星表 全天星表

星表

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 07:39 UTC 版)

全天星表

バイエルとフラムスティードが星表に収録した恒星は二人合わせても数千個に過ぎなかった。理屈の上では全天星表は空の全ての恒星を網羅しようとするものだが、実際の空には文字通り、星の数ほど恒星が存在し、望遠鏡を使えば数十億個もの星を分解することができるので、全てを載せるのは不可能である。よって一般の全天星表はある決まった等級よりも明るい恒星全てを収録することを目指して作られる。

主な全天星表とその略称は以下の通りである。

ヘンリー・ドレイパーカタログ (HD / HDE)

ヘンリー・ドレイパーカタログ』 (Henry Draper Catalogue) は1918年から1924年にかけて発行された星表である。約9-10等までの全天の恒星をカバーしている。恒星のスペクトル型を大規模にサーベイ観測して収録した初めての試みであった。

この星表はハーバード大学天文台エドワード・ピッカリングの指示の下で、アニー・ジャンプ・キャノンとその同僚によって編纂された。このプロジェクトはヘンリー・ドレイパーの未亡人から資金の寄付を受けたため、その功績を称えて完成した星表に彼の名前が付けられた。

HD 番号はバイエル符号やフラムスティード番号を持たない恒星の名前として今日でも広く使われている。1 - 225300 までの番号は初版に収録された恒星で、1900.0 年分点での赤経順に番号が付けられている。225301 - 359083 までは1949年の増補版に収録されている恒星である。この増補版の恒星の番号には HDE の符号を付けることがあるが、通常は混同の恐れがないので初版と同様に HD xxxxxx と呼ばれる。

スミソニアン天文台星表 (SAO星表)

『スミソニアン天文台星表』は全天の写真星表(全天の写真を撮影し、それに写っているすべての恒星のデータを記録した星表)で、約9等までの恒星を網羅している。略号はSAOSky Catalogue 2000.0 は自身のカタログ番号を持たないが、『ヘンリー・ドレイパーカタログ』と『SAO星表』のカタログ番号が併記されている。 最新版での元期は J2000.0 である。『SAO星表』は『ヘンリー・ドレイパーカタログ』の情報に加えて、各恒星の固有運動を載せている。最新版には『ヘンリー・ドレイパーカタログ』と BD 星表(後述)との相互参照が付いている。

掃天星表 (DM)

『ボン掃天星表』 (Bonner Durchmusterung) およびこの後継の一連の掃天星表は、写真時代以前の星表としては最も完全なものである。

『ボン掃天星表』自体は1852年から1859年にかけて、ドイツで発表され、この星表は320,000個の恒星の1855.0年分点での位置を網羅しており、後に南天掃天星表 Sudliche Durchmusterung を増補、さらにコルドバでの観測を元に『コルドバ掃天星表』(Córdoba Durchmusterung (CD)、580,000星)を増補し、最終的には1896年の『ケープ写真掃天星表』 Cape Photographic Durchmusterung (CPD) も含めて編纂され全天を網羅した。

天文学者は恒星を表す際に、スペクトルの情報が載っている HD での番号を好んで使う傾向があるが、掃天星表は HD よりも多くの恒星をカバーしているため、HD に載っていない恒星の場合にはより古い掃天星表での名前を用いることがある。

AC 星表 (AC)

『アストログラフィック・カタログ』 (仏:Catalogue astrographique, 英:Astrographic Catalogue) は、写真撮影によって11.0等よりも明るい全ての恒星の位置を測定しようとする Carte du ciel 国際プログラムの一環として作られた。全体で460万個以上、13等級までの恒星の多くが観測対象となった。このプロジェクトは1800年代の終わりに始まり、観測は1891年から1950年まで行われた。少数の機関に負担を集中させることなく全天の観測を行うため、全天を赤緯帯に沿って20の天文台で分担した。各天文台は共通の望遠鏡を使ってそれぞれ担当の天域を撮影し、写真乾板上で恒星の位置を測定した。このため、各々の写真乾板は全て約60秒角/mmの同じスケールで統一された。アメリカ海軍天文台がカタログの管理を行い、現在では 2000年2月版が発行されている。

USNO-B1.0

USNO-B1.0 はアメリカ海軍天文台の研究者によって作られた全天星表で、延べ3,643,201,733個の観測データに基づき、恒星の位置、固有運動、様々な波長帯での等級、恒星/銀河の評価値が 1,042,618,261 個の天体について提供されている。元データは過去50年間に行われた様々な全天サーベイ観測で撮影されたシュミット式望遠鏡の乾板 7,435 枚をスキャンして使っている。USNO-B1.0 は全天について、V 等級が21等までの恒星を完全に網羅し、J2000.0 分点で位置測定精度 0.2秒角以内、5色の波長帯での測光精度 0.3等級以内、恒星と非恒星天体の判別精度 85% 以上の質を持っているとされている。


  1. ^ 数え方によって1,022 - 1,028星。


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