扇子 種類

扇子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 03:59 UTC 版)

種類

冬の扇
檜扇や中啓。主に儀礼用。中啓は能楽をはじめとする諸芸能でも使われる。古くは10本骨の沈折(しずめおり)の扇も広く用いられ、これは夏冬共用の形式だった(「沈折」については中啓の項参照)。
夏の扇
蝙蝠扇。現在一般に市販されている両面貼りの骨の多い扇子も夏の扇である。なお公家の夏の扇は江戸時代に至るも蝙蝠扇と称し、骨が扇の裏面に露出していた。
軍扇
その昔武将が戦場に携えた扇。その形式は時代によっていくらか相違はあるが、だいたいは骨は黒の塗骨、表は赤地に金の丸で日輪をあらわし、裏は紺色の地に銀で月と星(多くは北斗七星)を描くといったものだった。
鉄扇
鉄扇
親骨を鉄製にした扇。鉄の短冊を重ねたもの、また閉じた状態の扇子の形を模しただけで開かない(つまり、扇子の親骨型の鉄塊)鉄扇も存在する。携帯用の護身具、または鍛錬具として用いられる。鍛錬具として用いられるものは、手馴し鉄扇(てならしてっせん)とも呼ばれる。
「序の舞」 昭和11年(1936年) 、上村松園筆。手に舞扇を持つ。
舞扇
沈折の扇。日本舞踊歌舞伎で使われる。
祝儀扇
冠婚葬祭に用いられる扇。一般には男性は白扇、女性には金や銀の扇子だが、用途によって格式が細かく定められており、葬儀に用いられるものは「不祝儀扇」(ぶしゅうぎせん)とも呼ばれる黒い扇子である。
羽根扇子
羽で飾った洋扇。日本でこれを用いた例は宝塚歌劇で見ることができる。主に歌劇中の女性貴族の持ち物として用いられ、劇中の華やかさを彩る物となっている。1990年代にはディスコで踊るときに使うのが流行し、ジュリアナ東京でも多く用いられたことからジュリ扇とも呼ばれた。またこの羽根扇子はストリップティーズなどの舞台でも小道具として使われることがある。
飾り扇
部屋に飾り物として置いておく。たいていの場合飾り物としてそれ専用に作られたもの。上に挙げたそれぞれの扇の規格に沿って製作してはいないので、たとえば能楽や日本舞踊などで飾り扇を使うことはできない。飾り扇の中には、扇車、扇子車と呼ばれる開くと完全な円になるものもあり、上棟式などの儀式に用いられる[17]

ほかには、沖縄では扇面にヤシ科ビロウ(クバ)の葉を使ったクバ扇(クバおーじ)というものがある。


  1. ^ 高橋 2011, pp. 25.
  2. ^ 若林佐恵 (2017年9月21日). “全国シェアなんと9割!300年以上受け継がれた伝統工芸「高島扇骨」の世界を覗いてみませんか?”. しがとこ. 2021年9月29日閲覧。
  3. ^ ツタンカーメンの墓に隠し部屋か”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2023年7月26日閲覧。
  4. ^ 図説、初期王朝時代
  5. ^ 吉野ヶ里遺跡(弥生時代)-出土遺物1
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 王岩「扇の発展に見る東アジアにおける文化の伝播と創造」『相愛大学人文科学研究所研究年報』第4巻、相愛大学人文科学研究所、2010年、32-40頁、CRID 1050282812612825344ISSN 1881-7483 
  7. ^ 『扇面画(古代編)』(『日本の美術』319)17頁。ただしこの発掘品は、木の細長い薄板を重ねて扇状に広げるが、その端を切って形を倒卵形に整えたものである。この形から中村清兄は、これが檜扇であるとすることを否定し批判している(『扇と扇絵』1 - 2頁)。
  8. ^ 崎岡洋右『三国古典の散歩』(文芸社、2007年)251 - 252頁。『早慧的文明』(上海古籍出版社)という本に、「扇子は中国人が発明したものであるとの説」があることを紹介している。
  9. ^ 古事類苑』服飾部「扇」の項および諸橋轍次編『大漢和辞典』第五巻「扇」の項、『扇と扇絵』(中村清兄)参照。
  10. ^ [1]
  11. ^ 松井宏「江戸扇子 粋なセンス◇シンプルだがすっきり、伝統技法を受け継ぐ◇」日本経済新聞』朝刊2018年7月17日(文化面)2019年4月9日閲覧。
  12. ^ a b c d e 宮崎克己「空間のジャポニスム 第4章 女性たちの空間 (1) 婦人の持ち物 2022年3月6日閲覧。
  13. ^ a b 河野 2011, pp. 82–84.
  14. ^ 『扇面画(近世編)』(『日本の美術』321)巻末「西の国の扇の話」
  15. ^ 吉田典子「ベルト・モリゾと日本美術(1) : 扇・団扇のジャポニスムから1890年ビングの「日本版画展」まで journal=近代」第111巻、神戸大学近代発行会、2014年、CRID 1390290699906494464doi:10.24546/81008699ISSN 0287-2315 
  16. ^ 京扇子・京うちわ 近畿経済産業局、2022年3月6日閲覧。
  17. ^ 高橋 2011, pp. 7–11.
  18. ^ 服部幸雄『江戸歌舞伎の美意識』平凡社 1996 ISBN 4582260233 p.254-255.
  19. ^ 高橋 2011, pp. 54–57.
  20. ^ 本田總一郎監修『日本の家紋大全』 梧桐書院2008年
  21. ^ 扇の国、日本サントリー美術館企画展(2018年11月28日~2019年1月20日開催)公式サイト(2019年4月9日閲覧)。






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