聖母子 (ムリーリョ、メトロポリタン美術館)とは？わかりやすく解説

『聖母子』
	スペイン語: Virgen con el Niño; 英語: Virgin and Child
作者	バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
製作年	1670-1672年ごろ
種類	キャンバス上に油彩
寸法	165.7 cm × 109.2 cm (65.2 in × 43.0 in)
所蔵	メトロポリタン美術館、ニューヨーク

『聖母子』（せいぼし、西: Virgen con el Niño, 英: Virgin and Child）は、スペインのバロック絵画の巨匠バルトロメ・エステバン・ムリーリョが1670-1672年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。ムリーリョの最も魅力的な作品の1つであるこの絵画は画家の全盛時代に描かれたもので^[1]、聖母マリアの乳房に手を伸ばす幼子イエス・キリストを表している。作品は1943年にロジャーズ基金により購入されて以来^[1]、ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されている^[1]^[2]。

作品

この絵画について触れた最初の資料は、1728年に作成されたサンティアゴ侯爵フランシスコ・エステバン・ロドリゲス・デ・ロス・リオス (Francisco Esteban Rodríguez de los Ríos) の財産目録である^[1]^[2]。侯爵のコレクションにはムリーリョの傑作が数多く含まれていた^[1]。その後、本作はスコットランドのファイフに地所を所有したクロフォード伯爵・バルカレス伯爵に代々受け継がれ、アイルランド国立美術館の館長を務めたイギリスの美術批評家であり、美術商でもあったロバート・ラングドン・ダグラス（英語版）を通してメトロポリタン美術館に収蔵された^[2]。

上記の1728年の目録では、幼子イエスが聖母の乳房に手を伸ばしている図像から、「幼子に授乳する聖母」という題名で呼ばれていた^[1]^[2]。ムリーリョの聖母子を主題とした作品が高く評価された理由は、繰り返し描かれたテーマに親しみと愛らしさを与えることができたその才能にあった^[1]。肌着の上に伝統的な赤色の衣服と青色の布を纏った聖母は、何も描かれていない室内空間で石のベンチに座っている。彼女の黒みがかった髪の毛は、透き通ったヴェールで覆われている。聖母はイエスを見下ろしながら、人間の贖罪のために犠牲となる彼の将来を察していることを重々しい表情の中に示している^[2]。

イエスは乳児ではなく、均整のとれた体型で、赤みがかった金髪の活発な子供として描かれている^[2]。彼の仕草は通常の図像とは異なり、自然なものである。幼子は鑑賞者に気付いて一時乳を飲むのをやめ、こちらを振り向いているかのように描かれており、その眼差しは鑑賞者のほうを向いている^[1]。彼は聖母とともに光輪 (宗教美術) を背にして、絵画の最も重要な部分をなしている^[2]。

脚注

^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h “Virgin and Child”. メトロポリタン美術館公式サイト (日本語). 2024年6月7日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g メトロポリタン美術館展西洋絵画の500年、2021年、99頁。

参考文献

『メトロポリタン美術館展西洋絵画の500年』、国立新美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社、テレビ東京、BSテレビ東京、2021年刊行、ISBN 978-4-907243-20-3

外部リンク

メトロポリタン美術館公式サイト、バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『聖母子』 (日本語)

[MM-1] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h “Virgin and Child”. メトロポリタン美術館公式サイト (日本語). 2024年6月7日閲覧。

[ReferenceA-2] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g メトロポリタン美術館展西洋絵画の500年、2021年、99頁。

[1]

[2]

表話編歴バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
宗教画	『天使たちの厨房』（1646年）『小鳥のいる聖家族』（1650年頃）『ロザリオの聖母』（1650-1655年頃）『聖母の聖ベルナルドゥスへの顕現』（1655年頃）『善き羊飼い』（1660年頃）『聖母の誕生』（1661年）『エル・エスコリアルの無原罪の御宿り』（1660-1665年）『古代ローマ貴族の夢』（1662-1665年頃）『エジプト逃避途上の休息』（1665年頃）『ヤコブを祝福するイサク』（1665-1670年）『放蕩息子の帰還』（1667-1670年頃）『ベトザタの池で足萎えを治すキリスト』（1667-1670年頃）『貝殻の子供たち』（1670年頃）『聖母子』（1670-1672年頃）『病人を治療するハンガリーの聖エリザベト』（1672年）『パンと魚の奇蹟』（1669-1674年頃）『アランフエスの無原罪の御宿り』（1675年頃）『ベネラブレスの無原罪の御宿り』（1678年頃）『天上と地上の三位一体』（1675-1682年）
風俗画	『乞食の少年』（1645-1650年頃）『ブドウとメロンを食べる子供たち』（1645-1650年）『犬を連れた少年』（1655-1660年）『窓辺の二人の女性』（1655-1660年頃）『小さな果物売り』（1670-1675年）『パイを食べる子供たち』（1675-1682年）
肖像画	『自画像』（1670年頃）『ニコラス・オマスールの肖像』（1672年）

スペイン語: Virgen con el Niño 英語: Virgin and Child

作者	バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
製作年	1670-1672年ごろ
種類	キャンバス上に油彩
寸法	165.7 cm × 109.2 cm (65.2 in × 43.0 in)
所蔵	メトロポリタン美術館、ニューヨーク

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