円の面積 円の面積の概要

円の面積

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/11 23:23 UTC 版)

円の直径から、その1/9を引いたものを2乗すると円の面積になる(リンド・パピルス)

古代エジプトにおいては、リンド・パピルスの問題50に円の面積を求める方法が記録されている[注釈 1]

リンド・パピルスでは、円の直径

円の面積は、円周 c を底辺、半径 r を高さとする直角三角形の面積に等しい

エウクレイデスは『原論』において、直径

円に内接する正6,12,24角形

アルキメデスは『円の計測』において、

命題1
円の面積は、円周の長さを底辺、半径を高さとする直角三角形の面積に等しい
命題3
円周と直径との比は、
『九章算術』劉徽による円に内接する正多角形を用いた円の求積

九章算術』に註釈をつけた劉徽は、円の内接する正6角形から正12角形、正24角形と辺数を増やしていくと、やがて内接多角形の面積は円の面積に差は無くなる、としている[17]

具体的には、円に内接する正n多角形のうち1つの三角形(△OAB)に対し、三角形の底辺とそのの二等分線と円周上の交点を高さとする長方形で囲まれる面積(□AA'B'B)を考えると、内接する正n角形の面積とその面積に長方形の面積を加えたものの間に円の面積がある、ということを利用している(右図)。

正n角形の面積を、円の面積をとしたとき、

となり、半径10の円に対する正192角形までを評価して[注釈 5]を得た[18]。 さらに内接多角形の辺を増やしていくことによって、を得ている[19]

日本

江戸時代初期に発行された算術書である吉田光由の『塵劫記』において、直径 の円の面積は、直径の自乗に「まるき法」を掛けて求める。ここで、まるき法はに相当する値で、0.79 である。面積 で表せば、

である[20][21]

また、円周の長さ の円の面積は、円周の長さを「円きめくり法」で割り、直径 を求めてから上記の方法を使って円の面積を求める。ここで、円きめくり法は円周率に相当する値で、3.16 である。面積 で表せば、

である[22][21]

円の面積の公式の導出

アルキメデスによる証明から、命題1における円周の長さを 、半径を とすると、円の面積 は底辺が 、高さが の直角三角形の面積なので、

となる。 命題3における円周の長さ と直径の比を とすれば、直径は半径の2倍の なので、

であり、 に代入すると、

となり、円の面積の公式が得られる[1]


注釈

  1. ^ 同様の計算は問題41の円筒の体積を求める際にも行われている。
  2. ^ 著者であるアーメスは の例を計算している。この場合、結果は整数となる。
  3. ^ 実際には、円周を 、直径を とすると、 であることを示した[7]
  4. ^ この方法は、二重帰謬法[9]、二重背理法[10]とも呼ばれる。
  5. ^ 実際には半径1尺の円を用いており、1尺=10寸であるが単位は略した。
  6. ^ 小学校学習指導要領において具体的な教示法は示されていないものの、その解説において「円の変形による式の導出」として、円をいくつかの扇形に分割し長方形に近似させる方法が掲げられている[25]
  7. ^ これは例えば『岩波講座 現代数学への入門』[30]、『理工系の微積分入門』[31]による方法を四分円に適用したもの。
  8. ^ 『数学公式II』[32]では、の極限値としてが示されている。 である。

出典

  1. ^ a b c 数学小辞典 第2版増補 2017, p. 55.
  2. ^ 数学史 5000年の歩み 2014, pp. 33–36.
  3. ^ a b 数学史 5000年の歩み 2014, pp. 62–63.
  4. ^ π-魅惑の数 2001, p. 40.
  5. ^ 上垣渉 2016, p. 31.
  6. ^ 平山諦 1955, p. 23.
  7. ^ a b 数学史事典 2020, p. 190.
  8. ^ 岩波数学辞典 第4版 2007, p. 95.
  9. ^ 斎藤憲 2006, p. 13.
  10. ^ Boyer 1984, p. 13.
  11. ^ 上野健爾 2013, pp. 37–43.
  12. ^ アルキメデス 1990, pp. 370–386.
  13. ^ 数学史事典 2020, p. 198.
  14. ^ 上野健爾 2013, pp. 45–50.
  15. ^ 上垣渉 2016, p. 109.
  16. ^ 中川仁 2008, pp. 7–10.
  17. ^ アルキメデス 1990, p. 389.
  18. ^ 上野健爾 2013, pp. 14–20.
  19. ^ 伊東俊太郎編, 数学の歴史 2『中世の数学』共立出版, 1987年
  20. ^ 和算百科 2017, p. 50.
  21. ^ a b 塵劫記初版本 2006, pp. 140–141.
  22. ^ 和算百科 2017, p. 51.
  23. ^ 不思議な数πの伝記 2005, pp. 15–17.
  24. ^ π-魅惑の数 2001, p. 4.
  25. ^ 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 算数編 平成 29年7月 文部科学省 pp.297-298
  26. ^ 上垣渉 2016, p. 134.
  27. ^ a b 数学ハンドブック 1985, pp. 223–224.
  28. ^ 理工系の微積分入門 2001, pp. 64–65, 80.
  29. ^ 朝倉数学ハンドブック[基礎編] 2010, p. 179.
  30. ^ 微分と積分1 1995, pp. 122–124.
  31. ^ 理工系の微積分入門 2001, pp. 75–75.
  32. ^ a b 数学公式II 1957, p. 98.
  33. ^ 面積の発見 2012, pp. 104–105.
  34. ^ 文部科学省 (2018年). “高等学校学習指導要領(平成30年告示)”. 文部科学省. 2021年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月13日閲覧。
  35. ^ 山川, 宏史「円の面積 S = πr2 の循環論法の解消について」(pdf)『数研通信』第58巻、2007年、9–11。 
  36. ^ 関口晃司円の面積をめぐる循環論法からの脱却のために』(PDF)高知工科大学、2014年。 オリジナルの2021年7月11日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20210711183021/http://www.core.kochi-tech.ac.jp/m_inoue/work/pdf/sekiguti/highschool/2.pdf2022年3月13日閲覧 





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