合成樹脂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/24 06:25 UTC 版)
複合材料
合成樹脂を用いた複合材料の一種として繊維強化プラスチック(FRP)がある。繊維強化プラスチックの代表的なものにガラス繊維強化プラスチック (GFRP) と炭素繊維強化プラスチック (CFRP) がある。ガラス繊維は引っ張り強度がプラスチックよりはるかに強いので、成型部品の強度向上によく使用される。炭素繊維の強度はガラス繊維より更に強いが高価なので、CFRPは軽くて強い(高価な)素材として航空機等に使用されている[33]。また建材として、合成樹脂と木質系材料(木材や竹など)を微細化した木粉または木繊維を主原料とする木材・プラスチック複合材(WPC)および木材・プラスチック再生複合材(WPRC)があり[34]、主にデッキやフェンス、ルーバー等の外構材として用いられている。
機能性樹脂
形状記憶樹脂
形状記憶樹脂は形状記憶合金と同様に塑性変形された樹脂が所定温度以上に加熱されるともとの形状にもどるという特異な性質を備える樹脂で形状記憶合金に比べて軽量で廉価であり、変形時の形状の自由度が形状記憶合金よりも高いなどの特徴を備える[35][36]。
光硬化性樹脂
生産
2012年のプラスチックの世界生産は2億8800トンであり、最大の生産国は中国で5213万トン、以下EUが4900万トン、アメリカ4805万トン、韓国1335万トン、日本1052万トンの順となっていた[37]。プラスチックの生産量は急増しており、2015年には3億2200万トンに達している[38]。日本での生産量は1990年代前半までは増加傾向にあったものの、1997年に1521万トンを記録した後は減少に転じた。その後、2008年までは1400万トン前後の横ばいで推移していたものの、2009年のリーマンショックの影響で生産量が1100万トン台にまで激減し[39]、それ以降は1000万トン前後の生産量で推移している[37][15]。
2018年の日本国内生産においては総生産量1067万トンのうちポリエチレンが23.1%、ポリプロピレンが22.1%、塩化ビニールが15.8%を占め、これらを含む熱可塑性樹脂が全体の88.8%、熱硬化性樹脂が9.1%となっていた[15]。
処理

プラスチックは回収してリサイクルすることが可能である。リサイクルには、廃プラスチックを溶融してそのままプラスチックに再生するマテリアルリサイクルと、分解していったん原料に戻し、そこから加工するケミカルリサイクル、そしてプラスチックを燃料化して熱エネルギーを回収するサーマルリサイクルの3つの方法が存在する[40]。プラスチックを再び石油へと戻す、いわゆる油化もリサイクルの一方法であるが、これを原料化とみなすか燃料化と見なすかについては国ごとに差異がある[41]。ただしプラスチックリサイクルのシステムが確立されている国家においても、回収されたプラスチックのすべてがリサイクルや燃料化に回されるわけではなく、他国への廃プラスチック輸出が盛んに行われてきた[42]。
2019年にバーゼル条約の改正案が発効したことにより、2021年以降は汚れたプラスチックごみを輸出する際に相手国の同意が必要となった[43]。
日本
日本も例外ではなく、2006年にはすでに廃プラスチックの13%が海外輸出へと回されていた[44]。2017年には、排出されたプラスチック903万トンのうちリサイクルされたものが251万トンで、うち149万トンが海外に輸出され処理されていた[45]。しかし主な輸出先であった中国が2017年末に廃プラスチックの輸入禁止を打ち出し、さらにそれに代わる輸出先となっていたタイ・マレーシア・ベトナム・台湾が2018年に相次いで輸入規制を導入したため、廃プラスチックの国内滞留および国内処理が増加した[46]。
2016年時点で海外へのプラスチックごみ輸出量は153万トンだったが、2018年には101万トンまで減少した。減少分は国内で処理されていることになるが、環境省のアンケート調査によると、一部地域において保管上限の超過や受入制限が発生しており、国内においてリサイクル処理施設の整備を進めることが急務となっている[45]。
注釈
- ^ 物質名称以外の表現で用いる場合、(柔軟で)感受性の強い性格、作り笑いなどの人工的な・不自然な、あるいは形成・造形を指す場合に用いる。
出典
- ^ Cassone et al. (2020) は、合成樹脂を摂食する動物を指すことばとして "plastivore" という単語を使用している[21]。これは "plastic"と、「-を食べる動物」を意味する接尾辞"-vore"とを組み合わせた造語である[22]。
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