、現職の無投票当選となった。
  3. ^ 2014年の雨傘運動は、2014年の全人代常務委の改正案、「2017年以後は普通選挙とするが、指名委員会の過半数の指名を立候補条件とする」という案に反対する運動だった。この案は2015年の立法会で否決された。しかし無条件の普通選挙にもできず、基本法付属文書の改正はされなかった。
  4. ^ 2020年の香港国家安全維持法によって反対運動を鎮圧した。
  5. ^ 新型コロナ対策という理由で2020年選挙は2021年に延期。その選挙前に改正。
  6. ^ この選挙委員会は行政長官選挙委員会と同一。選挙委員会による議員選出は、2000年の選挙以後なかったが、復活させた。

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