大気循環 東西の循環

大気循環

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/21 16:50 UTC 版)

東西の循環

海陸風

陸の比熱容量は海より少ないため温まりやすいことから、地上では日中は海から陸へ、夜は陸から海へ、上空ではこれらと逆の向きに風が吹く。この風を海陸風と呼ぶ。同じように、季節の変化においても似た現象が起こり、これを季節風という。季節風は大陸規模であり、地上では夏は海洋から大陸へ、冬は大陸から海洋へ風が吹く。

ウォーカー循環

太平洋と周辺の大陸の間では、海陸分布により「ウォーカー循環」と呼ばれる東西の循環が存在する。

赤道付近の太平洋で暖められた大気は西太平洋で上昇し、東と西に分かれて循環している。東に向かった大気は東太平洋で下降し、西へ向かった大気はインド洋大西洋で下降する。この循環によって、西太平洋と東太平洋の間で大きな海水温の差ができ、冷たい東太平洋から暖かい西太平洋への海水の流れが生じる。

ウォーカー循環は、20世紀前半にインドの天文台の所長を務めたイギリス人気象学者ギルバート・ウォーカーにちなんで名づけられた。ウォーカーは季節風の特性からその変化を調べたものの、最終的には失敗に終わった。しかしこの研究が、後に「南方振動」と呼ばれる太平洋・インド洋間の気圧変化の関係性の発見につながることとなった。

海水温がいつもどおりであればウォーカー循環は「正常」に働くが、海水温が変化するとウォーカー循環にも異常が現れる。何らかの原因で西太平洋での大気の上昇が弱まると、貿易風が弱まって東太平洋の海水温が上昇し、ウォーカー循環が崩れる。海洋と大気の両方で異常が生じるので、これらを総称して「エルニーニョ・南方振動」(ENSO)と呼ぶ。


  1. ^ a b c 岩槻、2012年、323-332頁(§9.2, 9.3)
  2. ^ a b c 小倉、1999年、166-170頁(§7.1)
  3. ^ a b c d e f g h 小倉、1999年、171-175頁(§7.2)
  4. ^ 小倉、1999年、187-195頁(§7.6)
  5. ^ 岩槻、2012年、336-339頁(§9.5)
  6. ^ 小倉、1999年、175-179頁(§7.5)
  7. ^ 両極は交互に夏と冬になる。北半球が夏(南半球が冬)の時は北極が夏極で南極が冬極、北半球が冬(南半球が夏)の時はその逆。
  8. ^ 小倉、1999年、248-259頁(§9.1, 9.2)






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