磐田西高等学校万引き事件 磐田西高等学校万引き事件の概要

磐田西高等学校万引き事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 03:21 UTC 版)

背景

静岡県内での万引きの増加

静岡県教委学校教育課によると、静岡県内では県立高校での万引きや窃盗の発生件数が、2006年(平成18年) - 2008年(平成20年)は250人前後だったが[3]2009年(平成21年)に341人、2010年(平成22年)も336人と急激に増加した[3][4]。県代表監査委員は、学校も県教委も万引き自体を軽く見ているとし、詳細な調査と再発防止策の必要性を訴えていた[3]

別の県立高校での万引き事件

2010年(平成22年)9月静岡県監査委員が定期監査を行った際に、西部の県立高校で別の生徒から注文を受けて量販店等で万引きをし、盗んだ商品を格安で校内で転売していたことが判明した[4][5]。学校側の調査によると万引き実行役の生徒は合計6人で、盗品を買ったことがあると認めた生徒が31人、「注文したことがある」「一緒に万引きの現場に行ったことがある」などと答えた生徒が4人で[4]、同校で万引きへの関与を認めた生徒は合計41人だった[6]。2011年2月、静岡県監査委員は同校に改善を求める指示を出した。この時点では、校名公表をしないことが通例となっており校名は公表されなかった[4]。しかし、この問題が県立磐田西高の校名公表につながる要因になった[4]

静岡県立磐田西高等学校について

静岡県立磐田西高等学校1939年(昭和14年)に中泉町立中泉商業学校として設立された[5]。男女共学で、2011年(平成23年)は普通科と総合ビジネス科に計739人が在籍していた[5]。商業教育の実績が高く[5]、多数が進学する一方、就職を希望した生徒についても2010年(平成22年)は内定率が100%であった[5][6]。卒業後は国立大学を含め多数が進学する。スポーツは特に剣道が盛んで全国大会の常連校であった[5]

事件の概要

2009年の集団万引き事件

静岡県立磐田西高校で生徒の万引き疑惑が浮上したのは2009年(平成21年)11月、ある保護者から「息子の友達が、量販店で万引きをしたらしい」との情報が寄せられたことが発端である[5]。該当する当時2年の男子に話を聞いたところ万引き行為を認め、そこから同校での万引きの実態が判明していった[5]

教員が生徒一人一人から聞き取りを始めると「自分も万引きしたことがある」「人がしているのを見た」という証言が相次ぎ男子生徒72人が関与したことが発覚[5][7][8]。10回以上繰り返した生徒は13人いた[5][7][8]。盗品と知りながら受け取った生徒が3人おり[9]、盗んだ額は最も多い生徒で3万円にのぼった[9]

最も万引きが頻発したのは校内のパン売り場であった。昼時になると一斉に生徒が押し寄せたが、業者の店員1人で対応していたので[5]、金を払うことなく、店先のパンをつかんで持ち帰るという手法が横行していた[5]。47人の生徒が"持ち逃げ"を告白したという[5]。パンで味をしめ、校外のコンビニや量販店でパンや菓子、たばこ、文具、CDを万引きをするようになった[5][9][10]。監査委員は校長に、3カ月以内に改善状況を報告するよう求めた[1][11]

学校の対策

磐田西高は、万引した生徒全員を3日 - 20日の自宅謹慎処分にした[5][10]。同校には「総合ビジネス科」もあり、卒業後に就職、商売する側に立つ生徒も多く[5]、校内パン店を業者ではなく生徒に運営させる[5][8][9]、生徒の日常生活も見直し、あいさつの徹底、清掃の励行など規範意識を高める対策を実行し[10]、保護者らに経緯説明と謝罪を行った[8]。副校長は「生徒の規範意識の向上を図りたい」と話している[8]。被害を受けたコンビニなどには謝罪と弁償を行った[11]

静岡県教育委員会の対策

磐田西高での万引きは組織的な集団万引きだったと同校は県教委学校教育課に報告した[12]。同課は学校側に対応を指示したものの、同校の自主指導に任せた[11]。またこの情報を教育長や教育委員へ伝えなかった[12]。静岡県教育委員会学校教育課には、各学校の生徒指導を担う教諭が集まる会議が生徒の規範意識の向上を検討する場として設けられているが、同校の万引き発覚後にも検討課題に挙げられず、具体的な防止対策は取っていなかった[9]

2010年の校内窃盗事件

2009年(平成21年)に様々な対策を講じたにもかかわらず、2010年(平成22年)7月に磐田西高等学校で、生徒2人が校内で他生徒の財布から7回にわたって総額1万500円を抜き取る不祥事が起きた[5][7][8][10]。1人が見張り役、1人が実行役と役割分担をしていた[9]

校名公表

静岡県監査委員による校名公表

2011年(平成23年)12月6日、静岡県監査委員は2011年(平成23年)9月20日 - 10月26日に県内69カ所で行った定期監査などの結果を発表した[13]。その場で、磐田西高等学校における2009年(平成21年) - 2010年(平成22年)にかけての窃盗と万引きについても報道機関に情報公開をした[11]。監査結果での校名の公表は異例とされ[9][10]、報道機関は『全校生徒の1割が集団万引き』などとして大きく報道した[5][6][13]。監査委員が学校名を公表して再発防止を求めるのは初めてとされた[11]

校名公表に至った理由

静岡県監査委員は、2011年(平成23年)秋に磐田西高校の事案を把握した[9]。校名公表について、2010年までは非公表を通例とし、他生徒への配慮からこれまで伏せられることが多かったが[3][9]、磐田西高校の事案は2年続いて万引きや窃盗が起きたことを重くみて、同校の指導責任に問題があると判断された[9]

静岡県内の県立高校で非行事案にかかわった生徒数は2009年(平成21年度)で全体の1.13%だったが、磐田西高校では10.05%と突出して高く[11]、教育現場に再発防止を求める必要があるとして校名公表に踏み切ったとしている[1][2][3][4][5][8][10]。学校にも聞き取りをし、慎重に検討した上で学校名を公表したとされ[5]、学校への影響はあるかもしれないが、公表できちんと各校に対応してもらうことが優先度が高いと考えたと監査委員はコメントした[4]

また静岡県内で増え続ける万引き事件と静岡県教育委員会の対応の甘さ・鈍い動きからも、異例の公表が必要という結論に達したと述べた[6][9]。校名の公表には委員の中で議論もあったが、内容があまりに深刻で、公表することで万引きを軽く見る風潮に歯止めをかけ[11]、再発防止を求める必要があると[11][14]、4人の全委員の一致で公表に踏み切ることを決めた[11]


  1. ^ a b c 男子生徒74名が万引など関与 静岡・磐田西高 購買、コンビニで 『中日新聞』2011年12月07日 朝刊 28頁 第2社会面 (全355字)
  2. ^ a b 高校生70人が万引に関与 静岡県監査で判明 『共同通信』2011年12月06日 (全360字)
  3. ^ a b c d e 2高生徒、集団万引き新たに発覚 中部で4月に30人、西部で09年に41人/静岡県 『朝日新聞』 2011年12月10日 東京地方版/静岡 29頁 静岡 (全1,378字)
  4. ^ a b c d e f g h i j k 高校の万引き問題 盗品 生徒が「注文・売買」も 県西部、関与41人=静岡 『読売新聞』2011年12月08日 東京朝刊 33頁 (全1,187字) 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 静岡県立磐田西高で2009年度、生徒1割が万引き犯 昼時の校内パン売り場で横行2011年12月08日 『スポーツ報知』 20頁 (全1,042字) 
  6. ^ a b c d 静岡の県立高校"生徒1割が万引き犯"(スポーツ報知/朝日新聞/読売新聞) 2011年12月08日 TBS ひるおび! 一般実用/ニュース/ニュース (全306字) テレビ番組放送データー
  7. ^ a b c 異例公表…生徒74人が万引き、窃盗 2011年12月08日 テレビ朝日 スーパーJチャンネル 報道/ニュース/ニュース (全120字)  テレビ番組放送データー
  8. ^ a b c d e f g 磐田西高生徒1割「万引き関与」 大半が校内で 2009年度聞き取り=静岡 『読売新聞』 2011年12月07日 東京朝刊 33頁 (全470字) 
  9. ^ a b c d e f g h i j k 磐田西高の生徒74人、万引き・窃盗 県監査委員、異例の公表 /静岡県 『朝日新聞』 2011年12月07日 東京地方版/静岡 29頁 静岡 写図有 (全1,372字) 
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n 社説 高校生集団万引-県教委は認識甘すぎる 『静岡新聞』2011年12月09日 朝刊 3頁 静岡 三政 (全1,009字)
  11. ^ a b c d e f g h i 万引き:多発、校名公表 磐田西高で2009年度72人 /静岡 『毎日新聞』 2011年12月07日 地方版/静岡 23頁 (全823字) 
  12. ^ a b c d e 万引き:多発校の公表、教育長が疑問視 「学校側の対応は十分」/静岡 『毎日新聞』2011年12月16日 地方版/静岡 27頁 (全730字)
  13. ^ a b 磐田西高の生徒が校内外で集団万引-県監査委員が公表 『静岡新聞』2011年12月07日 朝刊 30頁 静岡 二社 (全443字)
  14. ^ a b c d e 県立高生万引き 知事「校名公表は当然」弁護士会は「人権侵害の恐れ」=静岡 『読売新聞』2011年12月14日 東京朝刊 33頁 (全746字) 
  15. ^ 社説 教育改革-現場から一歩踏み出そう 『静岡新聞』2012年1月8日 2012.01.08 朝刊 3頁 静岡 三政 (全1,445字)
  16. ^ 県立高生万引き問題 県教育長が対応謝罪=静岡 『静岡新聞』2011年12月15日 東京朝刊 33頁 (全247字) 
  17. ^ a b c 万引き:多発で知事「校名公表は当然」 県弁護士会は中止要請へ/静岡『毎日新聞』2011年12月14日 地方版/静岡 23頁 (全416字)
  18. ^ a b 県教委を仕分け 川勝知事、不祥事多発受け /静岡県 『朝日新聞』2011年12月14日 東京地方版/静岡 29頁 静岡 (全517字)
  19. ^ 集団万引き、校名公表「人権侵害の可能性」 県弁護士会、調査開始 /静岡県 『朝日新聞』2011年12月15日 東京地方版/静岡 27頁 静岡 (全189字) 
  20. ^ 万引き校名公表で県弁護士会が勧告書=静岡『読売新聞』2012年03月31日 東京朝刊 33頁 (全295字) 
  21. ^ 校名公表の妥当性 県教育長が検証方針 県立高万引き=静岡 『読売新聞』 2011年12月16日 東京朝刊 33頁 (全317字)
  22. ^ 「校名公表、慎重に」申し入れ 高校生万引き 県監査委員に県教委=静岡『読売新聞』2011年12月23日 東京朝刊 33頁 (全309字)
  23. ^ a b c d 万引問題 校名公表で謝罪要求 県高教組 監査委は拒否の構え 『東京新聞』2012年04月06日 朝刊 24頁 静岡版 (全414字) 
  24. ^ 万引き関与「年10人超」12校 2009年(平成21年) - 2011年(平成23年度) 県立高93校再調査=静岡『読売新聞』2012年03月06日 東京朝刊 31頁 (全722字)
  25. ^ 万引き:多発 県中部高校でも 2010年度に30人以上、校名公表検討/静岡『毎日新聞』2011年12月14日 地方版/静岡 23頁 (全538字) 
  26. ^ 県監査委員:万引き関与の県立高校名を一転、非公表へ 「防止の効果あった」 /静岡『毎日新聞』2012年03月3日 地方版/静岡 25頁 (全291字) 
  27. ^ a b 31人万引き関与の県立高、監査委員が改善を指示/静岡県 『朝日新聞』2012年03月06日 東京地方版/静岡 29頁 静岡 (全397字)


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