社会医療法人 社会医療法人の概要

社会医療法人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 04:44 UTC 版)

特に地域で必要な医療を行う主体として、一般の医療法人と区別して認定されている法人である。税法上、医療保健業(附帯業務、収益業務は除く。)は非課税。[2]

医療法人は、本来ならば非営利法人であり、一般に行える事業は、本来業務と呼ばれる病院などの経営に関する業務及び附帯業務と呼ばれる介護事業などの限られたものである。しかし社会医療法人は、医療法第42条の2の規定により、公益性を担保する条件を満たし、都道府県知事の認定を受けることで実施が可能となった、比較的幅広い事業から得られる収益を、病院などの本来事業へ充てる(いわゆる、医療への再投資をする)ことができる。

これにより医療の非営利性を保ったまま、経営の透明化と効率化、また地域医療の安定化を目指す制度である。2000年度(平成12年度)から2011年度(平成23年度)まで存在した特別医療法人についても本項で扱う。

経緯

地方自治体の運営する医療機関は、公的医療機関として地域における”公益性の高い医療”を担ってきた。

(”公益性の高い医療”とは、通常提供される医療と比較して継続的なサービス提供が困難であるが、地域社会に必須の医療である6事業(救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、 へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む))がこれに該当する[3][4]

しかし公営企業としての医療機関は人件費の高止まり(従業員は「公務員」や「みなし公務員」扱いとなるため)や業務の非効率性、施設自体の維持費の高止まり(新築施設の場合は建設費等。既存施設の場合は存続させるための維持費等)から、繰入金無しでは慢性的かつ大幅な赤字を抱え込み、地方財政の逼迫もあり医療機関自体の閉鎖に追い込まれる例が多くなっている。一方民間医療機関が地域医療において果たす役割は大きくなっていることから、非営利性を高度に担保した民間医療機関に効率よく公益性の高い医療サービスを担わせることが求められた。[3][5]

そこで経営の透明性を高めた医療法人に対して、地域の医療計画へ参画させ、自立的に公益性の高い医療を安定・継続的に提供してもらうための施策として、従来の特別医療法人をもとに「社会医療法人」が制度化された。[5]

2006年に改正された医療法(平成18年6月21日法律第84号)で制定され、翌2007年4月1日より施行された。ただし、要件となる救急医療等確保事業を記載した医療計画の実施が2008年4月からとなったことや、内閣府で公益法人制度改革が検討中であったことから、都道府県による認定は2008年4月以降に始まり、認定第1号は同年7月10日となった。

2024年1月1日現在、361法人が認定を受けている。[6]都道府県別で見ると北海道(54法人)が最多で、以下、大阪府(45法人)、福岡県(21法人)の順となっている。なお、富山県には社会医療法人に認定された医療法人はない。

特徴

社会医療法人の特徴としては下記の通り。

  • 救急医療、精神科救急医療、災害医療、新興感染症発生・まん延時における医療、周産期医療、へき地医療、小児救急医療といった公益性の高い医療を担わなければならない。
  • 自治体病院(公立病院)の民営化・指定管理者の公募の際に、一般の医療法人よりも有利になる。
  • 社会医療法人債(有価証券)の発行が可能。なお、社会医療法人債を発行する場合、財務諸表監査が義務化される。
  • 収益事業を行うことができる。また、一般の医療法人よりも幅広い社会福祉事業の運営が可能(特別養護老人ホームを除く)。
  • 自治体病院の遊休病床が優先的に割り当てられる。
  • 国有財産の売却だけでなく定期借地権を利用した新規の貸付などにおいても、社会医療法人が法人税法 別表第二で規定されている「公益法人等」の区分に該当し、「公益性が高い」法人と判断されて、国有財産地方審議会において認められるようになってきた。(例:浦添総合病院(社会医療法人仁愛会・沖縄県)の沖縄県浦添市前田の国家公務員宿舎跡地移転事例。ただし、本内容が全ての社会医療法人が全ての国有財産地方審議会において全ての例で必ず認められる事にはなっていない)

本来事業への補助事業である収益事業の法人税率は公益法人と同じ19%が適用され、本来事業は非課税。収益事業から本来事業への支出は、最大200万円まで寄付金として損金算入できる。


注釈

  1. ^ 法務省の法文英訳サイト掲載の医療法の英訳を確認。
  2. ^ 実際に社会医療法人が認定されるようになったのは、2008年3月31日付け「社会医療法人の認定について」(厚生労働省医政局長通知)が発出された翌日にあたる同年4月1日での施行日以降である[1]

出典

  1. ^ 社会医療法人の認定について(厚生労働省医政局長通知)”. 厚生労働省 (2014年3月31日最終改正). 2022年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月17日閲覧。
  2. ^ 第9回地域医療構想に関するワーキンググループ(平成29年11月20日 資料2)”. 厚生労働省. 2023年5月18日閲覧。
  3. ^ a b 医業経営の非営利性等に関する検討会 (2005年4月22日). “医療法人制度改革の考え方~医療提供体制の担い手の中心となる将来の医療法人の姿~” (PDF). 厚生労働省. 2013年2月12日閲覧。
  4. ^ 「社会医療法人の認定について」の一部改正について”. 厚生労働省. 2024年4月17日閲覧。
  5. ^ a b 第1回医療法人の事業展開等に関する検討会 資料3「医療法人制度に係る状況等について」”. 厚生労働省. 2023年7月4日閲覧。
  6. ^ 社会医療法人の認定状況 (令和6年1月1日現在)”. 厚生労働省. 2024年4月17日閲覧。
  7. ^ 厚生労働省ホームページ 社会医療法人の認定について(厚生労働省医政局通知)https://www.mhlw.go.jp/content/000336630.pdf
  8. ^ 厚生労働大臣の定める社会医療法人が行うことができる収益業務
  9. ^ a b 平成19年度厚生労働省医政局委託医療機関における資金調達のための調査報告書”. 厚生労働省. 2018年8月18日閲覧。
  10. ^ 厚生労働省ホームページ 医療法人関係法令及び通知等 https://www.mhlw.go.jp/content/000332456.pdf
  11. ^ a b 医療法人数の推移について(平成30年3月30日現在)” (PDF). 2018年8月18日閲覧。


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