雑草
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 06:12 UTC 版)
生活能力
雑草のすむ過酷な生活環境を乗り切るには、特殊な能力が必要である。それぞれの種は、それなりの方法で乗り切る仕組みをもっている。
代表的なのは、次のような能力である。
- 踏みつけに対する耐性
- オオバコ、ギョウギシバなど、踏みつけに対して特に耐久力をもつものは、運動場や道路脇など、特に踏まれることの多い場所を専有する場合がある。
- 強い繁殖力
- スギナ、ドクダミ、チガヤ、セイタカアワダチソウ、カヤツリグサなどは地下茎をもち、地下を広がりながら無性生殖で個体数を増やすだけでなく、種子でも繁殖する。それ以外にも多くの雑草は、小さな種子や栄養繁殖子を多数つける。[11]
- 一世代の時間や成長に融通が利く
- 条件が悪ければ、小さな個体のまま、花をつけ、種子を作るものがある。ホウキギクやヒメムカシヨモギは、普通に育てば1mを越えるが、10cmにも満たない株が花をつけることがある。これは、カラスムギやイヌムギでもみられる。
- 休眠に適する構造
- 種子や根茎など、休眠に適する構造を持ち、条件が悪い時期をこれで乗り越える。そうして、好適な条件になると発芽するのだが、この時に、全部が発芽せず、休眠を続けるものが一定数残ることがいくつかの植物で知られている。これは、条件が良くて発芽しても、すぐに駆除される危険があるため、それでも休眠しているものを残すことで、全滅の危険を避ける適応であると考えられている。
- 作物への擬態
- 田畑など耕地に発生するものでは、作物に擬態するものがある。擬態随伴雑草タイヌビエは、水田でイネの間に生え、イネによく似た株の形を示し、イネと同じくらいの背の高さで、同じ頃に結実し、小さな種子を稲刈りの前に散布して、駆除の目を潜りぬけ、水田の管理に沿って世代を繰り返す[12][13]。苗のころには、タイヌビエはイネと見分けるのが難しいが、イネにはある葉の付け根の薄い膜がないので、熟練した農民は識別する。イヌビエの仲間ではヒメタイヌビエがイネに擬態するが、タイヌビエほど顕著ではない。また、ライムギやエンバクのように、擬態を推し進めているうちに、本物の穀物になったものもいる。こういった栽培化された雑草は、劣悪な環境の田畑で生息しているうちに、環境に適応できなくなって絶えた本来の作物に取って代わり、有用性に気付いた人間によって利用されるようになったと考えられている。
- 刈り取りなど
- 刈り取りを行われ、その土地の植物が無くなった時に、強い日照を得たときに芽吹いて来るパイオニアプランツと云われるタケニグサ等。
注釈
出典
- ^ 『広辞苑』(第四版)岩波書店〈岩波書店〉、1992年。
- ^ 萩本 宏「雑草の定義と雑草学の役割」『雑草研究』第46巻第1号、日本雑草学会、2001年、56-59頁、doi:10.3719/weed.46.56。
- ^ “雑草管理に関するQ&A”. 雑草管理教育研究センター. 2023年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年9月3日閲覧。
- ^ 河野 昭一「種生物学の立場からみた雑草」『雑草研究』第20巻第4号、日本雑草学会、1975年、145-149頁、doi:10.3719/weed.20.145。
- ^ a b c 雑草の話 第1話
- ^ 『新版 日本原色雑草図鑑』
- ^ 雑草の話 第1話 第25話
- ^ 三浦 (2009)
- ^ 『きらわれものの草の話』p.8
- ^ a b 三浦励一「ドメスティケーションとは何か : 雑草とは何か : 特にドメスティケーションとの関係において」『国立民族学博物館調査報告』第84巻、2009年3月、35-50頁。
- ^ 頑固な雑草の名前としつこい雑草の抜き方
- ^ “雑草学ノート”. hp.brs.nihon-u.ac.jp. 日本大学. 2023年8月8日閲覧。
- ^ a b c 4章 雑草の除草回避戦略 サイト:京都大学
- ^ 幹二, 伊藤 (2018). “雑草リスク情報-その2:その傷害や病気,実は雑草が原因です”. 草と緑 10: 54–65. doi:10.24463/iuws.10.0_54 .
- ^ “農業技術事典NAROPEDIA”. lib.ruralnet.or.jp. 2023年6月20日閲覧。
- ^ 除草機. コトバンクより。
- ^ “Chapitre 12. Désherbage des cultures par les oies”. www.fao.org(国際連合食糧農業機関). 2023年6月13日閲覧。
- ^ “面倒な草刈りをしてくれる“除草ヤギ”が大人気…かわいすぎて除草させられない人も|FNNプライムオンライン”. FNNプライムオンライン (2020年11月5日). 2023年6月20日閲覧。
- ^ “農薬代わりに豚活用 ブドウ園で試み―仏:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2023年9月4日閲覧。
- ^ 耕作放棄地対策のための豚放牧技術を確立 愛知県農業総合試験場
- ^ “ヒガンバナ:ご先祖の知恵 (常陽新聞連載「ふしぎを追って」) (情報:農業と環境 No.114 2009年10月)”. www.naro.affrc.go.jp. 2023年6月20日閲覧。
- ^ 冨永, 達 (2003年12月25日). “絶滅に瀕する耕地雑草の現状”. 京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学 = The scientific reports of Kyoto Prefectural University. Human environment and agriculture. pp. 101–105. 2023年8月9日閲覧。
- ^ “100 Äcker für die Vielfalt - 100 Äcker für die Vielfalt”. www.schutzaecker.de. 2023年8月9日閲覧。
- ^ [1]
- ^ [2]
- ^ [3]
- ^ [4]
- ^ https://www.facebook.com/ToyokeizaiOnline+(2015年3月28日).+“戦国武将は、なぜ雑草を家紋にしたのか”. 東洋経済オンライン. 2023年8月9日閲覧。
- ^ 田中直著「雑草とご愛草」『宮中侍従物語』p.225-230
- ^ 流行語大賞は「雑草魂」「リベンジ」「ブッチホン」(1999年12月2日 読売新聞)
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