合板 接着剤

合板

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/24 04:59 UTC 版)

接着剤

石油化学が発達する以前は、にかわなどの天然物質が使われており、製造工程の精度の悪さとも相まって、合板には「剥がれやすいベニヤ板」という粗悪なイメージがあった。石油化学が発達してからは、透明で安価な尿素樹脂、あるいは耐水性を改善したユリア・メラミン樹脂接着剤が使われてきたが、これらは経年劣化により、徐々に分解してホルムアルデヒドを発散することが問題となっている。現在は製造時に加えるホルムアルデヒドを必要十分な量に抑えること、そして分解で生じたしたホルムアルデヒドを吸収・分解するキャッチャー剤を配合することで対策されているが、それでも過敏な小児においてシックハウス症候群アトピー性皮膚炎などの原因になることが報告されている。

構造用の針葉樹合板では、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂系接着剤が多く使われている。これは耐久性に優れており、化学的に安定であるためホルムアルデヒドの放出も少ないが、透明ではなく濃い褐色をしているため家具や木工用製品としては好まれない。近年は、成分に全くホルムアルデヒドを含まず、色の薄いイソシアネート樹脂系接着剤も使われるようになっている。これは、フェノール系よりやや高価であるが、特定の重合促進剤を添加すれば、硬化に必ずしも高温を必要とせず40℃程度でも30分で硬化するので、他の熱硬化型接着剤で問題となるパンク(ベニアに含まれている水分が、100℃以上に加熱されることによって高圧の水蒸気となり、製造工程の途中で合板が損傷する現象)が生じにくいという利点もある。製造条件が比較的容易になるので、材料のコストが上がっても生産性向上による製造コストの低減により、最終製品のコストはむしろ下がる場合もある。なお、イソシアネート系接着剤は、セルロースやリグニンの水酸基と反応して分子レベルで木材繊維と接着するため、フェノール系よりも硬化後直後の性能は良いが、経年劣化の度合いはやや大きい事がわかっており、比較的新しい材料であり使用実績の年数も短いため、信頼性を特に必要とする分野にはまだ採用されていない。

木材は透湿性がある(透湿抵抗が低い)素材であるが、合板においては多数の接着層が存在するために、極めて透湿抵抗が高い素材となっている。その為、住宅用建材としては壁内結露の問題を回避するために、あえて安価な合板を使用せず、透湿性のある火山性ガラス質複層板(ダイライトやモイスなど)を選択することがある。


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