顕彰 顕彰と表彰の相違

顕彰

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/13 03:12 UTC 版)

顕彰と表彰の相違

顕彰の概念は個人の功績や善行を讃えるという点において多くを表彰と類似しており、一般的には同様の意味として用いられることも多い。日本の表彰制度においても表彰の一環として顕彰がなされており、政府でも内閣総理大臣顕彰をはじめとする中央官庁の主務大臣による大臣顕彰などがあるが、これらの顕彰はその他の大臣表彰と実質的に同義であるといってよい。

顕彰と表彰の相違点としては、傾向として故人の偉勲・遺功などを後世に伝えるなど、殉職した公務員や物故者を対象に用いる例が多いため、やや表彰よりも重い意味合いとして用いられることもある。特に地方公共団体による顕彰として多いのは殉職した軍人(日本では自衛官)、警察官消防吏員消防団員等の遺功を労うため、二階級特進し叙位の他、死亡叙勲褒章、顕彰状、その他の顕彰記章等の贈呈や遺族への追賞・補償を行っており、また、群馬県名誉県民などのように、政府都道府県市町村が死後に名誉称号を追贈することも代表的な事例と言える。

また、表彰と顕彰ともにその栄誉を讃えた人物・団体の功績を永く歴史や記録に留めるという点では同じであるが、相違としていえるのが表彰は実質的に、表彰式を開催して受彰者に表彰状・感謝状の授与・贈呈をするという一時的な行為であるのに対して、顕彰活動は顕彰する人物の功績や善行、足跡を喧伝し続けるものあることが多く、持続的に行われるという点にある。

加えて、表彰が国際機構や国家、地方公共団体その他の公共機関、公益法人企業など一定の権威性と社会的影響力を有する主体により行われることが多いのに対して、顕彰はそれらの権威に限らず、一般市民の間でも広く行われる行為であるというのが大きな相違点といえる。こうしたことから、表彰が一定の公的性格や公益性を担保している例が多いのに対し、顕彰は必ずしも公的性格や公益性によらない行為であるといえる。

例えば、市民などが国や行政の指示によらず、自主的に世界、或いは国や社会、地域の発展に功績を残した歴史的な人物や功労者の功績を讃え、社会に広め末永く語り継ぐ活動を展開するために顕彰会を設立する例や、その人物や功労者を顕彰するための顕彰館や顕彰塔、顕彰碑、顕彰像などを建立する例もある。

こうした市民による顕彰は、ときに主観的で公共の価値観と乖離する恐れがないわけではない。しかし、国や地方公共団体等、行政による栄典制度や表彰制度において必ずしも評価されてこなかった隠れた功労者を労う意味でも、こうした顕彰は表彰と並んで意義深いものとしてとらえることができる。同時に、日本においては特にその傾向があるが、功労のある人物が栄典なり表彰の栄誉に浴することを潔しとしない場合、いたずらに表彰することはかえってその個人の心情や功績に水を注す場合もある。そのような場合、公的な権威性を有する表彰を行うのではなく、個人の陰徳即ち隠された功績として語り継ぐ方が自他ともによい場合もある。こうした個人の隠された事績を語り継ぐことも顕彰の一環といえる。その意味で、顕彰は表彰では報いきれない、人間の心情に沿いきれない側面を補う意味もある。




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