横断性 (数学) 異なる次元に対する横断性の意味

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横断性 (数学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 14:21 UTC 版)

異なる次元に対する横断性の意味

周囲の空間に依存する横断性.示されている2つの曲線は,平面に埋め込まれていると考えると横断的に交わるが,3次元空間内の平面に埋め込まれていると考えると横断的でない.

L1, L2, M をそれぞれ次元が l1, l2, m の多様体とし,横断的に交わる写像 f1: L1M, f2: L2M があるとする.

横断性の意味は M, L1, L2 の相対的な次元に大きく依存して異なる.l1 + l2 = m のときに横断性と接性の関係は最も明白である.

3つの別々の場合を考えることができる:

  1. l1 + l2 < m のとき,L1L2 の接空間の像が M の接空間をはることはどんな点でも不可能である.したがって f1f2 のどんな交わりも横断的になり得ない.しかしながら,交わらない多様体は自明な意味で条件を満たすので,横断的に交わると言える.
  2. l1 + l2 = m のとき,L1L2 の接空間の像は任意の交点において M の接空間を直和に張らなければならない.したがってそれらの交わりは孤立した符号付き点からなる,すなわち 0 次元多様体である.
  3. l1 + l2 > m のとき,L1L2 の接空間の和は直和とは限らない.実際,f1f2 が,埋め込まれた部分多様体の場合に起こるように,交点ではめ込みであるときには,直和にはなりえない.写像がはめ込みならば,像の交わりは次元 l1 + l2m の多様体になる.

交叉積

任意の2つの滑らかな部分多様体が与えられると,それらの一方を任意に小さい量だけ摂動して,得られる部分多様体が固定された部分多様体と横断的に交わるようにできる.そのような摂動は多様体あるいはそれらの交わりのホモロジー類に影響しない.例えば,次元が相補的な多様体が横断的に交わるとき,交点の個数の符号付き和は,べつの横断交叉な多様体に全同位変形英語版さえしても変わらない.(交点を mod 2 で数えて符号を無視し,粗い不変量を得ることもできる.)これから任意の次元のホモロジー類上の双線型交叉積が定まり,これはコホモロジー上のカップ積ポワンカレ双対である.カップ積と同様,交叉積は次数付き可換英語版である.

横断交叉の例

横断性の最も簡単な非自明な例は曲面の弧によるものである.2つの弧の交点が横断的であることと接点でないこと,すなわち曲面の接平面内のそれらの接線が相異なることと同値である.

3次元空間では,横断的に交わる曲線は交わらない.局面に横断的に交わる曲線は点で交わり,横断的に交わる2曲面は曲線で交わる.曲面に点で接する曲線(例えば曲面上に乗っている曲線)は曲面と横断的に交わらない.

より専門的な例を挙げよう.G単純リー群とし, をそのリー環とする.ジャコブソン・モロゾフの定理英語版により,任意の冪零元 はある -triple (e, h, f) に含めることができる. の表現論により,

である.空間 は随伴軌道 Ad(G)e への e での接空間であり,したがってアファイン空間 e の軌道と横断的に交わる.空間 Peter Slodowy英語版 に因んで スロードウィーの横断片 ("Slodowy slice") と呼ばれる.


注釈

  1. ^ "transversal" はラテン語: transversus, transversalis に由来する「横断線」「横断面」を意味する名詞であり、形容詞形は "transverse" である[1]

出典

  1. ^ Hirsch 1976, p. 66—`"Transversal" is a noun; the adjective is "transverse." —J.H.C. Whitehead, 1959’
  2. ^ Guillemin & Pollack 1974, p. 30.
  3. ^ Guillemin & Pollack 1974, p. 28.


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