使徒たち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/29 07:07 UTC 版)
概要
『エニグマ変奏曲』(1899年)や『ゲロンティアスの夢』(1900年)で国際的な成功を手にしたエルガーは、『ゲロンティアスの夢』の初演が行われたバーミンガム・トリエンナーレ音楽祭から新作の合唱作品の委嘱を受けた。これに触発されたエルガーは、温めていた題材を基に大規模作品を作曲することになる。作曲者自身の言に依れば、彼が言葉を選ぶようになる以前の幼少期からの構想であったという。『使徒たち』は次作の『神の国』と同じく、イエス・キリストの弟子たちと想像を超えた出来事を目撃した彼らの反応を描いている。
委嘱の手配は1901年12月に行われていたものの、エルガーは『戴冠式頌歌』作品44の作曲とリハーサルが終了する1902年7月まで、『使徒たち』には注意を払ってこなかった。エルガーの頭にあったリブレットには、ワーグナーの『ナザレのイエス』のスケッチやロングフェローの詩である『神の悲劇』と同様、長大な聖書に基づく記述が入ることになっていた。彼は聖書の文言からリブレットを構成したが、これはヘンデルの『メサイア』(1741年)やメンデルスゾーンの『エリヤ』(1836年)など、過去の主要なオラトリオにおいて採られたのと同じ方法であった。かなりの遅れはあったものの、エルガーは最終的に1902年の12月半ばになって正式に作曲を開始する。作品はヴォーカル譜の形で1903年6月に、総譜としては同年8月17日に完成した。
『使徒たち』は十二使徒と彼らが体験したイエスの説法、奇跡、磔刑、復活、昇天を描いた説話的な作品である。『神の国』ではさらにその後の話が描かれる。エルガーは哲学的な土台よりも人間の動機づけにより大きな関心を持っており、この作品において目立った活躍をするのは2人の罪人、マグダラのマリアとイスカリオテのユダである。
エルガーの着想はひとつの作品のうちに収まりきらなかった。『神の国』は当初『使徒たち』の後半部と考えられていたが、彼は後にこれらを三部作の最初の2作品であると考えるようになる。第3の作品は『最後の審判』となる予定であったが[1]、1920年までの間に散発的にスケッチが行われただけで、完成に至ることはなかった。
指揮者のユリウス・ブーツはこの作品をドイツ語訳し、ドイツ初演を手掛けている。
楽器編成
大規模な管弦楽団、夜明けを告げるショファルを含む(通常はフリューゲルホルンなどの一般的な楽器で代用される)。2群の合唱と小合唱、6人の独唱者(ソプラノ:聖母マリアと天使ガブリエル、アルト:マグダラのマリア、テノール:聖ヨハネ、バス:聖ペトロ、バス:イエス、バス:イスカリオテのユダ)
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