年季奉公 オーストラリアと太平洋

年季奉公

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/02 07:52 UTC 版)

オーストラリアと太平洋

1860年代オーストラリアフィジーニューカレドニアおよびサモア諸島の入植者は労働力を補うために、「ブラックバーディング英語版」と呼ばれる長期間の年季奉公人貿易を奨励した。一番盛んなときには、島で働く成人男性の半分以上が年季奉公人であった。

19世紀中頃から20世紀初頭にかけての40年間以上、オーストラリアのクィーンズランド州のサトウキビ畑労働者は、強制徴募された者や年季奉公の者達であり、南洋諸島から62,000名が集められた。メラネシアの主にソロモン諸島バヌアツからが多く、ポリネシアミクロネシアのサモア、キリバスおよびツバルからも少数が集められた。

どのくらいの島人が誘拐されたかについては不詳であり、議論が残されている。島人達が合法の徴募、説得、詐欺あるいは強制のどの方法によって船でクィーンズランド州に連れて行かれたかという問題も回答が難しい。当時の公式文書や証言も、労働者の子孫に語り継がれた口伝とはしばしば一致しない。露骨に暴力的な誘拐という話は、貿易の初めの10年ないし15年の間のこととされている。

オーストラリアは、1901年の太平洋諸島労働者法の規定により1906年から1908年にかけてこれらの人々を生まれ故郷に送還した[35]

オーストラリアのパプアとニューギニアの植民地(第二次世界大戦後、パプアニューギニアとなった)は年季奉公人を使った世界でも最後の地区となった。

オーストラリアと太平洋関連項目

インド洋

インド洋の諸島、特にモーリシャス諸島ではサトウキビのプランテーションに特化して、高い賃金を要求する解放労働者よりも安く働ける労働者を求めた。

モーリシャス諸島はこのクーリー(苦力)すなわち年季奉公人を「プラーク・トーナント」として扱っており、アフリカやインドに数十万人のクーリーを送り出していた。

1845年から1917年の間に、14万人以上のインド人がトリニダード諸島のプランテーションで働くと契約した。トリニダードに連れて行かれた年寄奉公人とアフリカ人奴隷の間には類似性があったという証言も有る。

モーリシャスとそのアープラヴァシ・ガートはそこで始まった年季奉公を世界に広めた場所と呼ぶこともできる。

イギリス帝国関連項目

参考文献

  • Immigrant Servants Database
  • Morgan, Edmund S. American Slavery, American Freedom: The Ordeal of Colonial Virginia. New York: Norton, 1975.
  • Salinger, Sharon V. 'To serve well and faithfully': Labor and Indentured Servants in Pennsylvania, 1682-1800. New
  • Khal Torabully and Marina Carter, Coolitude: An Anthology of the Indian Labour Diaspora Anthem Press, London, 2002, ISBN 1843310031
  • Saxton, Martha. Being Good: Women's Moral Values in Early America New York: Hill and Wang, 2003.
  • Brown, Kathleen. Goodwives, Nasty Wenches & Anxious Patriachs: gender, race and power in Colonial Virginia, Chapel Hill: University of North Carolina Press, 1996.
  • Jernegan, Marcus Wilson Laboring and Dependent Classes in Colonial America, 1607-1783 Westport, CT: Greenwood Press, 1980
  • Frethorne, Richard. The Experiences of an Indentured Servant in Virgina (1623)
  • ブリタニカ・ジャパン「年季奉公」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン、コトバンク、2022a。  ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『年季奉公』 - コトバンク
  • ブリタニカ・ジャパン「質奉公」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン、コトバンク、2022b。  ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『質奉公』 - コトバンク
  • 小学館「質物奉公」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館、コトバンク、2022a。  日本大百科全書(ニッポニカ)『質物奉公』 - コトバンク

注釈

  1. ^ 年季奉公が一般的になったのは江戸時代以降とされるが[13]

出典

  1. ^ 丹野勲『江戸時代の奉公人制度と日本的雇用慣行』国際経営論集 41 57-70, 2011-03-31, p. 58
  2. ^ a b c 丹野勲『江戸時代の奉公人制度と日本的雇用慣行』国際経営論集 41 57-70, 2011-03-31, p. 61
  3. ^ Virtual Jamestown: Laws
  4. ^ 下重清『〈身売り〉の日本史——人身売買から年季奉公へ』吉川弘文館、2012年、115頁
  5. ^ 嶽本新奈『境界を超える女性たちと近代 ——海外日本人娼婦の表象を中心として — —』一橋大学、博士論文、p. 14
  6. ^ 下重清『〈身売り〉の日本史——人身売買から年季奉公へ』吉川弘文館、2012年、8頁
  7. ^ a b 人身売買(岩波新書)、牧 英正、1971/10/20, p.60
  8. ^ a b 日本史の森をゆく - 史料が語るとっておきの42話、東京大学史料編纂所(著)、中公新書、2014/12/19、p.77-8
  9. ^ BOXER, Charles R. Fidalgos in the Far East (1550-1771). The Hague: Martinus Nijhoff, 1948, p.234.
  10. ^ Juan Ruiz-de-Medina (ed.). Documentos del Japón, 2 Vol. Rome: Instituto Histórico de la Compañía de Jesús, 1990-1995. II, pp. 695-8, p705
  11. ^ WESTBROOK, Raymond. “Vitae Necisque Potestas”. In: Historia: Zeitschrift für Alte Geschichte, Bd. 48,H. 2 (2nd quarter, 1999). Stuttgart: Franz Steiner Verlag, 1999, p. 203
  12. ^ MIZUKAMI Ikkyū. Chūsei no Shōen to Shakai. Tokyo: Yoshikawa Kōbunkan, 1969.
  13. ^ ブリタニカ・ジャパン 2022a, p. 「年季奉公」.
  14. ^ OKA Mihoko. “Kirishitan to Tōitsu Seiken.” In: ŌTSU Tōru et alii. Iwanami Kōza Nihon Rekishi Dai 10 Kan, Kinsei 1. Tokyo: Iwanami Shoten, 2014, pp. 185-187
  15. ^ a b Jesuits and the Problem of Slavery in Early Modern Japan, Rômulo da Silva Ehalt, 2017. p. 473
  16. ^ PÉREZ, Lorenzo. Fr. Jerónimo de Jesús: Restaurador de las Misiones del Japón – sus cartas y relaciones (1595-1604). Florence: Collegii S. Bonaventurae, 1929, p. 47.
  17. ^ OKAMOTO Yoshitomo. Jūroku Seiki Nichiō Kōtsūshi no Kenkyū. Tokyo: Kōbunsō, 1936 (revised edition by Rokkō Shobō, 1942 and 1944, and reprint by Hara Shobō, 1969, 1974 and 1980). pp. 730-2
  18. ^ a b 丹野勲『江戸時代の奉公人制度と日本的雇用慣行』国際経営論集 41 57-70, 2011-03-31, p. 58
  19. ^ a b c 嶽本新奈『境界を超える女性たちと近代 ——海外日本人娼婦の表象を中心として — —』一橋大学、博士論文、p. 15
  20. ^ 中田薫「徳川時代に於ける人売及人質契約」『法制史論集』3・上、岩波書店、1943 年。
  21. ^ 下重清『〈身売り〉の日本史——人身売買から年季奉公へ』吉川弘文館、2012年、160頁
  22. ^ 丹野勲『江戸時代の奉公人制度と日本的雇用慣行』国際経営論集 41 57-70, 2011-03-31, p. 62
  23. ^ 小学館 2022a, p. 「質物奉公」.
  24. ^ 出替奉公』 - コトバンク
  25. ^ 一季奉公』 - コトバンク
  26. ^ 年季が明ける』 - コトバンク
  27. ^ 年季者』 - コトバンク
  28. ^ 速水融、『歴史人口学で見た日本』、文藝春秋
  29. ^ 大日方純夫『近代日本国家の成立と警察』校倉書房、1992年、283頁
  30. ^ 嶽本新奈『境界を超える女性たちと近代 ——海外日本人娼婦の表象を中心として — —』一橋大学、博士論文、p. 67
  31. ^ 藤野豊『戦後日本の人身売買』p.18
  32. ^ 藤野豊『戦後日本の人身売買』p.19
  33. ^ [1]
  34. ^ The Perspective of the World 1984, pp 405f
  35. ^ Documenting Democracy(アーカイブされたコピー)”. 2009年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年7月4日閲覧。


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