劣化ウラン弾 健康被害

劣化ウラン弾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/08 05:18 UTC 版)

健康被害

劣化ウラン弾頭が着弾し、あるいは劣化ウラン装甲に被弾することによって劣化ウランが燃焼すると、酸化ウランの微粒子となり周囲に飛散する。これが体内に取り込まれた場合、内部被曝や化学的毒性による健康被害を引き起こすとして、その影響が懸念されている。

湾岸戦争後の米軍の帰還兵などに「湾岸戦争症候群」と呼ばれる健康被害が確認されており、劣化ウランがその原因の一つではないかとする説がある[要出典]。また過去にも劣化ウラン弾頭が使用されたボスニアやコソボ等の地域においては、白血病の罹患率や奇形児の出生率が増加した等と主張する健康被害が報告されている[要出典]

これらの懸念や報告に対して、劣化ウラン弾頭や劣化ウラン装甲を使用する当事者であるアメリカ政府は反論し、劣化ウラン弾による健康被害を否定、さらにこれら症状は劣化ウラン弾による影響ではなく、フセイン政権がかつて用いた化学兵器の残留物の影響という公式見解を発表した。

また「湾岸戦争症候群」についても、イラク軍による油田破壊によって放散した化学物質の影響や、戦争前に兵士に投与された対化学戦用ワクチンの副作用によるものであるとする説もある[要出典]。湾岸戦争に限定したそれらの説に加え、ボスニアやコソボを含む「白血病の罹患率や奇形児出生率の増加」に関するデータも、当事者として医療現場が主張する統計的な根拠や信頼性に対しては疑問があり[要出典]UNEP の公式報告書でも、ボスニア・コソボにおける劣化ウラン弾使用の放射線による影響を懸念・重要視しておらず[要出典][9]WHO は UNEP の収集したデータを基に「DU が紛争で使われた地域の住民や滞在していた民間人に対して、DU 毒性に関する医学的スクリーニングを行う健康上の理由はない」と結論づけている[要出典]。これらは主に、DUの汚染が現場から数十m単位に限局されており一般住民が継続的にDUに曝露される可能性が極めて低いことが理由である[要出典]。ただし、WHOは食物や地下水への汚染物質蓄積による食物連鎖への影響など、環境への影響は懸念を示している[9]

これらの指摘・症状と劣化ウランとの因果関係の証明には、疫学的に有意なデータを得るだけでも膨大なサンプル数の確保と時間が要求されるため、標本の量・質とも決定的に不足している現段階では因果関係の結論を出すのは困難であるという指摘がある[要出典]。また、性質上その被害が発展途上国に集中しやすく、軍事衝突でのみ被害が発生するため、企業による研究資金の拠出がほとんどないこともこの分野の研究の困難さに拍車をかけている。

また、環境・人体への悪影響が懸念される以上、少なくとも安全性を明確に確認するまでは予防原則に基き保有および行使は規制・禁止されるべきであるとする慎重な指摘もある[要出典]


  1. ^ ただし精製時での話であり、その後放射性崩壊の発生により、時間経過につれて微量ながら不純物が増加してゆく
  2. ^ 軍事研究2003年5月号、軍事研究2004年8月号
  3. ^ 米国の劣化ウラン弾の供与は「犯罪行為」 ロシアが主張”. CNN (2023年9月7日). 2023年9月9日閲覧。
  4. ^ 劣化ウラン弾の健康リスク、米国防総省がロシアに反論”. CNN (2023年9月8日). 2023年9月9日閲覧。
  5. ^ a b 一戸崇雄著 『現代戦車砲の主用砲弾 APFSDS』 「軍事研究」2008年8月号 (株)ジャパン・ミリタリー・レビュー 2008年8月1日発行
  6. ^ 平成13年度、ダイキン工業株式会社による高速飛翔体の比較実験より
  7. ^ 国際原子力機関 劣化ウラン Q&A[1]
  8. ^ 米軍、対IS空爆で劣化ウラン弾使用、国防総省 AFP(2017年02月17日)2017年02月17日閲覧
  9. ^ a b WHO モノグラフ”. 2003年8月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月16日閲覧。
  10. ^ 米軍、被ばく恐れ環境調査せず 沖縄・鳥島の劣化ウラン弾誤射 政府の説明と矛盾”. 沖縄タイムス (2019年5月8日). 2019年5月26日閲覧。


「劣化ウラン弾」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「劣化ウラン弾」の関連用語

劣化ウラン弾のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



劣化ウラン弾のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの劣化ウラン弾 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS