蓋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/16 01:00 UTC 版)
概説
何かを入れるようになっている容器の入り口を、別のものでふさぐようになっている場合に、これを蓋という。蓋は、容器の内容物が外部に漏れることを防いだり、外部のものが容器内に入るのを防ぐ役割を果たす。容器の口の閉じ方としては、柔らかいものの場合はその口をまとめて縛る、といった方法があるが、そうではなく、堅い縁を持った入り口に板状のものを乗せてその口を隠すのが蓋である。さらに、その口が狭い場合には栓ということもあるが、これも蓋の1種である。
蓋は入り口をふさぐためのものであるが、目的は様々である。たとえば茶碗やコップには蓋がないのに対して、お椀や弁当箱には蓋がある。これは内容がこぼれないようにすることと、蒸気が逃げないようにすること、保温の効果を求めること、それに外部を遮断することで外のゴミなどが入らないようにすることが目的である。逆に前者には蓋がないのはその中のものをすぐに消費することを前提としているためである。
また、生き物を容器に入れる場合も蓋をしなければならない。
丼ものでは店によって蓋をする場合としない場合がある。これは、普通はすぐに消費するので特に蓋の必要がないこと、ただし蓋をして蒸らすことが補助的な調理の意味を持つことからであり、蓋をするかしないかはその店の姿勢でもある。
ふさぎ方の種類
蓋の構造も様々である。原則的には容器の口をふさぐものだから、その口の形の平板であればよい。専用のそれでなく、とりあえずで蓋をする場合には板やお皿なども利用することがある。しかし、専用の蓋がつく場合には、目的に応じて様々な工夫がされている。
- 口を覆う
- 口よりわずかに大きい平板で、周囲が下向きに折れている。これによって口に被せてずれないようになり、密閉度も増す。弁当箱の蓋などはこれが伝統的であった。
- はめこみ
- 容器の口との間でうまくはまりこむようになっているもの。パッキンを間に挟むとさらに密閉度が増す。
開閉(懐中時計) ねじ巻き(火縄銃) - 開閉
- 片側で容器や本体と蝶番などで連結してあり、扉のように開閉する折り畳み式のもの。
- ねじ巻き
- 入り口と蓋とにねじ山が切ってあり、回して詰めるもの。
- ねじ巻き式のふさぎ方は、日本では戦国時代の鉄砲伝来時に伝わったと言われている。種子島領主種子島時尭に日本製の鉄砲を作るようにと命じられた職人八板金兵衛は、南蛮人から買い付けた火縄銃を見ながら複製を試みていた。だが押しても引いてもどうしても開かない蓋があった。そのため南蛮人に訪ねて、まわして開け閉めをする「ねじの原理」を教わった。その後日本初の火縄銃、通称「種子島銃」が完成した。
- この形式の蓋は、ガラスや金属の素材で作られることが多い。非常に密閉した環境が作れるが、ねじ込みすぎると開けるのが難しくなる。開けやすいように蓋の縁にギザギザをつけるなどの工夫がなされるが、なかなか開かない、というシチュエーションがよく出現する。往々にしてこれが男の力の見せ所、という話になりやすい。より開けやすくするためには、蓋の方を暖める(熱膨張で蓋がゆるむ)などの方法がある。蓋を開ける専用の器具もある。
密閉性が求められる場合には、容器本体の密閉性は当然であるが、蓋の材質やパッキンの材質、構造について注意が求められる。また、液体バリア性だけでなくガスバリア性についても考慮していない場合、思わぬ問題(保存液等の外気による容器本体や蓋・パッキンを通じての汚染・品質劣化や、逆に保存液の発散など)に遭遇する事があるので、特に長期保存や換気の望めない場所での保存を行う場合、あるいは逆に換気が良い場合、保存期間中に温度差が発生する場合などにおいては注意を要する。
蓋は容器の密閉性を確保する際に、非常に重要となるパーツである。
日本の伝統的な蓋の名称として次のようなものがある。
- 板蓋(いたぶた) - 身のサイズに合わせて蓋を作った後、身の上面に合うよう蓋の裏面の周囲を浅く削り取ったもの[1]。乗蓋(のせぶた)ともいう[1]。
- 桟蓋(さんぶた) - 板蓋と同様に作った後、桟を打った構造になるよう裏面の中心側を刳ったもの[1]。桟の数により四方桟、二方桟ともいう[1]。挿蓋(さしぶた)ともいう[1]。
- 被蓋(かぶせぶた) - 身の外寸より一回り大きな蓋を、身の上から覆い被せるように置くもの[1]。
- 印籠蓋(いんろうぶた) - 身の上縁内側に低い立ち上がりを作り、蓋を乗せると側面が同一平面になるようにしたもの[1]。薬籠蓋(やくろうぶた、やろうぶた)、野籠蓋(やろうぶた)ともいい、立ち上がりが身にある場合は身印籠(本印籠)、蓋にある場合は蓋印籠(蓋やろう)という[2]。合口部分に金属製の覆輪を付けるものもある[1]。
- 被印籠蓋(かぶせいんろうぶた) - 身の合口の内側に立ち上がりを作り、身の側面より一段張り出した蓋を乗せるもの[1]。
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日本の伝統的な蓋の構造と名称
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身印籠と蓋印籠
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四方桟と二方桟
蓋の工夫
単に閉じるだけでない工夫がされた例もある。取り扱いやすいようにつまみをつけるのは広く見られる。
- 蒸気抜きの穴
- やかんや鍋では、火にかけたときに内容が沸騰した場合、蓋を押し上げて蓋が暴れることがある。これをふさぐために蓋に小さな穴が開いている。
- 注ぎ口・空気抜きの穴
- 醤油差しなどこまめに内容物を取り出したい場合のために、蓋を開けなくても中のものが出せるようになっている。少量だけ出るように小さな口を付け、また、出やすいように空気穴を別に開けるのが普通。
- やや類似の例に、化学薬品用であるが、染色液などやはり少量を取り出しやすいように蓋がピペットをかねている滴瓶というのがある。
- 圧力調節機能
- 食品などを保存するためには容器の密閉度が高い方がよい。また、内部の空気もない方がよい。そのために蓋に排気機能をつける例がある。逆に、炭酸飲料を保存するために加圧機能をつけた栓もある。
蓋と同じ種類の言葉
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